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『あすなろ白書』から四半世紀、「なるみ」や「松岡くん」は今、どうしているのか!?

碓井広義メディア文化評論家

ドラマ『あすなろ白書』が放送されたのは、1993年の秋クールでした。

原作は柴門ふみさんの漫画で、主人公は青教学院大学の女子学生「園田なるみ」です。「あすなろ会」と呼ばれる仲間たちとの交友と恋愛が描かれていました。

プロデューサーは、後にフジテレビ社長にまでなる亀山千広さん(先日、退任)。平均視聴率は27%で、最高視聴率が31.9%。現在のフジテレビにとっては、まさに”夢の時代”ですね。

なるみ役は石田ひかりさんです。なるみと惹かれあう「掛居保」は筒井道隆さん(最近はBSのドラマでよく見かけます)。いつもなるみを見守っていた「取手治」が木村拓哉さん(主役じゃないキムタク、悪くなかったなあ)。

掛居に片想いしていた「東山星香」は鈴木杏樹さん(昨年まで「ミュージックフェア」の司会を20年)。そして財閥の御曹司「松岡純一郎」を演じていたのが西島秀俊さんでした。

放送から、ほぼ四半世紀。あの「なるみ」や「松岡くん」は今、どうしているのか!?

「なるみ」は、なんとドロドロの不倫妻に!

フジテレビ側の“お家の事情”により、平日昼間から週末深夜(土曜23時40分)へと異動させられた、東海テレビ制作のドロドロ系ドラマ。深夜に置かれたことで、逆に本領発揮の感があります。

『屋根裏の恋人』の主演は石田ひかりさん。下町・両国に暮らす相撲好きなヒロインを演じた、NHK朝ドラ『ひらり』の放送から、ちょうど25年になります。

同じ朝ドラ『あまちゃん』の名プロデューサー・訓覇(くるべ)圭氏と結婚し、いまや中学生の娘さんが2人もいるというから驚きです。最近は未婚の姉・石田ゆり子さんが、『逃げ恥』をはじめ何かと話題となっていますが、妹も久々の連ドラ主演復活というわけです。

ヒロインである衣香(きぬか/石田さん)は、証券マンの夫(勝村政信さん)、高校生の娘、中学生の息子と4人家族の専業主婦です。18年前に突然姿を消した恋人・瀬野(今井翼さん)と再会します。自分の父親を自殺へと追いやった人物への復讐を果たそうとしている瀬野ですが、何と衣香の家の屋根裏部屋に、強引に棲みついてしまうのです。

瀬野に傾斜する衣香。彼女の親友(三浦恵理子さん)と不倫関係にある夫。ミュージシャンに貢ごうとキャバ嬢のバイトをしていた娘。そして学校でイジメを受けていた息子。家族それぞれが問題を抱えていたことがわかってきます。しかも姑(高畑淳子さん)が、いくつかの秘密に気づいています。

このドラマ、「いくら屋根裏でも棲み続けるのは無理」とか、「屋根裏でバイオリンなんか弾いたらバレるだろう」とか、リアリティーうんぬんの指摘は野暮というもの(笑)。

実生活とのギャップからか、不倫妻の役柄はどこか無理をしているように見える石田ひかりさん。逃亡者や復讐者というイメージからは距離がある、中年らしいモッサリ感が漂う今井翼さん。また、ややオーバー気味の顔面芝居を眺めていると、つい実の息子の顔がちらついてしまう高畑淳子さんの怪演などを、広~いココロで楽しめばいいのです。

「松岡くん」は、7匹の猫と暮す家具職人に!

世の中には犬派と猫派がいるそうですが、最近のNHKはかなり猫派寄りです。BSプレミアムで『岩合光昭の世界ネコ歩き』が放送され、Eテレ『2355』では毎週火曜が「猫入りチューズデー」という猫特集となっています。

そして新たな“猫物件”が、現在放送中のドラマ10『ブランケット・キャッツ』(金曜22時)です。主人公は、交通事故で亡くなった妻(酒井美紀さん)が残した7匹の猫と暮らす、家具職人の椎名秀亮(西島秀俊さん)。一応独身ではありますが、秀亮とは幼馴染の獣医師・美咲(吉瀬美智子さん)の”面倒見の良さ”が気になります。

秀亮は飼い主を探していて、適性を判断する面談と3日間のお試し期間を設けています。たとえば第1回では、認知症で施設に入る祖母(佐々木すみ江さん)のために、以前の飼い猫と似た猫を探すヒロミ(蓮佛美沙子さん)がやってきました。

しかも秀亮は、やはり祖母を喜ばせたいヒロミの依頼で、彼女の婚約者の「代役」まで引き受けてしまいます。結局、祖母は孫娘の“優しい嘘”に気づいており、ヒロミは本当のことを告げるのでした。

この一家に限らず、お試し家庭が抱える「悩み」や「心配事」は特殊なものではなく、視聴者が自分たちに引き寄せて共感できるものばかりです。これは重松清さんの原作小説の味を生かした、江頭美智留さんの脚本の力でしょう。

また西島さんと猫たちが、まるで本物の家族のように見えることに驚きます。この見事な「なつき方」、天才子役ならぬ天才猫軍団です。

個人的には、『和風総本家』(テレビ東京系)の柴犬「豆助」を応援する犬派ですが、このドラマを見ていると、ふと「猫も悪くないか」と思えてきます。

・・・というわけで、「なるみ」も、「松岡くん」も、それぞれマジメに、なかなか刺激的な40代を生きているのでした。

メディア文化評論家

1955年長野県生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒業。千葉商科大学大学院政策研究科博士課程修了。博士(政策研究)。1981年テレビマンユニオンに参加。以後20年間、ドキュメンタリーやドラマの制作を行う。代表作に「人間ドキュメント 夏目雅子物語」など。慶大助教授などを経て、2020年まで上智大学文学部新聞学科教授(メディア文化論)。著書『脚本力』(幻冬舎)、『少しぐらいの嘘は大目に―向田邦子の言葉』(新潮社)ほか。毎日新聞、日刊ゲンダイ等で放送時評やコラム、週刊新潮で書評の連載中。文化庁「芸術祭賞」審査委員(22年度)、「芸術選奨」選考審査員(18年度~20年度)。

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