『若年無業者白書』のためのリテラシー
先日、若年無業者の支援を行うNPO法人育て上げネットさんと共同執筆した『若年無業者白書』を公開しました。ありがたいことに、いくつかメディアにも取り上げていただきました。
若者就労支援:「若年無業者白書」出版 NPOが支援データまとめる
http://mainichi.jp/select/news/20131027mog00m040022000c.html
携帯持っていれば無業期間は短縮…「ニート白書」 : ジョブサーチ : YOMIURI ONLINE(読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/job/news/20131030-OYT8T00469.htm?from=tw
若者の失職期間、携帯電話あれば短くなる傾向 パソコンは逆効果 NPOなど調査- MSN産経ニュース
http://sankei.jp.msn.com/economy/news/131029/biz13102910520012-n1.htm
またいくつか誤植や欠損のご指摘もいただき、さっそく工藤さんのブログで公開しております。後日、育て上げネットのホームページ等にも反映していくはずです。
【若年無業者白書正誤表ver.1】追加データ掲載あり。
http://ameblo.jp/sodateage-kudo/entry-11657917877.html
あともう一点、『若年無業者白書』についてのよくある「誤解」について追記しておきます。本白書、とくに第3部は「若者の失職期間が、携帯電話があれば短くなる傾向があり、パソコンを保有していると長くなる傾向がある」という結論を出していません。
本白書の、とくに第3部の示唆は「調査対象の(≒育て上げネットの支援を受けていた)若年無業者のなかで携帯電話を持っている場合、無業期間が相対的に短くなる傾向があり、同じく調査対象の若年無業者のなかでPCを保有している場合、無業期間が相対的に長くなる傾向が見出だせる」というものです。
したがって、たとえば「携帯電話を持つ若者は失職期間が比較的短くなり、パソコン保有者は逆に長期化する傾向が認められた。」という結論を、本白書からは導くことはできません。まず「携帯電話を持つ若者」一般についての知見を本白書は示唆しているものではありませんし、さらに因果関係の存在の有無についても提示しているわけではないからです(本白書は現状あくまで相関関係の存在を示唆しています。テクニカルには回帰モデルの説明変数の変数選択はあくまで分析者によるからです)。
携帯電話やPCの役割についてはより細かい分析が必要ですが、たとえばスマートフォンかどうか、オフィス系ツールがインストールされているかどうか、ツールを使いこなすことができるかどうか、ネットに接続しているかどうか等々の視点と組み合わせた追加調査を行うことで、これらのコミュニケーション・ツールが若年無業者の無業期間に与える影響についてより正確に理解することができるようになると思われます。
ともすれば、この手の記述はセンセーショナルなメッセージとなってしまいがちですので、ご注意いただければ幸いです。また追記すべき事項がありましたら、追記していきます。
※ 『若年無業者白書』紙版(ただし、500部しか作成しておらず、製作コストの問題でおそらく増刷は困難です)→
『若年無業者白書』Kindle版→