【泉佐野市】街に突然現れた「温かい冷蔵庫」。その扉を開けると感動の光景が!ここは一体なに?〈市内初〉
街にこんなに「温かい冷蔵庫」があったなんて…。
現地を訪れてとても感動しました。
壁に貼られていたのは利用者からの“感謝のメッセージ”。
もう、貼りきれないほどの量であふれています。
「とても助かります。ありがとうございます」
「食べざかりの男の子がいます。ほんとうに助かっています」
「いつもありがとうございます。2回かかせてもらってます!! かんしゃ ありがとう」
「いつもありがとうございます。おせち家族でおいしくいただきます」
このメッセージを読んで、ここがどういう場所なのかすぐにわかりました。
なぜなら、わたしも同じような環境で子どもを育てていたから。
今回ご紹介するのは、生活に困窮する子育て世帯に食料品・日用品を24時間無償で提供してくれる 泉佐野市初!みんなの公共冷蔵庫「コミュニティフリッジ泉佐野」。
「コミュニティフリッジ」とは、食料品・日用品の支援を必要とする人が、人目を気にせず24時間都合が良い時に(無償で提供される食料品・日用品を)公共冷蔵庫に取りに行ける仕組みのこと。海外ではすでに広がっている取り組みで、日本では2020年に岡山県で初めて導入され、「コミュニティフリッジ泉佐野」は国内で10か所目、大阪府内では3か所目となる公共冷蔵庫です。
現地を訪れると、「コミュニティフリッジ泉佐野」を運営するNPO法人キリンこども応援団 の川上 智子(さとこ)さんが、食料品や日用品の補充をしていました。
子どもに人気のアンパンマンジュース。うちの子も大好きでした。
こちらは一世帯1つ1回限りの棚。「醤油」や「日清キャノーラ油」「洗濯洗剤」などが並んでいます。登録者全員分が用意されているようですよ。
「マヨネーズ」「お好み焼き粉」「パスタ」「パスタソース」は家庭の必需品。
ご飯がモリモリ食べられる「ふりかけ」もうれしい!
泉佐野市から提供いただいた「お菓子の詰め合わせ」も。お母さんのティータイムのお供にいいですね!
レトルトの「カレー」や「牛丼」、「小麦粉」「菓子パン」など。
なにやら可愛い「おさかなメモ」を発見! こちらは「ツナ缶」のようですよ~。
(1回につき一世帯2缶まで) 「ツナ缶」って何にでも使えて便利ですよね!
こちらは「オリエンタルベーカリー」から提供されたパン。このように大量に入荷があった場合は、川上さんが登録者にメールでお知らせをするのだとか。
「パンがたくさん入荷していますよ~! みなさんいかがですか?」
こんな感じで。
そして驚いたのが「生鮮食品」もあること。
なんと冷蔵庫には、活きのいい魚まで入っていますよ!
「生鮮食品」が入荷した際もメールで希望者を募るそうです。
袋に川上さん直筆の温かいメッセージが貼られていました。
「赤シタ何にされますか? 煮つけも、揚げても、ムニエルもおいしいですよねー。また感想聞かせてください!」
「スズキです。ムニエルが最高においしいです!!がんばってさばいて下さいね。また感想お聞かせ下さるとうれしいです」
なんか「繋がっている」感じがいいなぁ。
わたしもシングルマザー時代はとても孤独でした。誰かと繋がりたくても仕事と家庭の両立でもういっぱい いっぱいで。 “見てくれている” “気にかけてくれている” 人がいるって本当に心強いと思います。
ほかにも、お米やティッシュ、文房具などの日用品まで、生活に欠かせないありとあらゆる品々が多く揃っている印象でした。
「コミュニティフリッジ」では、冷蔵庫を設置して品質管理をおこなっています(冷凍庫も設置予定)。また、ご提供いただいた食料品・日用品はオンラインのデータベースで管理し「いつ誰が、何を必要としていたか」がわかる仕組みとなっています。
「つい、先日もスポーツドリンクの粉をたくさん持ち帰っていた人がいて、事情をうかがったところ “お子さんが高熱を出していた” ことがわかったんです。物資の支援だけで終わらせるのではなく、次のアプローチへと繋げていきたい」と川上さん。聞くところによると、支援してくださっているのは地元の企業や商店、農家さん、子ども食堂の近所のおじさん、行政など。ほかにも「泉佐野漁港」からは鮮魚が、「貝塚の明治 関西工場」からはジュースやヨーグルトなどが提供されています。個人、企業に関わらず、多くの方から支援物資が届く「温かい冷蔵庫」。
それでも十分でない時は、「スマートサプライ」(*)を通して物資を募ることもあります。
*「スマートサプライ」とは、各地域で必要とされる物資を掲示したコミュニティサイト。持ち込む時間がない、県外在住、外出がためらわれる、といった方でもご支援いただけます。
では、具体的にどういった方が「利用対象者」になるのかご説明します。
対象者は、泉佐野市内に住む18歳以下の子どもを育てる世帯で様々な事情により食事に困っている世帯(登録制)。
*児童扶養手当受給世帯や生活保護制度が対象とならない子育て世帯など(生活保護受給世帯は対象外)
泉佐野市子育て支援課・生活福祉課・人権推進課及び泉佐野市社会福祉協議会と連携して様々な事情をくみとり柔軟に対応してくださるそうです。
提供を希望される方は、「コミュニティフリッジ泉佐野」公式ホームページ(外部リンク)の「利用申し込みフォーム」からお申し込みください。その後、面談(現在は、TELにてご家庭の状況をうかがうなどしているとのこと)、利用登録への運びとなります。
登録後は電子ロックが提供されるので24時間都合の良い時に品物を取りに行くことが可能。泉佐野市社会福祉センターの敷地内にあり、無人運営のため人目を気にせずご利用いただけます。
取材中、一人の女性が入って来られました。
わたしは、ここに居てもいいのかな? とすこし気を遣う場面ではありましたが、その女性からは「人がいたら嫌」などという雰囲気は微塵も感じられず、川上さんとも気さくに話している姿がとても印象的でした。
あの冷蔵庫にあった「スズキ」とパンを持ち帰られていましたよ。
選んだ品物は、入口付近にあるタブレットに「利用者QRコード」をかざして、品物についている「バーコード」を読み取って持ち帰ります。
その横に冒頭でお伝えした「コミュニケーションボード」がありました。
利用者の方からの感謝の想いであふれています。とても感動的な光景です。
中には、オレンジのペンで書かれた川上さんの返信メッセージも。
「おいしくのんでもらえてよかった」
「感想きかせてくれてありがとう! さとちゃん」
“お子さんが高熱を出していた”という方のメッセージも。
なんて「温かい冷蔵庫」なんでしょう。ここはたくさんの人の“心が交差”している場所だと感じます。
先程、女性が入って来られた時に「ここに居てもいいのか」などと感じたことをとても恥ずかしく思います。生活に困窮していても、「コミュニティフリッジ」は前進している人が集う場所で、小さな空間ではあるけれど「素敵なコミュニティ」が確立されていました。
2021年7月から毎月150世帯の子育て世帯に対して食材を配布しているキリンこども応援団。活動を進める中で「月に一度、決められた日時・場所でしか受け取れない」「毎月150世帯しか受け取ることができない」など多くの課題を感じてきた、といいます。
また、新型コロナウィルス感染症の流行や物価高騰の影響など、様々な事情から食事に困る子育て世帯が増加しており、特に困窮している子育て世帯に対し より継続的に食料支援ができる仕組みを検討していく中、泉佐野市社会福祉協議会の敷地(泉佐野市所有地)内に公共冷蔵庫を設置する運びとなったそうです。
昨年のクリスマスには、「お菓子の詰め合わせ」や「文房具」などのクリスマスプレゼントが(お母さんにも!) 、年始には「おせち料理」が振る舞われたそうです。
なんだか親戚の家に遊びに行った帰りに「たくさんのお土産をもらってきた」あの感じに似ていると思いませんか?
キリンこども応援団が掲げる「困ったときはお互いさま」の精神は、古き良き時代の「醤油の貸し借り」も想起させます。
「コミュニティフリッジ泉佐野」は、物資の支援を通じて人の温かさを感じられるそんな場所でした。
泉佐野市の児童扶養手当受給世帯約900世帯のうち、「コミュニティフリッジ泉佐野」に登録している世帯はわずか80世帯。
この素敵な取り組みをまだ知らない人へ記事をお届けしようと思いました。
もし、あなたのまわりに困っている人がいたらどうかこの情報をシェアしてください。「一人じゃないよ!」と教えてあげてください。
「こんな場所があるよ」と伝えて優しさの輪を広げていきましょう。
〈特定非営利活動法人 キリンこども応援団とは〉
キリンこども応援団は、大阪府泉佐野市において、子ども第三の居場所(コミュニティモデル)「キリンの家」を運営しています。キリンの家は、小学校低学年~高校生の子どもを対象として、子ども食堂を通じた包み込む支援をしています。たくさんの子どもたちの中に課題を抱えた子どもがいる。その子に支援を届けるには全体を丸ごと包み込むような場所が大事。子どもが自分らしく笑顔で安心できる居場所を通じて自分の未来に踏み出せる場所を作っています。2018年7月に子ども食堂をスタート。2021年10月に法人化し、現在206名の子ども達が子ども食堂に登録し利用しています。フリースクール、フードパントリー事業などを展開し、子どもたちが子どもらしくいられる場所を提供しています。キリンこども応援団は日本財団「子ども第三の居場所事業」の助成を受けて運営しています。