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時代の転換!“反ルッキズム”の流れに…イケメン評論家の本音は?!

長谷川まさ子フリーアナウンサー/芸能リポーター
(イケメンについてアツく語る沖さん、撮影:すべて長谷川まさ子)

 20年前からイケメン評論家として活躍し、自らが主催するイベント「沖直実のいい男祭り」は毎回チケット完売!ブレイク前の斎藤工さんや城田優さんらも出演していた、話題の“祭り”だ。しかし時代は、ルッキズム(外見至上主義)ではなく、「外見や身体的特徴で他者を差別してはいけない」という反ルッキズムが主流となっている。されど、美しいものは美しい。さて、職業・イケメン評論家である沖直実の「ルッキズム」に対する本音を聞いてみた。

ー沖さんの考えるイケメンの定義を教えてください

 最近は「イケメンとはなんぞや」って言われると、“ギャップ”って答えています。今、皆さんのイケメンの定義が細分化していて、塩顔が好きな人、クールビューティーが好きな人もいれば、ガチムチ系のラガーマンが好きっていう人もいて、とにかく好みが分かれています。そういう意味では、一人一人がイケメンって言えるのかなと。

 イケメンっていうと、どうしても“顔”に注目しがちですけど、私は“イケてるメンタル”でのイケメンが大事だと思っていて。「外見は一番外側の内面」ですから、結局何か溢れ出るものがあって、それが知性だったり優しさだったり、ギャップにも繋がるのかなと。

ー反ルッキズムの風潮についてはどう思いますか

 ぶっちゃけ、やりづらいです(笑)。例えばアスリートさんを紹介するにしても、ひと昔前は、ここまできた背景を話しながら「上腕二頭筋がいいんですよ」とか「ラガーマンの胸板に飛び込みたい」とか、ちょっと下品なことも言えていたんですけど、もう最近はむしろバックボーン重視。

 「イケメン」という言葉自体に過敏な反応を感じた時には、“推し活”や“推しメン”と言い換えることもありますね。

 でもね、実は女性ってみんなイケメン評論家だと思っているんですよ。 反対に男性はみんな美人評論家。結局、人って美しいものを昔から崇めるじゃないですか。モナリザであり、ダビデ像であり。それは、ルッキズムとはまた別なものだとは思っているんですけど、今はなんでもかんでもダメって言われちゃうから(泣)。

ーそもそも、イケメン評論家の始まりはどんなことから

 私、お酒とか飲みながら「日本タレント名鑑」(VIPタイムズ社)を毎日のように見ていて。そうすると、やっぱり男性の方を見るじゃないですか(笑)。見ているうちに、こんなステキな人たちがいっぱいいるんだ、でも私も知らなかったし、世の中にも知られていないなんて、なんかもったいないなって思ったんです。

 そこで、ステキだと思った男性のことを、調べたり舞台を観に行ったり。そんなことをし始めた2003年に、「テニスの王子様」っていう舞台が始まったんです。今では「2.5次元(アニメ、マンガ、ゲームなど2次元のコンテンツを3次元で実現したもの)」って言われているんですけど当時、その言葉もなかった。

 飲み友達のマネジャーにめちゃめちゃ誘われて、「テニスの…」を観に行くようになったんですね。そうしたら、劇場での女の子の熱量がすごくて!!まだ全員無名なんですよ。でも、それぞれにファンがついて、物販もバンバン売れて、なんなのこの世界は?!と衝撃を受けました。

 それで、そんな男の子たちを紹介していこうと思ったんです。で、最初は「いい男評論家」と名乗って「いい男評論家のいい男祭り」っていうイベントを始めたんです。

 それから3年くらい経つ頃、ある放送作家さんに「沖さん、この時代に『いい男』じゃ検索引っかかんないよ。『イケメン』って言葉を使いなよ」とアドバイスをもらって。「イケメン評論家」って名乗り始めて、ブログのタイトルも名刺も全てを「いい男評論家」から「イケメン評論家」に変えたとたん、1週間で「an・an」(マガジンハウス)から「来年来るイケメン教えてください」って依頼が来たんです。

 まだ世に出てない、アスリートさんだったり役者さんだったりを、勝手に応援して、甲子園の地区予選から甲子園に押し出すかのごとく、応援マネジャーのような気持ちでやっています。

ーそれにしても「いい男祭り」ってすごいですね

 イケメン評論家と名乗り始めたのが、ちょうど「花盛りの君たちへ~イケメン■パラダイス~(※■はオスマーク)」(2007年、フジテレビ)が始まった頃だったんですけど、「いい男祭り」はそれより前の2004年からで、これが毎回ソールドアウトなんですよ。

 初めは「ホストさんの集まりですか」という感じで、なかなか出てくれる方がいなかったんですけど、飲み会で培ったご縁で、マネジャーさんが「うちの出してあげるよ」って言ってくれて。

 本当にありがたいことに、売れる前の斎藤工さんや宮野真守さん、津田健次郎さん、城田優さんも出てくれて、4、5回目からやっと「出たい」って言ってくださる人が増えていきました。

ーとはいえ大変じゃなかったですか

 元々ラジオのDJをやっていて、リスナーさんを集めて毎年自分のトークライブをやっていたんです。喋りはまあまあできるし、台本とか自分で書けたりしたので、そのトークライブのノウハウを全部活かしてイベントを始めました。

ーお客さんの年齢層はどれくらいなんですか

 本当に幅広くて、例えば仮面ライダーの俳優さんが出演する時には、お子さんとお母様で二世代で来てくださったり、ヨン様が流行った頃や地下メンズアイドルの韓流の方が出演した時には中高年の方だったり、ゲストによって違いはあります。

ー参加者の感想は

 もうね、私含めコラーゲン増殖しまくって美容液知らずで、「毛穴がなくなりました」とか(笑)。「止まっていた生理がまた始まった」とそっと教えてくださったり。がんの患者さんが外出許可をもらって来てくれた時には、後で「 あんまりにも検査結果が良くなって、一時退院できた」とメッセージをいただいたことも。科学的根拠はないけど、何か元気になったり、明日も頑張ろうって思ってもらえれば、と20年続いています。

ー俳優だけではなく、いろんなジャンルの方を紹介していますよね

 例えばオリンピックだと、“花形”の水泳や体操はテレビ中継がありますけど、飛び込みとかトランポリンといったあまり放送されないような競技でも「この人素敵ですよ」っていう切り口で興味持ってもらえたらいいかなと。イケメンという不埒(ふらち)な切り口からでも結果、競技に関心を持ってもらえたらうれしいですね。

 「ノンストップ!」(フジテレビ)では、サーフィンの五十嵐カノアさんを紹介させてもらいました。その後、銀メダルを取ったこともあって、同番組で五十嵐さんを知った方からは「すごい沖さん!見る目あります」との反響をいただきました。

 ちなみに、今をときめくバレーボールの髙橋藍(らん)さんも私、東京オリンピックの前から、ずっと「ステキ!」って言っていたんですよ。すごくないですか(笑)。ちょっと密かな優越感を持っています。

ー有名人だけではなく、一般人のイケメンも

 私、イケメンデータを1万人ぐらい持っているんです。例えば、弁護士さんや歯医者さん、カフェの店員さんといった“会いに行けるイケメンさん”から、タレント、俳優、アスリートまで、多岐にわたってイケメンという切り口でお話はさせてもらってます。

 情報収集としては週に2、3回、舞台のゲネプロや映画を観に行ったり、会見をのぞいたり。イケメンがいると教えてもらったお店をチェックしたり、試合を観に行ったり。 後は、ブログやX、Instagramのチェックも怠らないですね。

ーイケメンが故の悲劇ってありますか

 みんな「イケメンっていいな」って言うけど、普通のお仕事をしているイケメンは、実は損をするんですよ。努力を見てもらえないというか。不動産屋さんや車の営業の方とかは、営業成績がいいと「顔のおかげだ」と陰口を叩かれたり。歯医者さんだと、「あんなかっこいい人に歯垢だらけの口を見せたくない」と避けられ、イケメンのパーソナルトレーナーさんも「弛んだ体を見せられないから痩せてから行きます」と敬遠されるなど…(笑)。

ーイケメンを目指す人にアドバイスを

 もう「パーツを磨け!!」って言っています。例えば、女性って男の人の指とか好きだから、ハンドクリームを塗って爪をキレイにするとか。私は喉仏に男性らしさを感じるから、「わざとペットボトルをごくごく飲んで喉仏を強調しろ!」なんて助言しています。

 後は、やはりギャップ。不器用そうなのに、楽器弾けちゃうとか歌がうまいとか。待ち合わせで文庫本を読みながら待つんだけど、その本が重厚な歴史物や科学的な本だったりするとギャップが演出できるよ、とか話しています。

ー注目のイケメン教えてください

 今バレーボール男子がめちゃめちゃ人気ありますが、次にくると思うのが高橋慶帆(けいはん)選手21歳。身長194センチ、お父さんがイランの方なので、慶帆さんも彫りの深いお顔立ちです。

ー今回「イケメン学習帳」という本を書かれましたが、なぜ今

 実はこの本は、タイトルが一番先に決まったんですよ。私、ジャポニカ学習帳をメモ帳代わりに使っていて、学習帳っていいなって。で、まずはタイトルが「イケメン学習帳」に決まって、学習帳ってするなら学べたりちょっと得する情報だったり発信したいという事で、イケメンの歴史を遡っていきました。

 だから実はイケメンの写真が1枚もない(笑)。その時代時代のイケメンの特徴、例えば、旧石器時代はがっちりした目・鼻・口の“ソース顔”だったけど、弥生時代になったら“塩顔系”が流行りだったとか。他にも、遣唐使は眉目秀麗な男性が集められていた…とか歴史の振り返りと雑学本になっています。

ーこれからもイケメン評論家を極めていきますか

 イケメンという言葉は、可愛いっていう言葉と同義語だと思っています。今って「可愛い」ってなんでもありじゃないですか。「お菓子可愛い」「おばあちゃん可愛い」みたいな。それと一緒。

 だからイケメンも、そんな感じで広い意味で使われていると思っています。「可愛い」と「イケメン」は同義語だと思えば、あんまりルッキズムとか言われなくなるんじゃないかなとは思います。

 自分はブレるのも嫌だし、やっぱりステキな男子はステキだから、今後もイケメンを発掘して、勝手なお節介でも皆さんに「見て見て、ステキな人いるのよ」って教えていきたいな。

■インタビュー後記

 沖さんとの出会いは、異業種も集まる女子の飲み会だったと思う。リポーターとして長く業界に身を置く私であっても、沖さんの「イケメン評論家」という肩書には正直驚いた。でもその驚きは、「そんなところに注目して活動しているんだ」という、そのアイデアに対してだった。そして時代は流れ、「ルッキズム」が問題視されるようになり、私も以前はテレビで「イケメン」を普通に取り上げてきたが、今やその単語を使うのには配慮がいる。じゃあ沖さんはこれからどうしていくのだろう…からこのインタビューは始まりました。沖さん、本音トーク、ありがとうございました。

■沖直実(おき・なおみ)

1992年からラジオパーソナリティーとしてデビュー。
その後、FMやAMでパーソナリティーをしながら2004年からイケメン評論家として「沖直実のいい男祭り」を開催。毎回、立ち見がでる観客を動員し大好評を博す。 斎藤工、城田優、上地雄輔、宮野真守、敦士、瀬戸康史などいち早く目をつけ発掘。 以後、ネクスト・ブレイクタレントやオリンピックアスリート、イケメンの傾向等について情報番組や女性誌でコメント。 イケメンのキャスティングやオーディション審査員等、イケメンに関しての全てを担当、今まで会ってきたイケメンは1万人以上。 2024年8月「イケメン学習帳〜究極の推し活手帳〜」(日興企画)を上梓。

フリーアナウンサー/芸能リポーター

群馬県生まれ。大学在学中にTBS緑山塾で学び、TBSラジオ「大沢悠里のゆうゆうワイド」で7年間アシスタントを務める。ワイドショーリポーター歴はTBS「3時にあいましょう」から30年以上、皇室から事件、芸能まで全てのジャンルをリポートしてきた。現在は芸能を専門とし、フジテレビ「ワイドナショー」、日本テレビ「情報ライブ ミヤネ屋」ほか、静岡・名古屋・大阪・福岡の番組で芸能情報を伝える。趣味は舞台鑑賞。

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