独身と夫婦との間で新聞や書籍などへの支出傾向にはどのような違いがあるのか(2021年公開版)
インターネットという新しいメディアの登場で、紙媒体のビジネスは一様に厳しいとの話を聞く。世帯の種類で新聞や書籍などの紙媒体への支出傾向にはどのような違いがあるのだろうか。単身世帯と二人以上世帯の違いについて、総務省統計局による家計調査の結果(年次分は2020年分が最新)から確認する。
まずは月次の世帯購入頻度(※)。今グラフに関しては「世帯単位での動き」であることに注意。単身世帯は当然世帯主本人のみ、そして二人以上世帯は夫か妻の片方どちらか、さらには子供が購入しても(子供の小遣いによる調達までは「家計」にカウントしきれていないので、あくまでも「世帯全体のお財布から買った」もののみとなるが)購入世帯として該当する。
2020年ではすべての媒体において二人以上世帯の方が高い値が出ている。単身世帯の方が世帯の可処分所得のうち自身の趣味に投じる割合を自由に采配できる割合は高いので、例えば雑誌・週刊誌では単身世帯の方が高い値が出やすいのだが。
「二人以上世帯は単身世帯と比べて、購入する機会を持つ人が2倍以上(少なくとも夫婦)なのだから、世帯購入頻度も2倍ぐらいの差が出るはず。そこまでいかなくとも、二人以上世帯の方が高くなるのは当然」との意見もあるに違いない。その考え方は一理ある。しかしいずれの媒体においても、両種類世帯間で差異はさほど大きなものではない。一方で前年比を算出すると、それぞれの世帯でどのような変化が起きたのかが分かる。
紙媒体が苦境の中にあるのは複数の調査結果から明らかにされているが、今件でもそれが表れる内容となっている。特に単身世帯の減少度合いが著しい。新聞ではマイナス12.9%ポイントもの下落を示してしまっている。雑誌・週刊誌はマイナス10.8%ポイント。書籍もマイナス7.4%ポイントと大幅な減少。二人以上世帯の上下幅は誤差の範囲とも解釈できるが、単身世帯のは誤差とは判断し難いレベル。恐らくだが新型コロナウイルス流行により在宅勤務をする人が増え、通勤の際に購読する機会が減ったのか大きな原因だと思われる。新聞も雑誌・週刊誌も書籍も、それ自身の購入のためだけに外出するほどの強い意向は持ち合わせていない人が少なからずいたということなのだろう(ネット通販を使えば話は別だが)。
なお単身世帯の6割近くが新聞を月ぎめで購読している計算になるが、この値を高いと思う人がいるかもしれない。これは高齢者比率の影響によるものの可能性がある。高齢層が新聞好きなのはよく知られている話だが、単身世帯では特にその傾向が強い。実際、2020年における単身世帯でその年齢階層別の新聞への支出金額を見ると(年齢階層別の世帯購入頻度のデータは公開されていないので、購入者・非購入者を合わせた支出金額から購入性向を推測するしかない。また新聞単価そのものは種類によって大きな違いはない)、若年層と高齢層との間で新聞購入への姿勢に大きな違いがあるのが分かる。
単身世帯では34歳までの場合、新聞には月に47.6円しか支出していない。他方60歳以上は2277.5円。65歳以上に区切るとさらに金額が上乗せされるため、より高齢になるに連れて新聞への支出金額が上乗せされることは容易に想像できる。
ちなみに家計調査における単身世帯での抽出率調整後の世帯分布を見ると、高齢層はおおよそ増加の一途をたどっている。ここ数年は横ばい、さらにわずかだが減少にすら転じているようにも見えるが。
新聞をよく読む高齢層の回答者数比率が高ければ、単身世帯全体の世帯購入頻度の値が高いものとなっていても何ら不思議ではない。
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※世帯購入頻度
世帯購入頻度とは世帯単位での月あたりの購入頻度。例えば特定の世帯において該当期間中に誰かが2回雑誌を購入すれば、その世帯の期間中の世帯購入頻度は200%になる。非購入世帯も含めての計算であることに注意。
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(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。
(注)「(大)震災」は特記や詳細表記の無い限り、東日本大震災を意味します。
(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。