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喫煙や肥満が乾癬の生物学的製剤治療の効果を下げる?大規模研究で明らかに

大塚篤司近畿大学医学部皮膚科学教室 主任教授
(写真:アフロ)

【乾癬治療における生物学的製剤の効果と患者特性の関係】

乾癬は、免疫の異常により皮膚に炎症が生じる慢性の皮膚疾患です。重症の乾癬患者では、生物学的製剤と呼ばれる注射薬が用いられることがあります。生物学的製剤は、乾癬の発症に関わるサイトカインというタンパク質を標的とする新しいタイプの治療薬です。

近年、乾癬患者の特性が、生物学的製剤の効果に影響を与えるのではないかと注目されています。デンマークの研究グループが行ったメタ分析では、40の研究、21,438人の患者のデータを統合した結果、以下のような興味深い知見が得られました。

観察研究では、高齢、喫煙歴、肥満、生物学的製剤の治療歴がある患者で、治療開始6ヶ月後の皮疹の改善度が有意に低いことが示されました。一方、ランダム化比較試験では、BMI30以上の肥満のみが治療効果と関連していました。

【喫煙と肥満が乾癬の生物学的製剤治療に与える影響】

喫煙と肥満は、乾癬のリスク因子として知られています。今回のメタ分析では、これらの因子が生物学的製剤の効果も下げる可能性が示唆されました。

喫煙は、皮膚の炎症を悪化させ、乾癬の重症度を高めると考えられています。また、肥満の患者では、標準用量の生物学的製剤では十分な効果が得られにくいのかもしれません。体重に応じて投与量を調整することで、治療効果が改善する可能性があります。

生活習慣の是正は、乾癬患者にとって重要です。禁煙や減量は、乾癬の症状改善だけでなく、生物学的製剤の効果を高めることにもつながるかもしれません。われわれ皮膚科医は、生活指導を通じて患者の治療をサポートしていく必要がありそうです。

【ほかの患者特性と生物学的製剤の効果の関係】

性別、糖尿病、乾癬性関節炎など、そのほかの患者特性と生物学的製剤の効果の関係は、今回のメタ分析では明らかになりませんでした。ただし、研究によっては性別によって効果の違いがあることを示唆するものもあり、さらなる検討が必要そうです。

また、研究の多くは観察研究で、交絡因子の影響を完全に排除できていない可能性があります。年齢、喫煙、肥満などの因子が、生物学的製剤の種類ごとに効果に与える影響に違いがあるのかについても、今後の研究課題と言えるでしょう。

生物学的製剤は乾癬治療に有用な選択肢ですが、患者の特性によってその効果は異なる可能性があります。個々の患者背景を考慮し、最適な治療法を選択していくことが重要と考えられます。

参考文献:

Hjort G, et al. Clinical Characteristics Associated With Response to Biologics in the Treatment of Psoriasis: A Meta-analysis. JAMA Dermatol. Published online June 18, 2024. doi:10.1001/jamadermatol.2024.1677

近畿大学医学部皮膚科学教室 主任教授

千葉県出身、1976年生まれ。2003年、信州大学医学部卒業。皮膚科専門医、がん治療認定医、アレルギー専門医。チューリッヒ大学病院皮膚科客員研究員、京都大学医学部特定准教授を経て2021年4月より現職。専門はアトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患と皮膚悪性腫瘍(主にがん免疫療法)。コラムニストとして日本経済新聞などに寄稿。著書に『心にしみる皮膚の話』(朝日新聞出版社)、『最新医学で一番正しい アトピーの治し方』(ダイヤモンド社)、『本当に良い医者と病院の見抜き方、教えます。』(大和出版)がある。熱狂的なB'zファン。

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