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表彰台からのセルフィー、サムスンの1万7,000台配布『ZFlip6』27億1,490万円の効果?

神田敏晶ITジャーナリスト・ソーシャルメディアコンサルタント
出典:athlete365

KNNポール神田です。

パリ五輪が閉幕し、パラリンピックが開幕される。

今回の大会で普段の大会では、見られなかったのが表彰台における自撮りするセルフィー写真の光景だろう。
これは、最上位スポンサーが『Samsung』となり、メディアだけの枠に選手たちの『SMS』を取り込めたことに由来している。


■勝利の瞬間を表彰台からすぐにシェアという秀逸なアイデア!

出典:Samsung
出典:Samsung

選手にとってオリンピック・パラリンピックの表彰台に立ち、メダル授与式で自身の生涯の夢をかなえることは、最も感動的で忘れられない瞬間の一つです。しかし、選手はスマートフォンを含む私物を持ち込むことが禁止されているため、表彰式の様子はこれまで公認メディアによってのみ撮影されてきました。
□しかしSamsungがパリ2024に「Galaxy Z Flip6 Olympic Edition」を提供することで、オリンピック・パラリンピック史上初めて、選手たちはセルフィーを通じて自分だけの勝利の思い出や感動を表現できるようになります

Samsungのカスタマイズされた技術は、選手たちのセルフィーを競技ごとに分類し、「Athlete365」にリアルタイムでアップロードします。これにより、選手は象徴的な瞬間を保存して家族やファンとシェアすることができます。
Galaxy Z Flip6 Olympic Edition」は、7月12日からシャンゼリゼ125を含む「Olympic rendezvous @Samsung」のショーケースで展示されます。また、国際オリンピック委員会(IOC)および国際パラリンピック委員会(IPC)の協力により、選手は7月18日に提供されます。
□Samsungは、1998年長野冬季オリンピック以来、ワールドワイド・オリンピック・パートナーです。25年以上にわたり、選手やファンは、Samsungの革新的なモバイルテクノロジーを信頼し、オリンピック精神を世界中に広め、パリ2024以降もオリンピック・パラリンピックのデジタルの未来を形作ってきました。オリンピックムーブメントに対する同社の取り組みは、まもなくパートナーシップ40周年を迎え、ロサンゼルス2028年まで続きます。人工知能、仮想現実、拡張現実、5Gを搭載した機器を含む、ワイヤレス通信およびコンピューター機器の分野におけるSamsungのイノベーションは、世界がオリンピックを体験する方法を変えるでしょう。
https://news.samsung.com/jp/galaxy-z-flip6-olympic-edition-paris-2024

私物のスマートフォンを表彰式に持ち込むことができなかったのが、オフィシャルのスマートフォンを提供されたことによって、実現したというのはこれは、スポンサーを1998年長野五輪〜2028年ロス五輪 に渡り続けてきたからの恩恵だろう。


■1万7,000台の無償提供は、27億1,490万円分の価値

出典:athlete365
出典:athlete365

選手たちのリアルタイムアップロードサイト『athlete365

https://olympics.com/athlete365

日本国内での『Galaxy Z Flip6』の販売価格は、1台あたり、159,700円〜だ。アスリートの選手村にギフトバッグのセットと、専用の『フリップスーツケース』は、フランス代表チームのオープニングセレモニーの衣装をデザインした『LVMH(ルイヴィトンモエヘネシー)』のブランド『ベルルッティ』とのコラボレーションとして1万7000台プレゼントされたので、約27億1,490万円分の価値が世界の五輪アスリートたちに配布されたこととなる。

しかし、感動の『表彰式』でのセレモニーで選手たちが、コンパクトにフォルダブル化されたカメラで、セルフィーを撮影するシーンは、強く印象に残った。

選手の私物ではないという建付けでのスマートフォン露出活用アイデアは、最上位スポンサーの特権だけではなく、オリンピアのルールにも合致しているという最高の捉え方だと筆者は感じた。4年に一度の感動の舞台のフィナーレでのセルフィー。しかも、表彰台全員での、先程までのライバルとの感動の金銀銅のスリーショットは格別な瞬間だ。

出典:IOC Media Guide
出典:IOC Media Guide

https://stillmed.olympics.com/media/Documents/International-Olympic-Committee/IOC-Marketing-And-Broadcasting/IOC-Marketing-Media-Guide-Paris-2024.pdf

何よりも、『10年間契約で2,000億円』と憶測される『最上位スポンサー価格』から考えると、4年に一度の五輪でも、『1年あたり200億円』の計算が成り立つ。
そこからの27億円といえば、13.5%なので、言葉は悪いが、カナダ、中国あたりの消費税13%と対して変わらないのだ。

IOCの収入の91%は、トヨタとの契約のようなスポンサー契約(30%)と放映権の販売(61%)からのものとなっている。
□IOCは、2021年の東京大会で終了した4年間のサイクルで76億ドル(約1兆2000億円)の収入を得た。その期間中、いわゆるTOPスポンサーである15社が20億ドル(約3142億4000万円)以上を投資した。
https://forbesjapan.com/articles/detail/71336

こちらの記事から推測すると15社で3,142億円なので、1社あたり209億円。4年で考えると、年間平均 52.2億円となる。このあたりのスポンサー料金で考えると
約27億1,490万円分の投資は、51.9%となる。

『表彰台からのセルフィー』という、予想外の『企画』を展開したSamsung側の企画は大成功だといえるだろう。あとは、これがどのように売上やブランド力向上や時価総額につながるのかという評価が数字とあらわれるかだ。

ITジャーナリスト・ソーシャルメディアコンサルタント

1961年神戸市生まれ。ワインのマーケティング業を経て、コンピュータ雑誌の出版とDTP普及に携わる。1995年よりビデオストリーミングによる個人放送「KandaNewsNetwork」を運営開始。世界全体を取材対象に駆け回る。ITに関わるSNS、経済、ファイナンスなども取材対象。早稲田大学大学院、関西大学総合情報学部、サイバー大学で非常勤講師を歴任。著書に『Web2.0でビジネスが変わる』『YouTube革命』『Twiter革命』『Web3.0型社会』等。2020年よりクアラルンプールから沖縄県やんばるへ移住。メディア出演、コンサル、取材、執筆、書評の依頼 などは0980-59-5058まで

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