「タクシーアプリ『GO』のCM出てる人」前原滉、人を呼べる俳優に!
仕事柄、「今注目している芸能人っていますか」とか「次にくる俳優さんって誰だと思いますか」とよく聞かれる。私は、前原滉さんの「タクシーアプリ『GO』」のCM広告を見た時から、どこにでもいそうなのになぜか印象に残る…というか、残像が残る俳優さんだなと思っていた。
すると、あれよあれよという間に拝見する機会が増えていき、12月20日には主演映画「ありきたりな言葉じゃなくて」(制作:テレビ朝日映像)が公開に。顔に性格は出るという。気が弱そうで“いい人”そうな前原さんだが、実際はどんな方なのか、本人に聞いてみた。
ー役者を仕事に選んだ理由を教えてください
母が、ドラマや演劇が好きで。高校生の時、一緒に舞台「ビロクシー・ブルース」の仙台公演を観に行って“楽しそう”って思って、この仕事にしようってなりました。なんか「夢あるんだろうなー」みたいな(笑)。多分、深く考えてなかったんだと思います。何も考えてなかったから行けちゃったんだと思います。
―入り口として、トライストーンの養成所を選んだ理由は
僕としては、どこかの劇団か、ホームページの一番上に出てきた専門学校に通えばいいかくらいにしか考えてなかったんですけど、母にそれはやめてくれと言われて。
じゃあ分からないから、とりあえず東京行っちゃえって思っていたところに、「ここはどう?」って母に渡されたのがトライストーンの養成所で、「はい、じゃあもうここでいい」って感じで書類送りました。今となっては母に感謝ですね。
―Instagramの紹介のところに「トライストーンの飛び道具です」とありますが
所属している先輩俳優の皆さんを見ていただいたら分かると思うんですけど僕は、小栗旬さん・田中圭さん・綾野剛さんとかのように、真ん中というか王道ではないんですよ。
入った当時はもっと線も細かったし、なんか先輩たちの感じじゃないなと。それで、オーディションでの自己紹介の時に(飛び道具だと)言ってみたら、掴みはOKみたいな感じで、審査員の方の表情が柔らかくなって、なんか意外と受かるというか(笑)。でも今改めて見てみると、ちょっと恥ずかしいですね。
―「いい人顔」って言われませんか
それも言われますけど、“どこにでもいる顔”ってすごい言われるんですよ。「友達のお兄ちゃんに似てます」とか「お笑い芸人さんの○○さんに似てる」とか。どこにでもいる顔だから外歩いていても、絶対に気付かれない自信あります。
人の印象って変えようと思って変えられるものでもないし、こう思われたいとかあまりないので、今のままでいいかなとは思います。人といる時には、無理にではなく楽しくいようとは思いますよ。ただ、そういうイメージの人は、悪人役とかをやったりすると、一気に悪い人になっちゃって、「いい人だと思ってたのに…」って言われたりするんですよね(笑)。
―自分が世に認められたなって思ったのは、いつぐらいからですか
それで言うと、まだかもしれないですね。業界知名度でいうと、名前を覚えていただけるようにはなってきましたけど。一般的にだと『「あなたの番です」(2019年/日本テレビ系)の管理人さんですよね』とか『「あっ、「らんまん」(2023年/NHK)の!』とか、まだ作品ごとのキャラクターとして覚えてもらっている感じです。
後は「タクシー『GO』の人」も多いですね。先輩とかに飲みに連れて行ってもらった時とか、お店の方とは初めましてだったりすると「竹野内豊さんとタクシー『GO』のCM出てる子」って紹介されることが多いです。
―ご自身はどんな性格だと思う?
自分の性格をどういう風に認識してるかってことですかね。難しいですね。めちゃくちゃマイペースなので、気分の浮き沈みはない方かもです。でもちゃんと気を遣える部分はあると思うし、腹黒い部分もあるし。とんがってなくて、割と枠に収まっちゃってるから「自分の性格面白っ」て思わないかもしれないです。
ボケとツッコミで言うなら、多分圧倒的にツッコミです。あんまりボケたりとかは得意じゃないですね。日常でずっとツッコミ入れてると思います。
自分の性格を面白いと思っていないので、自分からなんか突拍子もない面白いボケみたいなのが生まれると思ってないんですよ。多分、俯瞰して見てるみたいなのが好きというか、かっこいいと思っているのかもしれないです。
―NHK連続テレビ小説「らんまん」で一緒だった前原瑞樹さんとのインスタライブを拝見しましたが、確かにずっとツッコミ入れてました
そーなんですよ。「前原兄弟」と命名されて、クリスマスイブに大阪でトークイベントやったんですけど、いやーお客さん集めるのって、本当に大変です。
瑞樹くんも日曜劇場「海に眠るダイヤモンド」(TBS系)で主要キャストやってましたし、僕も1月からの“月9”ドラマ「119エマージェンシーコール」(フジテレビ系、1月13日よりOA)でレギュラーで出させていただくし、2人とも頑張ってきたのに、全然人集まらんやんっていう。
―しかも現在公開中の映画「ありきたりな言葉じゃなくて」では主演も務めてますよね
実は一度断っているんですよね。当時、自分の中で主演を背負うということとの気持ちのバランスが取れなくて、その状態で仕事を受けるというのは失礼かなと思ったので。でもプロデューサーや監督の熱意に後押しされる感じで受けることにしました。
ただ後から、渡邉監督は実は僕の写真をパソコンの前に置いて「あて書き」で書いていたと聞いた時は、ちょっと怖いなと思いましたけど(笑)。
やはり僕よりも圧倒的に監督自身っていうか。監督はこの作品で話すまで会ったことがないわけだから、多分監督の中のイメージの前原ですよね。監督と話していてより強く思いました。演じていても、肉体は僕だけど、中には監督が入っている感覚でしたよ(笑)。
今回の映画は、本当は万人受けするのが良いかもしれないけど、こないだ試写を観てくれた方に「僕のキャラクターすごく嫌いでした」って言われて。でも僕はそれをすごくいい意味だと思っていて。主人公に共感できるかできないかって人それぞれで、きっと観る人の数だけ評価が分かれる映画だなって。それを感想として届けていただけたらうれしいなって思います。
―作品の評価気になりますか
気にならないかといったら気にはなりますが、それによって揺さぶられたりはしないと思います。その作品の捉え方は人それぞれ自由なので。ただ、作品を観てくださった方のSNSは見たりするんですよ。評判はありがたいことに概ね良さそうと思っています。
―今年は作品数も多かったと思います
もう本当に変わらずいろんなお仕事させていただいたっていう意味で言うと、 すごく大幅にこれが変わったとかってことはないんですけど、でも自分の中の意識として、先ほど触れてくださいましたけど、イベントなどのお客さん集められないと、できることって増えていかないなって、それを気づかせてもらった年だと思うんです。
僕みたいなタイプは、作品の駒として成立していれば、お客さんが呼べるかどうかって意外と重要視されないというか。それよりは作品の質を高める方に注力してくださいと言われるんですけど、そうじゃないところにも行かなきゃいけないなっていうのは、なんか思い始めましたね。今後、もうちょっと人を呼べる俳優にならなきゃなっていうのが、今後の目標かもしれません。
―来年やりたいことは
ラジオやりたいです。そのためには、聞いてくれる人を増やさないと続かないので、なんかそういうのを全部込み込みで、お客さん呼べる人にならないとなと思いました。
■インタビュー後記
いやー、めちゃめちゃフレンドリーな方で、よく話す方でした。ちょっとの待ち時間も、ずっと話したり、ツッコミを入れたりと忙しい。街では気が付かれない自信がある…と言ってましたが、逆にお顔ではなく、機関銃しゃべりしている人を見たら、前原さんだったくらい話す(笑)。そして前原さんの顔を見て話していると、自分も笑顔になっているのが分かる。“いい人顔”の前原さんは、役作りではなく、いい人だった。やっぱり生き方って顔に反映されるのかもしれない。
■前原滉(まえはら こう)
連続テレビ小説「まんぷく」(2018年/NHK)などのドラマや、各映画賞で高い評価を受けた『あゝ荒野 前編』(2017年)などの映画に出演。ドラマ「あなたの番です」(2019年/日本テレビ系)でマンションの新管理人役を演じ話題に。近年のドラマでは、連続テレビ小説「らんまん」(2023年/NHK)、「VRおじさんの初恋」(2024/NHK)、「クラスメイトの女子、全員好きでした」(2024年/日本テレビ系)、「スカイキャッスル」(2024年/テレビ朝日系)や、映画では『沈黙の艦隊』(2023年)、『笑いのカイブツ』(2024年)、『マッチング』(2024年)など幅広く活躍。
12月20日より主演映画「ありきたりな言葉じゃなくて」(制作/テレビ朝日映像)が公開中。また1月13日から始まる「119エマージェンシーコール」(フジテレビ系)にもレギュラー出演予定。