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主要局はほぼ下落、NHKのみ上昇…主要テレビ局の直近視聴率実情(2022年3月期上期)

不破雷蔵グラフ化・さぐる ジャーナブロガー 検証・解説者/FP  
家族団らんに欠かせない存在のテレビ。その視聴率は(写真:アフロ)

全日は日テレ、ゴールデンはNHKがトップ

テレビ局の番組や局のメディア力のすう勢を推し量るのに、一番明確な指標が(世帯)視聴率。キー局における最新となる2022年3月期(2021年4月~2022年3月)における上期の視聴率を確認する。

各種データはTBSホールディングス・決算説明会資料集ページ上で発表された「2022年3月期 第2四半期決算資料」などからのもの。なお「キー局」と表現した場合、一般的にはNHKは含まれないが、よい機会でもあるので合わせてグラフに収める。

なお昨今では多くの局の発表資料においてHUT(世帯視聴率、Households Using Television)ではなくPUT(個人視聴率、Persons Using Television)を用いるようになっているが、連続性を鑑み今記事では引き続きHUTを用いる。以後の記事内表記・グラフ内表記も断りがない限り「視聴率」は「世帯視聴率」を意味する。

↑ 主要局世帯視聴率(週ベース、ビデオリサーチ、関東地区)(2022年3月期・上期)
↑ 主要局世帯視聴率(週ベース、ビデオリサーチ、関東地区)(2022年3月期・上期)

テレビ東京は区分の上では在京キー局の5局に収められているが、他の4局と比べれば放送内容の特異性(比較的経済関連の内容が多い)の都合上、視聴率で他局と比べて低めの値が出るのは、ある意味やむを得ない。その特異性を考慮し順位精査の際に除外すると、日本テレビ・テレビ朝日・NHKが高め、TBSとフジテレビが低めと、2階層状態にある。

視聴率が低迷しやすい昼間や深夜を除いていることから、全日と比べて高い視聴率が期待できるのがゴールデンタイム(19~22時)とプライムタイム(19~23時)。その双方で10%を切っているのは(テレビ東京以外では)TBSとフジテレビ。双方とも10%以上はテレビ朝日とNHK。日本テレビはゴールデンタイムのみ10%以上。

今件で選択したテレビ局の中ではやや特異な動きを示しているのがNHK。上でも触れているが、ゴールデンタイムとプライムタイムの差異が他局動向と比べるとかなり大きい。これは以前からの傾向で、ゴールデンタイムよりもプライムタイムの方が低いことから、その違いとなる時間帯、22~23時における視聴率がとりわけ低く、平均値を下げてしまっていることになる。もっともこれは各テレビ局の番組構成上、民放ではこの時間帯に番組のクライマックスや人気の高い番組が入ることが多いのに対し、NHKではそうとは限らないこともあり、仕方のない面もある。

ゴールデンタイムで視聴率動向を見ると、トップはNHK、次いでテレビ朝日、そして日本テレビ、TBS、フジテレビが続く。プライムタイムで比較すると、テレビ朝日がトップとなり、次いでNHK、日本テレビ、TBS、フジテレビの順となる。NHKのプライムタイムでのいまいち度合いは直上にその理由を記した通りだが、プライムタイムではテレビ朝日において、ゴールデンタイムを超える値を示しているのは意外かもしれない。22~23時の時間帯で放送される各局の人気番組の人気が、そのままこの差に表れるともいえる。テレビ朝日では「報道ステーション」がメイン、後は各種映画や特番だろう。

前年同期からの変化を確認

視聴率の変移を前年同期(2021年3月期・上期)との比較で表すと次のようになる。

↑主要局世帯視聴率前年同期比(週ベース、ビデオリサーチ、関東地区、ppt)(2022年3月期・上期)
↑主要局世帯視聴率前年同期比(週ベース、ビデオリサーチ、関東地区、ppt)(2022年3月期・上期)

今期はNHK以外の全局が全時間区分においてマイナスとなり、NHK以外では視聴率が増加した局・時間区分は皆無となった。非常に珍しい現象だが、恐らくは前年同期では新型コロナウイルスの流行に伴う巣ごもり化によってテレビ視聴の観点では局を問わずプラスへと働いており、その反動が表れる形となったのだろう。

マイナス幅を見比べると、時間区分別ではテレビ朝日以外は全日よりもゴールデンタイムやプライムタイムのマイナス幅が大きい。多くの人がテレビを視聴する時間帯で、よりテレビから離れる傾向があったことになる。他方テレビ朝日では時間区分によるマイナス幅の差がそれほど大きくはない。昼夜を問わず、同局番組の放送から距離が置かれたことになる。放送内容や番組構成の傾向が視聴率の落ち込み方に反映されたようで興味深い。一方でフジテレビはテレビ東京同様に元々の値が小さいため、下げ幅に差異があまり生じなかったようだ。

全局の中で時間区分を問わず一番大きなマイナス幅を示した日本テレビだが、直近の同社四半期決算説明会の公開資料では具体的な説明は特に無し。むしろ「テレビ広告収入が、一昨年のコロナ禍前の水準にほぼ回復」「スポット中心に増収、タイムも東京五輪などで増収」など、収益的にはポジティブな動きの中にあることが説明されている。かろうじて「コロナ禍で在宅率の高かった昨年と比較すると、各局数値を下げているものの、日本テレビは11年連続『個人3冠』へ向け推移中」と視聴率に関する言及があり、今回の視聴率の下げ方が、コロナ禍による特需的なものからの反動でしかないと分析している。

この数年は各局ともターニングポイントを迎えている気配を示している。ある局はVの字回復を見せ、ある局は低迷を続け、ある局は下落傾向が継続している。単発のヒーロー的番組やイベントのおかげで一時的な盛り返しを見せることはあっても、根本的な体質、視聴者への姿勢の部分がしっかりとしていないと、次第に低迷さが顕著になる。

中にはそのドーピング的効果に味を占め、魅惑に取りつかれ、繰り返しその効果を望んでいるような行動を示す局も見受けられるが、「待ちぼうけ」の歌にある通り、常に切り株にうさぎがやってくるとは限らない。それを期待するどころか、切り株を増やすべく樹の伐採を繰り返し、かえって地道な努力の成果である果実の収穫量を減らすような動きすら見受けられるのは残念な話(昨今の「報道」番組では特にその傾向が見受けられる)。

掲載視聴率をHUTからPUTに切り替える局が出てきたのは、世帯人数の少人数化に加え、テレビの観賞スタイルが「家族皆で」から「個人で」が主流になりつつあるとの認識が、局側で生じて来たことを意味するのかもしれない。

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(注)本文中のグラフや図表は特記事項の無い限り、記述されている資料からの引用、または資料を基に筆者が作成したものです。

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(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。

(注)「(大)震災」は特記や詳細表記の無い限り、東日本大震災を意味します。

(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。

グラフ化・さぐる ジャーナブロガー 検証・解説者/FP  

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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