Yahoo!ニュース

鼻をほじる習慣 新型コロナ感染リスクが3.8倍

倉原優呼吸器内科医
(提供:イメージマート)

新型コロナは接触、飛沫、エアロゾルを介した感染経路をとることが知られています。接触感染は当初よりも少ないとされていますが、目や鼻を触ってダイレクトにウイルスを身体に入れると、さすがに感染してしまいます。興味深い研究結果が報告されたので紹介しましょう。

1時間に顔を触る回数

人は、知らないうちに顔を触っているという研究データがあります。たとえば、オーストラリアの医学生を対象にした研究では、講義中1時間あたり平均22.6回顔を触っていることが分かりました(1)。

その半数近くが、口、鼻、眼などの粘膜を触っていることが示されています(図1)。

図1. 1時間あたりの顔の粘膜を触る回数(参考資料1をもとに作成、イラストはイラストACより使用)
図1. 1時間あたりの顔の粘膜を触る回数(参考資料1をもとに作成、イラストはイラストACより使用)

また、早稲田大学による研究においても、電車内では1時間に平均17.8回顔を触ると報告されています(2)。女性よりも、男性の方が顔を触る回数が多かったそうです。

鼻をほじると感染リスクが増加

さて、肝心の鼻ほじりの研究です。オランダの2つの大学医療センターでの219人の医療従事者における生活習慣調査によると、全体の84.5%が鼻をほじる習慣があると回答しました。私は、どちらかといえばお風呂でお鼻の掃除をすることが多いでしょうか。

解析の結果、鼻をほじる習慣がある人は、鼻をほじる習慣がない人と比べて新型コロナの感染リスクが3.8倍高いことが分かりました(図2)。

図2.日常の習慣による感染リスク(オッズ比と95%信頼区間)(参考資料3をもとに筆者作成)
図2.日常の習慣による感染リスク(オッズ比と95%信頼区間)(参考資料3をもとに筆者作成)

眼鏡の着用やひげの有無とは有意な関連はなく、意外と爪かみも大丈夫という結果でした。

流行時には屋内でマスク着用を

マスク非着用者は、マスク着用者よりも粘膜部に触れる頻度が1.5倍多くなることが分かっています(4)。これは物理的な障壁があるためで、当然と言えば当然なのですが。

顔を触る習慣が多い人は、感染拡大期にマスクを着用することで二重の感染予防効果が得られるかもしれませんね。

大事な手指衛生

手指衛生は、石鹸と流水で洗うのが最も確実ですが、目に見える汚れがない(汚物や体液などで手が汚染されていない)場合は、アルコール消毒で問題ありません。

手の平、手の甲、指間などをアルコール消毒している最中にアルコールが乾いてしまい、指先の消毒が不十分となる可能性が指摘されているので、もっとも汚染されやすい指先を優先的に手指消毒しましょう。

(参考)

(1) Kwok Y, et al. Am J Infect Control. 2015 Feb;43(2):112-4.

(2) Morita K, et al. E3S Web of Conferences. 2019; 111.

(3) Lavell AHA, et al. PLoS One. 2023 Aug 2;18(8):e0288352.

(4) Shiraly R, et al. Am J Infect Control. 2020 Dec; 48(12): 1559–1561.

呼吸器内科医

国立病院機構近畿中央呼吸器センターの呼吸器内科医。「お医者さん」になることが小さい頃からの夢でした。難しい言葉を使わず、できるだけ分かりやすく説明することをモットーとしています。2006年滋賀医科大学医学部医学科卒業。日本呼吸器学会呼吸器専門医・指導医、日本感染症学会感染症専門医・指導医、日本内科学会総合内科専門医・指導医、日本結核・非結核性抗酸菌症学会結核・抗酸菌症認定医・指導医、インフェクションコントロールドクター。※発信内容は個人のものであり、所属施設とは無関係です。

倉原優の最近の記事