ドイツの意外なクリスマス イブは必ずポテトサラダ? クリスマスマーケットのはじまりと習慣
ドイツが一番輝く12月。趣向を凝らしたクリスマスマーケット(以下マーケット)が各地で開催中です。さてこのマーケット、そもそも始まりはいつ頃から、そしてどんな背景があったのでしょうか?
始まりは中世にさかのぼります。中世とは、西洋史で4世紀末頃から15世紀頃までをいいますが、日本でいえば鎌倉時代、室町時代です。
かつてマーケットは1日だけ開催されたそうで、厳寒の冬を乗り越えるために食料確保の場として大切な役目を果たしていたといいます。肉類や野菜、香料などをたっぷり入手する年内最後のチャンスで大変な賑わいだったそうです。
14世紀には木製玩具や手工業品が販売されるようになり、プレゼントとして人気を集めていきました。やがてマーケットは、スイーツや焼き菓子、ナッツ類や焼きソーセージなどの販売スタンドも加わり、次第にドイツ語圏で浸透していったそうです。
現在のように11月下旬から12月下旬にかけて4週間ほど開催されるマーケットに定着したのは20世紀中ごろ。キリストの降誕日(24日の聖夜)を待つ4週間をアドヴェント(待降節)といいますが、マーケットはその聖夜の前日まで開催されるのが一般的です。それ以来、このシーズンにはなくてはならない冬の風物詩として絶大な人気を誇るイベントになりました。(注・週末だけ開催のマーケットもあります)
11月中ごろからドイツの街並みで目を引く、クリスマスに関連した事象とその背景をいくつか探ってみました。
なぜクリスマスマーケットでグリューワインを飲むの?
いまやクリスマスになくてはならない飲み物グリューワイン(ホットワイン)。
以前公開しましたグリューワインの記事はこちら。
始まりはマーケットと同じく中世からといいます。自給自足が中心だった当時、市民が生活用品を入手する唯一の場所が定期的に開催される市(いち)でした。
なかでもクリスマス祝日にたった教会前広場の市は、礼拝後の客で大賑わい。そこでは食料品のほか香料など珍しい輸入品も販売されており、その香料を用いてホットワインが作られ始めたようです。
最近は、香料風味たっぷりの赤・白ワインを用いた定番の他、りんごやプラムジュースを用いたノンアルコール飲料など多様なホットドリンクが提供されています。機会があれば、気分と体調に合わせて飲み比べてみるのも楽しいでしょう。
窓ぎわに輝くクリスマス電飾ライトの意味
毎年10月の最終日曜日に冬時間に入ると、一気に日が短くなり午後4時過ぎからあたりはどんよりと暗くなります。そんななか、11月中ごろから夕方になると電飾ライトやデコレーションが各家庭の窓ぎわに光り輝き始めます。
色彩豊かな豆電球や木型のアーチ型スタンドシュヴィボーゲンに灯るろうそくは、日暮れが早いこの時期の街並みに映えて幻想的です。
かってこれら電飾の灯りは、生活に窮している人たちへ手を差し伸べる「オープンハウス・いつでも寄ってください」というシンボルだったといいます。
歴史をさかのぼれば、厩(うまや)でキリスト降誕を迎えることになったマリアとヨセフにたどり着きます。窓ぎわの明かりは、困難に陥っているあなた、どうぞ我が家に来てくださいという意味合いだったそうです。現在は救済というよりクリスマスを待つ気持ちを表す飾りとなっています。
聖夜にポテトサラダとソーセージを食するワケ
日本のイブにあたる24日は一番重要な日で家族と過ごすのが慣わしです。その聖夜の晩餐に、ポテトサラダとソーセージがよく食卓に上ります。あるアンケートではドイツ人の3分の1(36%)が、今もこのメニューを定番にしているという統計結果もでています。
日本人の感覚として、元旦に簡単な食事をすることはまず考えられないことでしょうし、お祝いにしては随分質素だなと思われるでしょう。「聖夜にポテトサラダとソーセージ」と知ったとき、筆者も文化の違いを改めて思い知らされました。
このメニューは、貧困に窮していたマリアとヨセフを偲んで食する一品だといいます。もう一つ、主婦は食事の準備や後片付けの時間が節約できます。長時間キッチンに立ち続けることも省け、一年に一度家族が集まる団欒の時を少しでも長く一緒に過ごすことができます。
ちなみに誕生日よりクリスマスプレゼントにお金をかけるのがドイツ流。その昔、筆者は子供の誕生日に大きな買い物をしようとして、ドイツ人の夫に「クリスマスじゃないんだよ」と言われ、大変びっくりしたことがありました。
ドイツでは24、25、26日の3日間が祝日となります。日本で言えば、お正月の三が日といったところです。プライベート時間を大切な家族と厳かに過ごすのがこの3日間のしきたりです。これに対して元旦は、(大晦日から)友人やカップル同士が集まり賑やかに過ごします。新年の休みは元旦のみで、2日より通常の生活に戻ります。
さて、日本人にとってドイツのクリスマスマーケットといえば、ニュルンベルク、ドレスデン、フランクフルトなど大都市をイメージすることが多いのではないでしょうか。本場のマーケットを訪問したことのある方もない方にもお薦めのスポットをここで少し紹介します。
前回、ドイツ人に人気の美しいクリスマスマーケットベスト20を紹介しましたが、今回は「冬の旅先・最も華やかな世界の6都市」に選出された、バンベルクとローテンブルクの様子をお伝えします。
バンベルク・36ヵ所のクリッペ巡り
バンベルクは、バイエルン州北西部オーバーフランケン地域に属する人口20万人ほどの都市。第二次世界大戦で被害を免れたため、街の建造物のほとんどが昔の姿を今に伝えています。千年に及ぶ建築文化財が点在する歴史的な市街地は1993年、ユネスコ世界遺産に登録されました。
さて、バンベルクのマーケットでハイライトといえば、クリッペ(キリストが誕生した厩の場面を人形で再現したもの)です。400年前からクリッペ展示で知られる「クリッペ都市」として知られ、「クリッペをみたければバンベルクへ行け」といわれるほど有名です。
バンベルクは、ローマカトリック教が人口の半分以上を占める敬虔なカトリック教徒が多い街という背景もあります。マーケットは12月23日で終了ですが、クリッペ展示は18年1月6日まで続きます。(このスケジュールは毎年ほぼ同じです)
「バンベルクのクリッペの道」と呼ばれる観光ルートを巡れば、市内の36地点で国内外から収集した歴史的クリッペを目にすることができます。ここではその中から、代表的なクリッペを2つ「マックス(マキシミリアン)広場」と「オーべレ・プファル教会」を紹介します。
フランケン地方でもっとも有名かつ一番美しいといわれるフラウエン広場にあるオーバレ・プファル教会内にあるクリッペは、190にも上る木製人形を動員した詳細にわたるキリスト降誕再現シーンが見事です。
バンベルクで一番有名かつ賑やかなマキシミリアン広場(市民はマックス広場と呼んでいます)のクリッペはほぼ等身大の人形が特徴で、1983年から毎年展示されています。この広場ではマーケットもあり、人気のスポットです。
まるで絵本の世界ローテンブルク
日本人が1度は訪問したいと憧れの街ローテンブルク・オブ・デア・タウバー。四季を問わず、多くの観光客が目指す中世都市の面影たっぷりのこの街については、訪問したことのない人も一度は耳にしたことがあるかと思います。
ロマンティック街道にあるこの街は、何度行っても景観が異なり、新しい発見ができる場所です。なかでも「ライテェルレスマルクトReiterlesmarkt」は15世紀から始まった歴史を誇る国内でも最古のマーケットの一つです。
ライテェルレスマルクトの由来は、500年にさかのぼるとか。ゲルマン伝説に起源するこのライテェルレ( 馬に乗った人つまりサンタクロース)は、幸運をもたらすシンボルとして、人々に歓迎されています。マーケット開催初日(開催日は毎年少し異なります)と、12月6日の2回、ローテンブルク市内に登場します。
ローテンブルクのサンタクロースにひと目会いたいとこの2日間は、特に混雑します。いつの日か現地に出向いて、是非幸運のおすそ分けをしてもらいたいものです。
参考記事
Traditionen Weihnachtsbraeuche: Warum gibt es Punsch und Bescherung?