光速を超える粒子「タキオン」とは?実在する最新の研究成果がヤバイ
どうも!宇宙ヤバイch中の人のキャベチです。
今回は「超光速粒子タキオンとそれを支持する成果」というテーマで解説します。
アメリカの二人の研究者チームは、宇宙はタキオンで満たされていることを支持する結果が得られたと、2024年3月に発表しています。
本動画ではまずタキオンという粒子の概要を解説し、その後それを支持する結果を得た最新の研究について解説していきます。
●タキオンの概要
○光速という上限
現代において、光はこの世で最も速いもので、物質は光の速度を超えることはできないとされていますが、それはなぜでしょうか?
例えば、真空中で電子に何度も力を加え、その速度がどうなるか実験したとしましょう。
電子はマイナスの電荷を持っているので、電場によって加速することができ、また、適切な磁場をかけることで電子の軌道を円軌道に調整することが可能です。
そのため、電子は円形の加速器によって何度も加速することができます。
しかし、このような実験の測定結果をグラフにすると図のようになります。
横軸が電子の加速回数、縦軸が電子の速度です。
最初、電子は加速されるたびにその速度を増していきますが、速度が大きくなるにしたがって、その増加は緩やかになっていき、最終的には限りなく一定の値に近づいていきます。
この一定の値が光の速度です。
あらゆる物質は光速に近づくにつれて、加速により大きなエネルギーを必要とするようになり、最終的には無限大のエネルギーが必要になります。
そのため、物質を光よりも速い速度に加速させることは不可能です。
では逆に、光の速度をより速くすることができないか考えてみましょう。
例えば時速60kmで走っている車から前方に向かって時速40kmでボールを投げると、ボールの速さは時速100kmになります。
それでは、光速の90%の速度で動いているロケットから前方に向かって光を放つと、その光の速度はどうなるでしょうか?
なんと光の場合は、速度は変わりません。真空中の光の速度は誰から見ても一定なのです。
○超光速の粒子タキオン
ではその光速を超えるとされる「タキオン」とは一体どのようなものなのでしょうか?
私たちが観測できる粒子の種類はその速度によって2つの種類に分けることができます。
一つ目は、常に光速より遅い速度で動く粒子で、この粒子は加速しても光速に達したり、超えたりすることはありません。
そのような粒子は例えば、先ほど例に挙げた電子をはじめ、陽子、原子核、そしてこれらから成る全ての物質がそうです。
そのためそれらの集合体である私たちの体も、光速以上の速度にまで加速することはできません。
二つ目は、常に光速で走り続ける粒子で、どのようなエネルギーの状態でも、どのような運動状態の観測者から見てもその速度が一定の粒子です。
例えば光子や、未発見ながら重力子もそのような素粒子と考えられています。
そして、この2種類の粒子から類推して、第3の分類の粒子の可能性が考えられます。
それはつまり、常に光速を超えた速度で走り続ける粒子「タキオン」です。
○タキオンの奇妙な特徴
相対性理論と矛盾がないように考えていくと、超光速粒子タキオンがどのような特徴を持つ粒子なのかが見えてきます。
とても実感がわかないほど、奇妙な特徴の連続です。
まず、タキオンの質量は虚数単位になります。虚数とは、2乗すると-1になる数のことです。
そして、タキオンは無限大の速度になり得ます。
なんとタキオンはエネルギーを失うと速度が大きくなり、エネルギーが大きいほど減速して光速に近付くのです。
光速になれない点では、私たちの体の粒子と同じです。
エネルギーがゼロの時、タキオンの速度は無限大となります。
仮に速度無限大のタキオンを使うことが出来れば、宇宙の端から端まで瞬時に通信が可能です。
次に、タキオンの顕著な性質として「過去への通信」の可能性があります。
もし、光よりも速い粒子が存在するなら、理論上は過去に情報を送ることができるのです。
光速を超えたとしても通信の信号は常に未来に向かうはずです。
しかし、光速に一定近いロケットを地球から飛ばし、そのロケットに向けてタキオンを飛ばしたのち、ロケットにタキオンを地球に向けて返してもらうと、地球時間ではタキオンを飛ばす前に、飛ばしたタキオンが到達します。
これは一見受け入れがたい内容ですが、理論上は可能です。
ただこの仕組みについては非常に複雑なので、わかりやすく仕組みを解説しているこちらのサイトを共有しておきます。
○タキオンを検出する方法
ここまで、タキオンの持つ性質を紹介しましたが、常に光速よりも速くうごき、無限大の速度すら持ちうる粒子の存在をどのように証明すればよいのでしょうか?
タキオンの検出手段のひとつとして挙げられるものに、タキオンが発するチェレンコフ光を観測するという方法があります。
光の速度は秒速約30万kmとされていますが、これは真空における最大速度で、光が物質の中を進む場合、その速度は真空を進む場合よりも遅くなります。
例えば、水中での光の速度は真空中の75%程度です。そのため、真空では決して光の速度に到達しない粒子でも、物質のなかでは光より速く進む場合があります。
そして荷電粒子が、ある物質の中での光速よりも速く動いた場合、光が出る現象が発生し、この発せられた光のことを「チェレンコフ光」と呼びます。
タキオンは真空中でも光速を超えるとされているため、真空中でこのチェレンコフ光を発生させる可能性があり、もし、それを観測することができれば、それはタキオンが存在することの証明になり得ます。
現在、多くの物理学者はタキオンは存在しないか、存在しても検出できないだろうと考えています。
しかし、もしタキオンが存在した場合、この粒子は、これまでの常識を覆す新たな可能性をいくつも秘めており、その夢のような可能性が、今なお観測を目指した挑戦が続いている理由なのかもしれません。
●タキオンの存在を支持する新発見
アメリカの二人の研究者のチームは、宇宙はタキオンで満たされていることを支持する研究成果が得られたと、2024年3月に発表しています。
○特殊な宇宙モデル
研究チームは、「宇宙を満たすタキオンを主体として宇宙が進化している」と主張する、既に知られていた特殊な宇宙モデルを検証しました。
このモデルではなんとダークマターもダークエネルギーもタキオンの存在によって説明が可能です。
ダークマターもダークエネルギーも正体不明であり、より広い選択肢から候補を検証するために、タキオンを含めた様々な仮説が存在しています。
宇宙を満たすタキオンに由来するエネルギーによって重力場が乱され、宇宙のマクロな構造にも影響を及ぼす可能性があります。
重力的な影響によってマクロな構造に影響を与えるものこそ「ダークマター」であり、つまりこのモデルにおいては、ダークマターはタキオンによって説明できます。
またタキオンは宇宙を膨張させる働きをする可能性もあります。
これはまさにダークエネルギーの性質です。
さらにタキオンで満たされた宇宙は一度減速し、その後加速膨張するという、実際に観測されたこの宇宙の進化もよく説明できるそうです。
○モデルの検証結果
1200個を超えるIa型超新星爆発の観測データに前述の特殊な宇宙モデルを適用したところ、このモデルでもIa型超新星爆発のデータを上手く説明できることがわかりました。
この結果は宇宙がタキオンに満たされていて、ダークマターもダークエネルギーも不要である可能性を示していると言えます。
しかしダークマターとダークエネルギーを含む標準的な宇宙モデルを支持する根拠は多数あるのに対し、タキオンのモデルは裏付けがまだまだ乏しい現状です。
さらにタキオンの存在自体がイレギュラーであり、否定的な意見が多数派です。
しかし今後タキオンが主流派になる可能性も否定はできませんし、何よりそうなったら面白いですよね。