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ハロウィーンで感染爆発は制御不能に「ロンドンの再生産数は3~5」英国も11月2日から都市封鎖へ

木村正人在英国際ジャーナリスト
ハロウィーン用の仮装グッズを販売するお店(英レイトン・バザードで)(写真:ロイター/アフロ)

「対策を強化しなければ1日の死者が4千人を超える」

[ロンドン発]新型コロナウイルス第2波の急激な拡大を受け、ボリス・ジョンソン英首相は週明けの11月2日からイングランド全土で1カ月間の外出禁止令を発動することを検討していると英BBC放送が報じました。学校や大学は除外されます。

BBCが入手した内部文書によると、第1波では1日当たりの死者は1千人を超えましたが、第2波では対策を強化しなければ4千人を超える恐れがあるそうです。イギリスでのロックダウン(都市封鎖)は3月23日~6月1日に続いて2度目。

ウェールズはすでに都市封鎖入り、北アイルランドも学校、パブ、レストランを閉鎖するなど部分的な都市封鎖に入っています。スコットランドは11月2日から5段階に分けて対策を進める方針です。今のところ感染が広がっている地域でもレベル3(アルコールの販売禁止、午後6時閉店)の対策がとられています。

イギリスの1日当たり新規感染者数は統計サイト「ワールドメーター」によると7日平均で2万2678人、1日当たりの死者は237人(10月30日時点)。

英インペリアル・カレッジ・ロンドンでは9月18日~10月5日と10月16~25日に行った大規模PCR検査の結果を比較した結果、新規感染者数は9日で倍増し、毎日9万6千人が感染していると推定しています。ロンドンの実効再生産数(感染者1人がうつす2次感染者数の平均値)は2.86と推定されています。

しかし国民医療サービス(NHS)関係者は筆者に「ロンドンの実効再生産数は実際のところ3~5に達しているという見方が出ています。延々と続く接触制限にみな嫌気が差しています。コロナ対策を指揮するジョンソン首相やマット・ハンコック保健相に対する信頼感がなくなっています」と言います。

そして誰も政府や政治家を信じなくなった

コロナ患者の急増でロンドンのNHS病院の集中治療室(ICU)ベッドは足りなくなっています。にもかかわらず誰も政府のガイダンスを信じようとはせず、感染拡大国からイギリスに帰国したり入国したりした場合の2週間自己隔離も守らない人が少なくないのが悲しい現実です。

コロナ対策の基本は飛沫感染を防ぐ2メートルの安全距離、マスク着用、接触感染を防ぐ手洗い励行、換気と3密(密閉、密集、密接)回避を根気よく徹底するしか手立てがありません。しかし自由主義と個人主義が根付く欧州では重い罰金を伴う強力な介入措置でも導入しない限り、自粛の呼びかけはないも同然です。

10月31日はハロウィーン。英メディアはどこでお祭り騒ぎを楽しめるか特集記事を掲載しています。現在、ロンドンでは7人以上の集まりを原則禁止(6人ルール)、飲食店は午後10時から午前5時まで閉店の措置(高)がとられており、屋外の集まりは6人まで認められています。

11月2日から外出禁止令が敷かれるとなると、ハロウィーンに合わせて「最後の晩餐」ならぬ「最後のどんちゃん騒ぎ」が繰り広げられるのは必至です。都市封鎖を行うならハロウィーン前にするべきです。1カ月の都市封鎖で果たして感染爆発をどこまで抑制できるのでしょうか。

第2波の感染爆発が制御不能になると欧州経済の二番底はより深刻になります。欧州連合(EU)は今回のコロナ危機で初めて債務の共通化に踏み切ったものの、イタリアではマフィアが跋扈しています。フランスではイスラム教預言者ムハンマドの風刺画を巡るイスラム過激派テロが続発。

欧州はいよいよ「カオスの冬」に突入しようとしています。

(おわり)

在英国際ジャーナリスト

在ロンドン国際ジャーナリスト(元産経新聞ロンドン支局長)。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。masakimu50@gmail.com

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