【将棋】女流棋士の格付けを決める戦いが佳境に~第1期ヒューリック杯白玲戦・女流順位戦、途中経過~
2020年10月6日に棋戦誕生が発表され、同年11月13日に記念すべき第1期が開幕したヒューリック杯白玲戦・女流順位戦が各組で残り1戦となり、佳境を迎えている。
タイトルを分け合う「2強」里見香奈女流四冠と西山朋佳女流三冠の戦いぶりなど、各組の状況と今後の展望を解説する。
全組の成績は公式ページをご参照いただきたい。
1位決定
8つに分けられたブロックのうち、5つの組で1位が決まっている。
各組の1位が第1期白玲をかけてトーナメントを戦うことになる。
里見女流四冠は実力通りの順当な結果といえよう。
「2強」を追う伊藤沙恵女流三段、加藤桃子女流三段も全勝で1位通過を決めている。
昨年、タイトル戦出場の最年長記録を更新した中井広恵女流六段も安定した指しまわしで1位通過を決めた。
レジェンドといえど、レベルアップ著しい女流棋界でこの成績をあげるのは半端なことではない。実際、清水市代女流七段は未だ2勝と不振に苦しんでいる。
現在のトップ女流棋士の名前が連なる中で意外性があるのは加藤圭女流二段の名前だ。
10代で女流棋士になる人が珍しくない中、加藤(圭)女流二段は約3年前に20代でデビューした遅咲きだ。しかしながらここ一年の進境は著しい。
タイトル戦の「第1期」はシンデレラが生まれやすいとされている。今回それに該当するとなれば加藤(圭)女流二段だろう。
1位争い
3つの組で1位が決まっていない。
この4月から正式に女流棋士となった注目の西山女流三冠は、山口恵梨子女流二段に黒星をつけられた。
D組は西山女流三冠と香川愛生女流四段のほぼ一騎打ちといえる状況だが、直接対決を制している西山女流三冠は最終戦に勝てば無条件で1位が決まる。
E組は混戦模様だ。直接対決を制している渡部愛女流三段が最終戦に勝てば1位決定となるが、最終戦は2敗で追う成長著しい新人の野原未蘭女流1級だ。
もし渡部-野原戦で野原勝ちだと、山根ことみ女流二段の結果次第では野原女流1級の1位もあり得る。
F組はタイトル獲得経験のある上田初美女流四段に直接対決で勝った石本さくら女流二段が一歩リードしている。最終戦に勝てば1位が決まる。
2敗で若手の2人が追っており、最終戦の結果次第では2敗が大勢出る混戦になるかもしれない。
順位争い
このヒューリック杯白玲戦・女流順位戦の特徴は、全女流棋士に順位を付けるというものだ。これは女流棋界始まって以来のことになる。
各組で順位をつけて、それぞれの組の同じ順位同士でトーナメントを行って最終順位が決まる。
当然ながら1位もあれば8位もあるわけで、厳しい戦いだ。
棋士にも同じように順位戦があるが、これは観ている側にとって面白いが当事者としてはキツイ面もある。
各組8位のラインは、全敗~1勝というところだ。
全体的に30代後半~40代の女流棋士に成績不振が目立つ。
一方、新人でも勝ち星が伸びていない女流棋士もいて、競争の激しさ、全体の底上げが進んでいることを表している。
筆者も棋士として順位戦を14年間戦い、順位が付く厳しさ、選手生命に直結する怖さを存分に味わってきた。
それでもその経験が自分の力を高めてきたと感じている。
また、棋士の順位戦は持ち時間が6時間で、死力を尽くす戦いになる。肉体的にも精神的にも大変な戦いだが、それが実力向上につながった実感がある。
現状このリーグ戦の持ち時間は2時間だが、せっかく年間を通じたリーグ戦を行うのであれば、運営上の問題等もあると知りつつも、4時間くらい持ち時間があったほうがレベルアップにつながると筆者は考える。
TV番組
ヒューリック杯白玲戦・女流順位戦では、BSフジで毎月特集番組が放送されている。
この番組は女流棋士の知られざる横顔を見せてくれることもあり、筆者は毎月楽しみに観ている。
この番組が本日(4月18日)14時から放送される。
今回はリーグ戦で活躍を見せた若手女流棋士である、武富礼衣女流初段と小髙佐季子女流初段が特集されるようだ。
ご覧いただき、女流棋士の新たな魅力を感じていただければ幸いだ。