注目された楽曲を数字化…CDやネット配信の「ミリオン認定」などの実情をさぐる
・出荷枚数100万枚以上を意味する「ミリオン認定」は2017年ではシングルで2ミリオン1本、ミリオンが7本。アルバムでは2ミリオンが1本。
・有料音楽配信は2017年では6タイトルが「ミリオン認定」。
創作者にとって「ミリオン(100万)」は金字塔的存在であり、ヒットの代名詞に他ならない。日本の音楽業界における「ミリオン」の実情を、日本レコード協会が2018年4月に発表した音楽業界に関する白書「日本のレコード産業2018」から確認する。
書籍やゲームソフト市場でもよく使われている言い回しで、作家・出版元の立場からは夢、目標の一つ「ミリオンセラー」(100万単位以上売れること)。しかし「日本のレコード産業」では数年来この言い回しは使わず、代わりに「ミリオン認定」との言葉を用いている。これは「会員各社からの申請に基づいた出荷枚数」を定期的に確認し、「発売日からの累計正味出荷枚数が100万枚を超えた場合」に認定する称号。累計正味出荷枚数が200万枚に達した場合、その時点で改めて2ミリオンが認定されるとともに、それ以降は100万枚毎に改めて認定が行われることになる(有料音楽配信の場合は購入のためにダウンロードされた時点でカウントされる)。
ミリオンより下には10万枚以上の「ゴールド」をはじめ、25万枚以上の「プラチナ」、50万枚以上の「ダブル・プラチナ」などがある。これらはあくまでも出荷枚数であり、販売枚数よりはハードルが低いことに留意しなければならない。
次に示すのは、過去の分も含め、経年の「日本のレコード産業」で確認できる限りにおける「ミリオン認定」の推移。
直近分となる2017年はアルバムで1本2ミリオン、シングルでも1本2ミリオンが登場した。またシングルのミリオン(100万本台)は7本が確認できる。具体的には次の通り。具体的には次の通り。
●シングル
■2ミリオン
・願いごとの持ち腐れ(AKB48)
■ミリオン
・裸足でSummer(乃木坂46)(2016/07/27)
・シュートサイン(AKB48)
・インフルエンサー(乃木坂46)
・逃げ水(乃木坂46)
・# 好きなんだ(AKB48)
・いつかできるから今日できる(乃木坂46)
・11月のアンクレット(AKB48)
●アルバム
■2ミリオン
・Finally(安室 奈美恵)
※年月表記が無いのは2017年中発売
アルバムは「手堅い」作品で占められている。2014年の映画「アナと雪の女王」の関連アルバム「アナと雪の女王 オリジナル・サウンドトラック」のようなイレギュラー的な作品も無く、提供アーティストの底力を感じさせる。
シングルはいわゆる「選挙」や「握手会」との絡みをはじめとするさまざまな「仕組み」もあり、ここ数年来の状況から大きな変化は無く、同一グループが多分に占める形となった。前年の2016年ではSMAPの解散があり、アルバムだけで無くシングルでも大きなセールスを計上していたが、2017年ではその動きも無い。
2014年に生じた、グラフの緑線の大きなイレギュラー的動きだが、これは2014年発表分からミリオン認定のカテゴリ区分に変更が生じたことによるもの。これまで「着うた」「着うたフル」はCDとは別途「音楽配信」として計上し、さらにパソコンやスマートフォンなど向けの「パソコン配信(シングル)」は今件項目ではカウントしていなかった。しかし2014年分から「着うたフル」「パソコン配信(シングル)」を統合して「シングルトラック(有料音楽配信)」としてカウントし、「ミリオン認定作品」に計上している。
2014年分では2014年1月において、これまでカウントしていなかった過去の「パソコン配信(シングル)」分の作品が大量にミリオン認定されている。つまり2014年分が跳ね上がったのは、2014年に大量のミリオン認定作が突如出現したのでは無く、これまで未認定だったものが一挙に認定されたことによるもの。
2015年以降はそのイレギュラー的な動きも収まり、直近年では全部で6タイトルがカウントされる形となった。ちなみに2017年中に「配信を開始」し、ミリオン認定されたのは皆無。もっとも新しい作品は2016年10月に配信開始の「恋」(星野 源)である。
2012年以降は携帯電話市場におけるスマートフォンへのシフトが進み、それに併せてモバイル端末の有料音楽配信市場が大きく変動、従来型携帯電話(フィーチャーフォン)による「着うた」「着うたフル」の需要が大きく縮小している。その動向はシングルトラックのミリオン認定数の減少として表れていたが、2014年からカウント形式が変わり、パソコンやスマートフォン向けの有料配信も計上されることで、動きが読みにくい状況となったのは否めない。
直近年となる2017年においてもシングルのセールスで2ミリオン以上のセールスが登場したこと自体は喜ばしいものの、その内情を見るに「音楽業界の伸長による結果」と評してよいのか否か、判断にはやや迷うところがある。
かつて宇多田ヒカルの初アルバム「First Love」は初回出荷280万枚、1999年だけで800万枚を超えるヒットとなった(国外も合わせると1000万枚前後との説もある)。このような「超ヒットセラー」は、現在の市場では登場するのはまず不可能。
2014年に社会現象化した「アナと雪の女王」ですら、アルバムはダブルミリオンに届いていない。趣向が分散し、情報を取得する手法が多様化する以上、同一作品が集中的に売れることが難しくなったのが一因(もちろん無料の音楽配信に音楽利用客が流れているなど、複合的要因はある)。2013年以降、定額制の聴き放題サービス部門が大きく伸びたのも、その状況変化を示す数字の一つであろう。
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