部数トップの「りぼん」は11.8万部…少女向けコミック誌の部数動向(2024年4~6月)
部数は「りぼん」がトップ
日々進歩する技術、中でもインターネットとスマートフォンをはじめとしたコミュニケーションツールの普及に伴い、紙媒体は立ち位置の変化を余儀なくされている。すき間時間を埋めるために使われていた雑誌は大きな影響を受けた媒体の一つで、市場・業界は大変動のさなかにある。その変化は少年・男性向けコミック誌ばかりでなく、少女・女性向けのコミック誌にもおよんでいる。今回はその雑誌のうち、少女向けコミック誌(少女向けのコンセプトで発刊されているコミック雑誌。おおよそ未成年でも高校生ぐらいまでが対象)について、日本雑誌協会が四半期ベースで発表している印刷証明付き部数(※)から、実情を確認する。
まずは少女向けコミック誌の現状。最新データは2024年4~6月分。
少女向けコミック誌ではトップは「りぼん」。第2位の「ちゃお」に1万1666部もの差をつけている。「ちゃお」は以前は、圧倒的な部数で他誌の追随を許さない独走ぶりを見せていたのだが、ここ数年で急激に部数を落とし、今期では「りぼん」に次ぐポジションとなってしまった。
第3位は「LaLa」、そして「花とゆめ」が続いている。このあたりの順位は変わらない。
「別冊フレンド」は8期前に大きく部数を増やしたが(7万2000部)、その次の期では大きく減らしてほぼこれまでの水準・部数減少傾向に戻ってしまった。今期では幸いにも、部数は前期からほんのわずかだが上乗せしている。
「別冊フレンド」は講談社発行の月刊コミック誌で、1965年に「週刊少女フレンド」の姉妹誌のポジションとして「別冊少女フレンド」との名前で創刊、1984年に現在の「別冊フレンド」に改名した。今期の印刷証明付き部数は1万8667部。
6期前における部数の飛躍は2022年6月13日に発売された7月号において、「東京卍リベンジャーズ」のコラボ企画として「人気キャラクタークリアカード8枚セット」と「名シーンふきだしステッカー」が付録に収められたことが原因だと思われる。以前同様のコラボ企画の付録を収めた2022年1月号は発売前の重版が決定されるなどで世間を騒がせたが、2022年7月号はそれ以上に大きく部数を引き上げる形となった。今期は前期に続きそのような特需的な号はなかったため、通常の部数動向が継続しているまでの話。このぐらいの部数で落ちつくのだろうか。
プラスは3誌…四半期変移
次に前期と直近期との部数比較を行う。雑誌は季節で販売動向に影響を受けやすいため、精密さにはやや欠けるが、大まかに雑誌推移を知ることはできる。
プラス誌は「Cheese!」「別冊フレンド」「花とゆめ」の3誌で、「Cheese!」は誤差領域(上下幅5.0%)を超えたプラス幅を示している。「マーガレット」がプラスマイナスゼロで、それ以外はすべてマイナス幅。誤差領域を超えたマイナス幅は7誌が該当。
少女向けコミック誌で部数第2位の「ちゃお」は、今期の前期比はマイナス3.0%と誤差領域内の下げ幅。
該当期間に発売されたのは3誌。それぞれ読者層に合わせた魅力的な付録(エンジェル ミニさいふ、3way カラフルペンポーチ、ジュエルズカラーペン)が高評価を受けている。連載陣にもファンは多く、部数が少女向けコミック誌で第2位なのも分かるというもの。実購読者からの評価も高い。
一方で中長期的に見れば部数は漸減中であることもまた事実。しかもこの2年ほどは下落傾向に歯止めがかからない状態で、少女向けコミック誌のトップの座から転落してしまうほど。一体何が「ちゃお」にあったのだろうか。
「Cheese!」は誤差領域を超えた上げ幅を示している。少女向けコミック誌の前期比では最大のプラス6.4%。
「Cheese!」は小学館から「少女コミック」の派生誌として1996年に創刊された月刊漫画誌。ターゲットは18~25歳。今期では2024年8月号における、160ページにもわたる「秘密の恋は甘すぎる。」の別冊付録が功を奏したようだ。
プラスは1誌…前年同期比
続いて前年同期比による動向。年ベースの変移となることから大雑把な状況把握となるが、季節による影響を考慮しなくて済むので、より確かな精査が可能となる。
少女向けコミック誌は前年同期比では「ベツコミ」がプラスで、誤差領域を超えたプラス幅。「マーガレット」がプラスマイナスゼロで、それ以外はすべて誤差領域を超えたマイナス幅のマイナスを示している。1割以上の下げ幅は9誌、2割以上に区切っても5誌。いずれも掲載作品に何か大きな動きがあったわけではなく、本質的な不調にあると解釈できる。特に数期前までは少女向けコミック誌では部数トップだった「ちゃお」がマイナス25.6%もの下げ幅を示しているのが、大いに気になるところ。
少女向けコミック誌全体において、起死回生の策が必要な時期に来ていることには違いない。新型コロナウイルスの流行が部数減少傾向に拍車をかけた可能性は否定できないが、それを裏付けるものは無い。
他方、多くの雑誌で電子化が行われており、電子版に読者の一部を奪われ、結果として紙媒体としての印刷部数が減少している可能性はある。あるいは単に、需要に合わせた部数の削減なのか。
しかしながら他の雑誌同様、電子版の部数は非公開のため、その推測の検証ができないのは残念に違いない。
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※印刷証明付き部数
該当四半期に発刊された雑誌の、1号あたりの平均印刷部数。「この部数だけ確かに刷りました」といった印刷証明付きのものであり、雑誌社側の公称部数や公表販売部数ではない。売れ残り、返本されたものも含む。
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