ドジャース移籍のダルビッシュは100%成績が向上する
8月4日のメッツ戦でドジャース移籍後初登板を飾り、7回を投げ3安打無失点10奪三振の好投で、チームを勝利に導いたダルビッシュ有投手。まさにチームが期待する“先発の柱”として十二分な投球内容だった。ドジャース・ファンならずとも、今後のダルビッシュ投手の登板に更なる期待を寄せてしまうだろう。
トレード成立直後から、DH制を採用するア・リーグから投手も打席に立つナ・リーグに移籍したことで、ダルビッシュ投手にとって有利に作用するという見方が多かった。確かにリーグ防御率を比較しても、毎年のようにア・リーグの防御率はナ・リーグを上回っており、ナ・リーグ所属の投手の方が成績を残しやすいのは間違いないところだ。
だがダルビッシュ投手に有利に作用するのは、リーグ格差だけではない。それ以上にレンジャーズとドジャースの本拠地球場の違いが、より鮮明にダルビッシュ投手の投球に影響をもたらすことになるのだ。
どんな投手であろうとも、登板数のほぼ半分は本拠地球場で投げなければならない。それだけ本拠地球場の特性は投手の成績に大きく関与すると言っていい。これまでダルビッシュ投手が本拠地球場としていた『グローブ・ライフ・パーク』は“打者有利”と言われていたのに対し、新たな『ドジャー・スタジアム』はまったく正反対の“投手有利”の球場なのだ。
それは、過去10年間のドジャースとレンジャーズの本拠地と適地の防御率を比較すると一目瞭然になってくる。まずは以下のデータをチェックしてほしい。
ドジャース : 2.97(4.46) → 3.02(3.92) → 3.19(3.63) → 3.06(3.45) → 2.65(3.88) → 3.57(3.56) → 3.81(4.24) → 3.10(3.74) → 3.01(4.40) → 4.24(4.16)
レンジャーズ : 4.43(4.33) → 4.48(4.02) → 4.74(4.22) → 3.45(3.81) → 4.17(3.86) → 4.37(3.19) → 3.65(4.24) → 4.27(4.51) → 5.47(5.26) →4.30(5.25)
これらは2016年から過去10年間の両チームのチーム防御率で、最初に登場するのが本拠地の防御率で括弧内が適地の防御率になっている。ドジャースは2011年と2007年の2回だけ、適地防御率が本拠地防御率を下回っているだけで、基本的には本拠地防御率が適地防御率を大幅に下回っているのが理解できるだろう。
一方でレンジャーズは、本拠地防御率が適地防御率を下回っているのが2013、2010、2009、2007年の4回だけ。しかも本拠地防御率が3点台だったのは2回しかない。どれだけレンジャーズ投手陣が本拠地球場で投げることに苦労してきたのかが数字の上でも明らかだ。
しかもドジャースは1962年にドジャー・スタジアム開業以来、延べ11人のサイヤング賞受賞投手を輩出しているのに、レンジャーズは現在の球場が1994年に開業する以前も含め、1972年にチームがテキサスに移転してからまだ誰1人サイヤング賞受賞投手が誕生していないのだ。
つまりドジャー・スタジアムはナ・リーグの中でもより投手有利な球場である一方で、グローブ・ライフ・パークはア・リーグの中でもより打者有利な球場であるわけだ。どう考えても、今後ドジャー・スタジアムを本拠地にできるダルビッシュ投手の成績が向上しない理由が見当たらないのだ。
米国の中で最も理想的な気候だと言われるロサンゼルス。1年を通して雨量が少なく寒暖差もないのだが、その反対に日較差が激しいため、夏真っ盛りでも夜間になると20度台まで気温が下がる。天候に左右されることなく、ほぼ快適な環境で投げ続けることができるのだから、投手にとって天国のような場所なのだ。
まずはドジャー・スタジアム初登板で、ダルビッシュ投手がどんな投球を披露するのか注目したい。そこで圧倒的な投球を披露するようであれば、その時こそドジャースの望み通り、クレイトン・カーショー投手との“二本柱”が完成することを意味する。