Yahoo!ニュース

アジア諸国でポータルになってきたFacebook:「インスタント記事」でニュースと広告を配信可能へ

佐藤仁学術研究員・著述家

Facebookは2015年12月から、アジア太平洋諸国で各国のメディアが配信する「インスタント記事」(Instant Article)をFacebookで配信するサービスのベータ版を提供している。「インスタント記事」は日本では提供されていないが、中国やインドなどアジア諸国のメジャーなメディアが「インスタント記事」でニュースを配信している。

■Facebookユーザー3人に1人がアジア太平洋地域

アジア太平洋地域だけでFacebookは全世界で15億5,000万人以上のアクティブユーザーがいるが、そのうちアジア太平洋地域では5億人以上とFacebookの利用者の3人に1人がアジア太平洋地域である。そしてアジア諸国ではほとんどがモバイルでFacebookにアクセスしている。アジア諸国でもほとんどの国でスマートフォンが急速に普及しており、Facebookへのアクセスもスマートフォンである。そしてiPhoneのような高価なハイエンド端末は購入できないため、地場の安いスマートフォンを利用している。そしてスマートフォンでアクセスしているのはFacebookやTwitterなどのソーシャルメディアやゲーム、YouTubeなどの動画、WhatsAppやLINEなどのメッセンジャーである。

■アジアでポータルになってきたFacebook

アジア諸国では多くのユーザーが、スマートフォンで「まずはFacebookにアクセス」している。メッセンジャーやゲーム、動画のように目的がなければアクセスしないアプリと異なり、FacebookやTwitterは「用はなくとも、とりあえずアクセスしてチェックする」アプリになっている。

そのようなことからFacebookがニュースのポータルになっている。日本のようにニュースアプリはほとんど使われていない。アジア諸国では多くの人がニュースを読むのはFacebookやTwitterでフィードに流れてきたもの、友人・知人らがシェアしたニュースを読んでいる。そして自分もそのニュースが気になったら、シェアや「いいね」をして友人・知人と共有している。そしてそのような傾向が強いからメディアも積極的にニュースをFacebookやTwitterに積極的に配信し、多くのユーザーに購読してもらっている。メディア各社にとっても、FacebookやTwitterがニュース配信と集客の「重要なメディア」になっている。

■「インスタント記事」だけでなく「広告配信」もできる

今回のFacebookが提供する「インスタント記事」は、メディア各社が配信する記事の内容をカスタマイズして配信できるのが特徴。各国を代表するメディアがニュースを「インスタント記事」としてFacebookで配信していく。またメディア各社はニュース記事だけでなく、広告の配信を行うことも可能であり、メディアとしてはFacebookというプラットフォームを活用しての広告収入も期待できる。Facebookは今後は中南米諸国でも「インスタント記事」の配信を提供していく予定。

「インスタント記事」は記事の右端にマークが付いている。
「インスタント記事」は記事の右端にマークが付いている。

▼「インスタント記事」を配信する各国のメディア

オーストラリア: The Age, The Sydney Morning Herald

中国: CCTVNEWS,China Daily

香港: Apple Daily, Ming Pao Daily News,Oriental Daily News, The South China Morning Post

インド: Aajtak, Hindustan Times, India Today, The Indian Express, The Quint

インドネシア: Kompas.com, Merdeka.com,detikcom, Liputan6.com, Tribunnews

韓国: SBS News

マレーシア: Astro AWANI, Sin Chew Daily,

Berita Harian, China Press, Harian Metro, Malaysiakini, New Straits Times, Oriental Daily News Malaysia, The Star Online

ニュージーランド: Stuff.co.nz

フィリピン: ABS-CBN News, GMA Network, GMA News, INQUIRER.net, Rappler

シンガポール: The Straits Times

台湾: Apple Daily Taiwan, Chinatimes.com, ETtoday, Next Magazine Taiwan, Sanlih E-Television News, United Daily News Group,Vogue Taiwan

タイ: Kom Chad Luek,Dailynews, Kapook.com, Khao Sod, Nation TV, Prachachat, Matichon, MGR Online, Thairath

ベトナム: VnExpress, WebTretho,Thanh Nien, Tuoi Tre, Zing.vn

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

佐藤仁の最近の記事