【入管法】山盛りの課題より安倍外遊を優先ー労基法違反7割の実習生ブラック労働、国連ダメ出しの難民冷遇
外国人労働者の受け入れ拡大をめざす出入国管理法(入管法)の改正案が、昨日27日に衆院を通過、今日から参院での審議が始まる。だが、外国人技能実習生の低賃金・人権無視の労働状況から、野党や専門家から現時点での採決は時期尚早という声が上がっている。また、入管法改正では、外国人労働者の受け入れ拡大ばかりが論議されており、法務省・入国管理局(入管)が難民を受け入れず、収容施設に長期拘束する等の入管による人権侵害への対応は、棚上げされたままだ。
◯7割が労基法違反、外国人技能実習制度は廃止すべき
政府は、農業や製造業、建設業などでの深刻な人手不足に対応するため、5年間で最大約35万人を受け入れる見込みだ。そのために必要な外国人の在留資格を設けること等から入管法改正を目指している。一方で、安倍政権は「移民政策ではない」と繰り返し主張。具体的には「5年以上の在留を認めない」「家族の帯同は認めない」としており、こうした政府の方針に対し、専門家からは、外国人を単なる使い捨ての労働力とみなしている、との批判もある。
また、外国人技能実習生制度での低賃金・人権無視の労働状況も極めて深刻だ。法務委員会「入管法一部改正」参考人質疑で指宿昭一弁護士は「月の時間外労働が160時間という事例や労災隠しの事例がある」と、労働基準法違反が蔓延していると指摘。「厚労省の資料によると、2017年、全国の労働基準監督機関において、実習実施者に対して5966件の監督指導をし、その70.8%にあたる4226件で労働基準関係法令違反が認められた」(指宿弁護士)。
また、技能実習生が労働状況の問題を訴えると強制的に帰国させられ、送り出し機関に支払う借金のみが残る等、構造上の問題もあると指摘した。指宿弁護士は、「一部の悪い企業や管理団体がたまたま違法行為をしているという問題ではない」「法務省も構造的問題を解決できなかった」として、今回の入管法の一部改正において、「技能実習制度の廃止を前提に新たな外国人労働者の受け入れ制度を創設すべきだった」と主張した。
◯入管業務から難民認定審査を切り離せ
今回の入管法の一部改正は、外国人労働者の受け入れのためだけの法改正となっているが、入管による難民を受け入れず、迫害が待つ母国への帰国を強要、収容施設に拘束する等の人権侵害についても、もっと国会論戦で追及されるべきだろう。全国難民弁護団連絡会議(全難連)は、先月10日、「入管法改正及び法務省設置法改正に当たっての要請書」をまとめ、公表した(関連情報)。
全難連は、その要請書の中で、
と求めている。日本の入管の難民認定審査の問題については、
として、国連人権条約の各委員会からも是正勧告されていると全難連は指摘。法務省や入管から独立した、専門性を有する機関を創設し、難民認定審査を行わせるべきだとしている。
◯安倍首相のスケジュールより、中身のある国会審議を優先すべき
複数の報道によれば、政府与党が入管法改正の衆院可決を急いだのは、安倍晋三首相の外遊の前に衆院通過させるためだとされている(関連情報)。あまりに多くの課題を残したまま、安倍首相のスケジュールを優先するのだとしたら、これほど愚かしいことはない。参院での国会論戦は、より時間をかけ、単なる労働力の確保としてだけでなく、外国人の人権に配慮した法改正になるよう、与野党ともに尽力すべきだろう。
(了)
*本記事の写真はすべて筆者の撮影。無断使用を禁じる。