COP25で2度目の化石賞 ダメ出しされた日本51位 石炭大国の中国は30位 頑張れ! 小泉環境相
「日本は脱石炭の行動を起こせ」
[マドリード発]スペイン・マドリードで開催されている第25回国連気候変動枠組条約締約国会議(COP25)で11日、地球温暖化対策を妨げているとして日本に期間中2度目の「化石賞」が国際環境NGOから授与されました。
会場からはブーイングが起こり、石炭に似せた紙のボールが投げ込まれました。小泉進次郎環境相がCOP25の場で「非常に不十分」な温室効果ガス排出削減目標の引き上げや石炭火力発電への公的支援を終わらせることに言及しなかったのが授賞の理由です。
小泉環境相は日本の石炭関連政策が温暖化対策への真摯な取り組みを見えなくしてしまっていると弁明しました。しかしWWF気候エネルギー部門長のマヌエル・プルガル=ヴィダル氏はこう切り捨てました。
「日本政府が石炭から段階的に脱却する行動を何も起こせなかったら、小泉氏が並べた他のすべてのイニシアチブは意味がない」。それほど安倍政権の石炭火力発電とそのインフラ輸出には世界から非常に厳しい目が向けられているのです。
トップはグレタさんの母国スウェーデン
ドイツの国際NGOジャーマンウォッチは10日、気候変動パフォーマンスインデックスを発表、温暖化効果ガス排出量の90%以上をカバーする61カ国中、日本は51位にランク付けされました。
このインデックスは、温室効果ガス排出量(総合スコアの40%)、再生可能エネルギー(20%)、エネルギー使用(20%)、温暖化対策(20%)の4カテゴリーで評価。
1~3位は該当国なし。4位は、抜本的な温暖化対策を求める子供たちの学校ストライキ「未来のための金曜日」をたった1人で始めたグレタ・トゥンベリさん(16)の母国・スウェーデン。5位デンマーク、6位モロッコの順です。
主要国では7位イギリス、9位インド、18位フランス、22位欧州連合(EU)、23位ドイツ、26位イタリア、30位中国、52位ロシア、55位カナダ、58位韓国、61位アメリカとなっています。
日本は石炭火力発電の資産7兆7200億円を失う恐れ
ジャーマンウォッチによると、日本は石炭関連プロジェクトの資産710億ドル(約7兆7200億円)を損なう恐れがあるそうです。洋上風力・海上風力・太陽光発電のコストが石炭火力発電を下回る可能性が出てきたからです。
日本は前回よりランクを2つ落とし、温暖化対策が非常に遅れている低いグループに残りました。比較的高いレベルで人口1人当たりの排出量やエネルギー使用を削減したものの、専門家は現在の温暖化対策を強化しなければ、この傾向は継続しない恐れが高いと見ています。
産業革命前に比べ気温上昇を、摂氏2度を十分下回る水準に抑えるためには、より野心的な政策が求められています。日本の2050年の80%削減目標はあまりに低すぎる上、実現するためのロードマップも欠いていると厳しく指摘されました。
大阪で開かれた20カ国・地域(G20)首脳会議のホスト国でありながら温暖化対策を進める指導力を欠き、海外での石炭火力発電事業のため大規模な公的資金を提供し続けているとジャーマンウォッチは批判しています。
二酸化炭素排出大国は中・米・印・露・日
16年、世界の二酸化炭素排出量は中国が28%でトップ。2位はアメリカの15%、3位インド6.4%、4位ロシア4.5%、5位日本3.5%と続きます。
1人当たりの排出量ではアメリカ14.9トン、韓国11.5トン、ロシア10トン、日本9トン、ドイツ8.9トン、中国6.6トン、インド1.6トンと大きく入れ替わります。
中国のエネルギー需要は5分の1以下に減速
英エネルギー大手BPによると、中国は世界最大のエネルギー消費国で40年には世界のエネルギー消費の22%を占めると予測されています。しかしエネルギー需要の年間成長率は過去22年の5.9%から1.1%に減速。
石炭の占める割合は17年の60%から40年には35%まで下がる見通しです。天然ガスは倍以上の14%に、再生可能エネルギーは3%から18%に拡大するそうです。
石油は19%増、天然ガスは166%増、石炭は25%減なのに対し、再生可能エネルギーは553%増、原子力405%増、水力31%増。再生可能エネルギーが伸びていることから、中国は温暖化対策の「優等生」という声も聞かれるほどです。
「日本は近い将来、削減目標を引き上げる意図は全くない」
国際的な研究者ネットワークが各国の温室効果ガス削減目標(NDC)の野心度を評価した気候行動トラッカーは、中国について日本と同じ「非常に不十分」とランク付けしています。
トラッカーによると、昨年、中国は建設禁止措置を解除して28ギガワットの新しい石炭火力発電所の建設を開始。建設中の石炭火力発電容量は245ギガワットになりました。
国外で開発中のすべての石炭火力発電所の4分の1(102ギガワット)が中国の金融機関や企業から資金提供を約束または提案されています。
中国は世界最大の石炭消費者であり、再生可能エネルギー開発者です。トラッカーは、日本についてNDCを「野心的なものに引き上げる意図は近い将来、全くない」とダメ出ししました。
世界が日本レベルだと気温は4度上昇すると指摘されています。これに対して「中国の国内政策はやや良い方向に向かっており、NDCを高める大きな可能性を示している」と評価しています。
中国国内の牛肉需要がアマゾンの森林伐採リスクに関連
「地球の肺」であるアマゾン熱帯雨林の火災を放置するブラジルのジャイル・メシアス・ボルソナロ大統領への批判が強まる中、中国の牛肉需要がアマゾンの森林伐採リスクに関連しているという指摘があります。
中国の南米進出が環境に与える影響を報道しているジャーナリズム・プラットホーム「ディアロゴ・チノ」は「17年に行われた2万2700ヘクタールのアマゾン森林伐採は中国の牛肉需要と関連している可能性がある」と報じています。
ブラジルのアマゾン川上流にあるポルト・ヴェーリョの人口は過去10年で42万8000人から53万人に増えました。しかし牛はもっと急速に増加しています。10年前は人間と牛の数は同じぐらいでしたが、今では人間1人当たりに牛2頭がいるそうです。
中国人の牛肉消費量はブラジル人の平均に比べて10分の1未満ですが、10年前に比べると30%も増えました。
ブラジルは年140万トンの牛肉を輸出。これは6万5000~7万5000ヘクタールのアマゾン森林伐採をもたらすそうです。17年の牛肉輸出から割り出すと中国は2万2000ヘクタール、香港も1万8000ヘクタールの森林伐採に間接的に関係しているそうです。
世界はつながっています。一国の消費行動が遠く離れた国の環境破壊や温暖化に強く影響するのです。
安倍政権下で強まる自国中心主義
戦後、国際社会に復帰するため国際協調主義を優先してきた日本ですが、安倍晋三首相やドナルド・トランプ米大統領の登場で自国中心主義の傾向が強まっています。
国際捕鯨委員会(IWC)脱退と商業捕鯨の再開、歴史問題を発火点とする韓国との経済戦争、石炭火力発電とそのインフラ輸出が日本の国益にとって、どれほどのプラスになっているのか考えてみる必要があります。共通するのがすべて後ろ向きの話であり、発展性がないことです。
自国の国益を最優先にするというのはもっともなことのように見えて、他国も国際協調主義に背を向けてそれに追従するようになります。これといった資源がなく、自由貿易で生きていかなければならない日本にとっては結局、大きなマイナスになります。
日本はもう外圧(ガイアツ)にも耳を傾けなくなりました。道徳的な権威を失った日本の言葉に国際社会の一体、誰が耳を傾けるでしょう。課題を日本に持ち帰ると記者会見で誓った小泉環境相。あなたが必死に頑張らないと日本の未来は開けません。
中国よりはるか下にランク付けされている温暖化対策に限らず、世界との差は日本人が思っている以上に大きいと思います。
(おわり)