植田氏はバーナンキとなれるのか
政府は日銀の黒田東彦総裁の後任に経済学者で元日銀審議委員の植田和男氏を起用する人事を固めたと報じられた。副総裁には内田真一理事、氷見野良三前金融庁長官を起用するとしている。
本日14日に国会に提示されるのはこの3名であるとみられる。そしてこの3名であれば、国会でも承認されるであろうと予想される。だからこの3名との見方もできなくもないか。
植田和男氏は学者出身であり、日銀総裁となれば初の学者出身となる。実務面としても1998年から2005年まで日銀審議委員に就任し、金融政策に携わっている。
サマーズ元米財務長官は10日、植田和男氏について、「日本のベン・バーナンキだと考えてもいいだろう」と評した。
植田氏について、バーナンキ元連邦準備制度理事会(FRB)議長とほぼ同じ時期に米マサチューセッツ工科大学(MIT)で学び、論文の指導者も同じだったと指摘。植田氏とバーナンキ氏、サマーズ氏、欧州中央銀行(ECB)のドラギ前総裁は、FRB副議長やイスラエル中銀総裁を務めた著名経済学者スタンレー・フィッシャー氏の教え子という共通のバックグラウンドがある(11日付ブルームバーグ)。
学者としてはかなり優秀であったことはこれからもうかがえる。それでは植田氏はバーナンキ元議長のようになれるのか。
ベン・バーナンキ元FRB議長はヘリコプター・ベンとも呼ばれたリフレ派の教祖的な存在でもあった。ところが、FRB議長となった際には大胆で異次元な金融緩和策などは行わず、きわめて現実的な金融政策を行っていた。
植田氏も現実を踏まえて金融政策を行ってくるのか。これは人事が正式に決定し、総裁に就任後の動きから確認したいと思う。
今回の総裁・副総裁の人事案で、ひとつはっきりしたことがある。リフレ派の勢力図の縮小である。
少なくとも今回の3名はリフレに近い発想、もしくはそのための政策を忠実に行う立場にあったとしても、リフレ派とは距離を置いていることはたしかである。
新総裁就任後は、金融政策を決める政策委員9名のうち、リフレ派と呼ばれるのは安達誠司審議委員、野口旭審議委員だけとなる。
現在は若田部副総裁がリフレ派である。また、自らはリフレ派ではないとしているが、極めてリフレ的な政策をすすめてきた黒田総裁も含めるとリフレ派とそうでない委員が拮抗していた。しかし、その勢力図が崩れることになる。
ただし、リフレ派とそうでない委員が拮抗していたとしても、片岡氏の退任後は常に金融政策は全員一致で決めていたので、それはあまり関係ないのかもしれない。
それで言えば新総裁となってからは是非、政策委員の方々は、自らの特色を出してほしいように思う。総裁や事務方によって一方的に政策が決められるようにみえてしまう状況はなくしてほしいとも思う。