Appleは #スマホ中毒 対策に取り組むべき - 「iPodの父」からの提言とは?
Facebookで起きたプライバシー流用スキャンダルは、スマートスピーカー敬遠など一般のユーザーも不安視、あるいは疑問視してきたプライバシー問題を表出させています。
AppleのTim Cook CEOは、3月末にシカゴで収録され、4月6日に放映されたテレビのインタビューで「シリコンバレーは一枚岩ではない」として、個人情報を用いたビジネスを批判し、異なる立場で取り組んでいることを明らかにしました。
Cook氏のインタビューとプライバシー問題について、詳しくは「#アップルノート」で解説しています。
#アップルノート:プライバシー問題で光るAppleの方針と、シリコンバレーの分断
Appleがシカゴのイベントでも、その後のインタビューでもプライバシー問題について強調しているのは、「顧客はAppleの製品ではない」ということ。そのため、顧客の情報を売り物にするビジネスには手を出さないと、Cook氏は述べています。
子どもの学びツールとしてのテクノロジーを目指す上で、プライバシーへの配慮は大きな競争力になると考えられますが、Appleに対しては、その上で、別の要求が出されています。
それは「スマホ中毒」を防ぐ対策をせよ、というものです。
各方面から指摘される「スマホ中毒」対策
2018年1月に、Appleの大きな株主が公開書簡で、スマートフォンの使いすぎを是正する取り組みをすべき、との意見が出されました。子どもの教育上、なんらかの対策をすべきであり、そのことはAppleの売上を阻害しない、という意見表明です。
この話については、東洋経済オンラインで以前記事にしています。
また、Appleのデザイン最高責任者、Jony Ive氏は、2017年10月にニューヨークで開催されたイベントで登壇し、次のように語っています。
やはり、使いすぎについては誤用であることを指摘しているのです。
元AppleでiPodの発明に貢献し、その後スマートホームデバイス企業としてGoogleに買収された[「Nest」]の創業者となったTony Fadell氏は「iPhoneは我々の生活を変えた。今こそAppleは中毒に立ち向かう必要がある」という記事を先週、Wiredに公開しました。
今回のプライバシーの議論は「Facebookの問題だ」と多くの人は指摘しますが、Fadell氏は「子どもの問題」だと定義しています。iPhoneによって我々の生活は変わり、常につながり続けることができるようになっても、「健康的なデバイス活用」への合意形成が成立していない、と問題提起しています。
例えば「健康的な食事」を例に、「健康的なデジタル摂取」を考えてみると、想像しやすいでしょう。Fadell氏は、米国には既に「デジタルデトックス」のクリニックがあり、同氏の友人は子どもをそのクリニックに送ったと言います。しかしそれでも、未来にわたり、我々はテクノロジーを使って生活していくことになるはずです。
また、Fadell氏は自身の家庭で、「Tech-free Sundays」つまりデバイスに触れない日曜日を過ごすことや、食事中にデバイスを食卓に持ち込まない、など振る舞いを変えるルールを実践しているそうです。
そこで、Appleが、スマホ中毒を防ぎ健康的な活用ができるようにする仕組みを整えるべき、と主張しています。
Appleはモバイルのトレンドを作るほぼ唯一の存在となっています。その証拠に、若干邪魔だと感じるiPhone Xの画面へのせり出し、いわゆるノッチまで、Androidメーカーはマネして採用するほどです。
Appleが取り組めば、テクノロジー業界が追随するため、対策を採る上で非常に良いポジションにあるわけです。また、デバイスとソフトウェア双方を開発しているため、より深いレベルでの対策が可能な唯一の存在とも言えるのです。
デジタル摂取の体重計みたいな存在?
Fadell氏は1つの解決策として、デジタル摂取の体重計のような存在が必要だ、とアイディアを披露しています。
実は、既にiPhoneには、同じような計測を表示することができる仕組みを持っています。もちろん、使いすぎた際にアラートが出たり、自動的にロックする仕組みはありませんが。
iPhoneの「設定」>「バッテリー」の項目を開いてしばらく待つと、「バッテリーの使用状況」という項目に、アプリや端末の機能がずらりと出てきます。皆さんも、自分のiPhoneで試してみて下さい。
この表示はどのアプリがどれだけバッテリーを消費しているかを表すものですが、右側の時計のアイコンをタップすると、電力消費のパーセンテージに加え、そのアプリをどれだけ使用しているのかを確認することができます。
実はアプリごとのiPhoneの使用時間は、既にiPhoneの中でデータとして作り出されているのです。そのため、Fadell氏が指摘するシステムレベルでの「中毒防止」機能は、なんらかのインターフェイスを作ることで実現できると考えて良いでしょう。
株主からのプレッシャーもあり、Appleがこのあたりの対策に取り組まないわけには行かない状況になっていると思います。6月に開催される世界開発者会議WWDC 2018で、なんらかのアクションを見せるのか、注目したいところです。