Apple、2019年出荷を目指して電気自動車開発か:スマホの次の稼ぎ頭は「欠陥の許されない自動車」
Appleが電気自動車(EV)の開発を行っているとアメリカのメディアが報じている。2019年の出荷を目指しており、「タイタン」と呼ばれている電気自動車開発のプロジェクトは、現在600人の開発チームを3倍の1,800人にまで拡大するとのこと。カリフォルニア州の陸運局関係者らはAppleはとの協議を行ってきたことも明らかにしている。
但し、現時点ではAppleも正式なコメントをしてないので、具体的にAppleから電気自動車がいつ、いくらで販売されるというところにまでは至っていない。
■スマホの次の稼ぎ頭は自動車?
Appleの売上は現在約70%がiPhoneである。残りがiPadやiPod、watchなどだ。地元のアメリカと日本、「iPhoneを持っていることが格好いい」と思われている中国ではiPhoneの新機種が登場するたびに大騒ぎして、よく売れているが、iPhoneはただのスマートフォンだ。日本や世界から部品を集めて、それらを中国で組み立てて「Appleというブランド」で付加価値を端末につけて世界中で高い金額で販売している。
世界中でコモディティ化されてきたスマートフォンをAppleというブランドだけで、これからもずっと高価で世界中で販売していくことには限界があることはApple自身が一番よくわかっているだろう。Appleとしてもスマートフォンやタブレット、ウォッチの次の「稼ぎ頭」を創出していかなくてはならない。それがAppleにとっては電気自動車なのだろう。
■Appleの自動車で大丈夫なのか?
当然のことだが、自動車は人の命にかかわる。製品に欠陥は許されない。
Appleは2010年6月に「iPhone4」発売後に電波受信障害が指摘された。端末の持ち方によって電波の受信が悪くなり、圏外になってしまった。電波が受信できないのはスマートフォンとして致命的である。Appleはそれに対して「持ち方を変えれば対処できる」と対応していたが、批判は収まらなかった。そしてスティーブ・ジョブズ氏は電波障害を避けるための端末のカバーを無料で提供した。
また「iPhone5」ではAppleが開発した地図アプリで誤表示など不具合が多発してティム・クック氏が2012年9月に謝罪会見を行った。2013年5月には「iPhone5s」で画面が青色になって強制的に再起動する不具合(Blue Screen of Death:死の青い画面)が発生した。そして「iPhone6」ではWi-Fiに接続しにくくなったことは記憶に新しいだろう。
これだけスマートフォンで不具合が多発している会社の自動車は本当に大丈夫なのだろうか。
■スマホと違って製品の欠陥と不具合は許されない、自動車は安全第一
他に購入したいと思わせる端末がないのも問題なのだろうが、これだけ過去に多くの不具合があったにもかかわらず、アメリカ、日本、中国ではiPhoneは根強い人気がある。
スマートフォンの不具合はソフトウェアのアップデートなどで対応できるだろうが、自動車では出荷後に不具合、欠陥が頻発することは許されない。人の命が奪われてからでは遅い。Appleの電気自動車なら安心安全と思って乗車してもらうためには、これからのスマートフォンやタブレットにおいても不具合のない製品を提供していくことが求められる。
スマートフォンはコモディティ商品だから、不具合や欠陥があってもいいと思っていたら、Apple製品のイメージ低下につながってしまう恐れがある。それはイメージとブランドを強化することで現在のポジションにいるAppleが一番よくわかっていることだろう。スマートフォンやウォッチなら「Appleはおしゃれ、iPhoneは格好いい」というイメージとブランドだけでも売れるかもしれないが、自動車に求められるのは、何よりも「安心安全」である。
iPhoneの不具合にイライラした経験がある人は「スマートフォンでこれだけ不具合が多い会社の自動車に乗りたいとは思わない」だろう。そのような消費者への信頼とイメージ回復は電気自動車開発と並行して重要になってくる。