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プロとアマの交流の場になりつつある日本野球科学研究会の現状と未来像

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
日本野球科学研究会第9回大会の様子(筆者撮影)

【日本野球科学研究会が第9回大会を開催】

 今年で9回目を数える日本野球科学研究会が12月17、18日の2日間、近畿大学東大阪キャンパスで開催された。

 2013年から毎年テーマを変えながら開催されている同研究会だが、今年のテーマは「心技体を科学する」で、このテーマを土台にして野球に関する様々な研究発表やシンポジウム、企業セミナー等が行われた。

 参加者は高校生、大学生、大学院生、大学教育者、企業、NPB関係者等々、野球に携わる幅広い層が顔を揃えていた。

【確実に参加が増えつつあるNPB関係者】

 関西在住の筆者は、神戸大学で開催された第5回大会以来5年ぶりの参加となったが、前述通り参加者層の幅が拡大していることを肌で実感することができた。

 特に、NPB関係者の参加者が5年前と比較すると格段に増えており、筆者が確認した限りでも、同研究会の運営委員も務めているロッテ監督の吉井理人氏、巨人のファーム総監督を務める桑田真澄氏、同じく巨人の2軍投手コーチの三澤興一氏、DeNAの2軍監督の仁志敏久氏、同じくDeNAの2軍投手コーチの大家友和氏が会場に足を運んでいた。

 またあるNPB関係者に聞いたところでは、ここ最近は各チームのアナリストやスコアラーも数多く参加するようになっているという。

 更には一般研究発表には、ソフトバンクや日本ハムが単体で複数の発表を行うなど、同研究会が確実にNPBに浸透し、プロとアマの交流の場として機能していることを確認することができた。

【同研究会に出席するNPB関係者の多くは大学院修了者】

 だがNPB関係者の顔触れを見てみると、前述の吉井氏、桑田氏、仁志氏は、いずれも現役引退後に大学院に進学し、自ら研究に携わった人物だ。

 また「技を科学する~内野守備の極意を探る~」というシンポジウムにシンポジストとして参加していた野村謙二郎氏も広島大学大学院を修了し、現在は同大学スポーツセンターで客員教授を務め、同じくシンポジストに名を連ねた大島公一氏も、筑波大学大学院修了後に法政大学野球部の助監督を務めているなど、元々大学や大学院の研修者たちと接点を持っている人たちだ。

 更にNPB各チームのアナリストたちも、基本的には大学院等で野球の研究をしてきた人物が多く、まだまだNPBの限られた人たちにしか同研究会を受け入れられていないようだ。

 シンポジウムに参加した野村氏が最後に「ここには多くの研究者の皆さんと指導者の皆さんが参加している。お互いに壁を作るのではなく、どんどん意見交換し交流できる環境になって欲しい」と希望を語っていたが、それはまさにアマとプロの関係にも当てはまることだろう。

【今やNPB関係者によっても有益な情報が満載】

 今年の研究会でも、MLBのチームでも採用されている体測テクノロジーやバイオメカニズムなど、すぐにでもNPBで導入できそうな器具、ソフトウエアを持ち込み、プレゼンテーションする企業が数多く集まっていた。

 すでに同研究会は単に大学院生たちを中心とする研究発表会という枠を超え、野球界の最先端技術や理論をも確認できる場になり始めている。NPBの現場指導者たちにとっても有益な情報が満ち溢れている状況だ。

 以前筆者が吉井氏に同研究会に参加する意味について尋ねたところ、以下のような内容の話をしてくれたことがある。

 「大学院で色々な研究をしてくれているし、自分たちが疑問に思うことを投げかければ、積極的に調べてくれる。そうしたことがプロでできないのなら、彼らに協力してもらえばいい」

 吉井氏の言葉通り、NPB側の考え方次第で、今後同研究会はプロとアマの重要な交流の場として機能していくことになるだろう。

 来年以降、同研究会がどのように発展していくのか注目していきたいところだ。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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