EICMA2019で見たイタリアの底力 マイナーだけど実力派の老舗ブランドの魅力とは!
まだまだあるツウ好みのブランド
ドゥカティ、アプリリア、モトグッツィ、MVアグスタ、ビモータ……。究極の機能美と煌めくような美しさを纏ったイタリアンなバイクたち。その一方で、日本ではあまり馴染みがなく言ってしまえばマイナーではあるが、実は昔からずっと存在している老舗ブランドがイタリアにはいくつもある。今回は隠れた魅力を持つそんなツウ好みのブランドを幾つかEICMA2019からご紹介したい。
■BENELLI
1911年創業のベネリは2020モデルとして水冷並列2気筒754ccのネオクラシックタイプのスクランブラー「Leoncino 800」を発表。スチール製トレリスフレームとフロント19/リヤ18インチのワイヤースポークホイールに本格的オフロードタイヤがその気にさせてくれる。また、水冷並列2気筒500ccのアドベンチャーツアラー「TRK 502」は扱いやすいサイズ感が魅力だ。ベネリといえば、2000年代初めにスーパーバイク世界選手権にも果敢にチャレンジしていたことがあって、そのベース車両となった3気筒モデル「トルネード900Tre」を思い出す。かつて箱根の峠道で試乗したことがあるが、エレガントで走りも確かな素敵なマシンだった。日本でもまた正規ルートで発売されたら面白いと思うのだが。
■MOTO MORINI
1937年創業のモトモリーニからは「CORSARO ZT」が登場。伝統の水冷Vツイン1187ccから最高出力139psを発揮するガチなストリートファイターだ。また、同エンジン搭載のネオクラシック「MILANO」は昔懐かしい武骨でシンプルな作りがイイ感じ。並列2気筒650cc搭載のアドベンチャーモデル「X-CAPE」も美しいキャンギャルとともに会場で注目を集めていた。筆者もずいぶん前にコルサーロ1200を試乗したことがあるが、弾けるトルクのジャジャ馬でかなりエキサイティングなマシンだった記憶がある。いかにもイタリア人受けする感じのブランドだ。
■MONDIAL
モンディアルからは1949年に初のWGP125タイトルを獲得したNello Paganiをオマージュした「SPORT CLASSIC 300/125」とそのネイキッド版の「HPS 300/125」を発表。ツインショックにワイヤースポークのネオレトロな雰囲気ながらエンジンは水冷4スト単気筒DOHC4バルブと現代的。ダートトラッカー風のアップマフラーとタイヤもカッコいい。電動バイクも展示されていた。会場でモンディアルのPR担当者に話を聞いたが、最近は欧州でもダートトラッカーやスクランブラーのような“土系スタイル”が人気だそう。伝説のロードレーサーが何故このカタチになったのか戸惑いながらも納得。復活したモンディアルにはかつてホンダ・VTR1000 SP-1のVツインエンジンを搭載した限定バージョンで「ピエガ」というスーパーバイクがあった。こちらも強烈なマシンでまさにロード・ゴーイング・レーサー。今出したらきっとウケると思うのだが。
「下町ロケット」的なバイクメーカーがひしめく
イタリアには戦後の日本のように未だに中小規模のバイクメーカーが多くひしめいていて、そのどれもがカスタムレベルではなく立派な完成車を作り続けている。もちろん、すでに創業会社ではなくブランドを譲り受けた別の企業だったり、生産拠点は海外だったりもするが、それも海外ブランドにはよくあることだ。また、エンジンや使われているパーツが最先端ではなかったり、電子制御化があまり進んでいなかったりもするが、バイクの価値や楽しさは「スペック」や「テクノロジー」がすべてではないと思う。扱いやすい排気量と車格、多くの若者でも手が届きやすい手頃な価格なども大事な要素だ。
そう考えると、イタリアという国はかなりバイクで頑張っていると思う。『下町ロケット』ではないが、こういう中小規模のメーカーが作る庶民的な(と言っては失礼かもだが)製品がイタリアのバイク文化を下支えしている。
歴史に埋もれた名車のオマージュなどいかが
翻って日本では4大メーカーが原付クラスの小排気量からプレミアムな大排気量モデルまでフルラインナップで揃えているから、その気になればひとつのブランドの中で欲しい機種を全て選べるほどだ。そしてクオリティも極めて高い。それはそれで素晴らしいことだが、たまには人と違ったもうちょっとクセがある変なモデルに乗ってみたいと思うことも。
そんな密かな期待に応えてくれる、個性的なバイク作りをしてくれるメーカーがあったりすると楽しいと思う。日本のバイクの聖地、浜松には戦後間もない頃には50あまりのバイクメーカーがあったという。かつて存在したブランドの歴史に埋もれてしまった名車をオマージュした現代版などを作ってくれたら夢があるのになぁ、と時々思うのだ。
※原文より筆者自身が加筆修正しています。