Yahoo!ニュース

FRBの独立性は実績の積み重ねにより定着

久保田博幸金融アナリスト
(写真:イメージマート)

 米国では連邦準備法により連邦準備銀行は国債を市場から購入する(引受は行わない)ことが定められている。1951年のFRBと財務省との間での合意(いわゆるアコード)により、連邦準備銀行は国債の「市中消化を助けるため」の国債買いオペは行わないことになっている。

 FRBの独立性については特に明文化はされていない。FRBの独立性は実績の積み重ねとともに、政府サイドにいた中央銀行制度の理解者により築き上げられたものだとされている。

 米国のFRB議長、副議長、理事の任命においては、大統領が自ら人事案を公表し、上院銀行・住宅・都市問題委員会が候補者を招いた公聴会を開催し、それを踏まえた上で、同委員会が任命を承認する。その後、それを上院本会議で承認する(連邦準備法10条1)。このように、政治はFRB議長などの任命において深く関与している。

 FRB理事の任期は14年(議長、副議長職は4年、再任可)、FRB理事の罷免には連邦議会の弾劾手続きが必要とされる。

 FRBの独立性を高めるうえで、FRB議長として実績を上げたポール・ボルカー氏、18年6か月とFRB議長としては史上最長の在任期間を記録したアラン・グリーンスパン氏の功績が大きいとされている。

 ルービン元財務長官の回顧録によると、グリーンスパンFRB議長とクリントン元大統領の関係は良好だったとか。1993年までは大統領と財務長官がFRBの政策について度々口を挟み、圧力をかけていたが、クリントン大統領は公の場でFRBの政策について発言をしないという原則を守った。

 これはルービン元財務長官が、大統領や政権幹部に対し、金融政策を公の場で批判しないほうがよいとアドバイスしたことによるとされている。

 「金融政策に言及することを政権が一貫して拒否し、FRBの独立性に無限のサポートを与えることは、金融政策の信認を高め、政権への尊敬を高めることができる」、「真の中央銀行の独立性は、われわれの経済にとって明らかに最適なレジームだと私は考えている」とルービン氏は語った。

 このようにFRB議長の功績により、FRBは政権交代による影響を受けにくい体制が出来上がった。さらにFRB議長は大統領に次ぐ権力者とも言われるようになる。

 ポール・ボルカー元議長は、民主党ジミー・カーター大統領に任命され、その後、共和党レーガン大統領に再任された。このようにして、FRBの独立性は、成文法で明示することなく、慣習法的に定着したとされている。

 グリーンスパン元議長は、共和党のロナルド・レーガン大統領が最初に任命したが、その後、共和党ジョージ・H・W・ブッシュ大統領、民主党ビル・クリントン大統領、そして最後は共和党ジョージ・W・ブッシュ大統領と4名の大統領に再任された。

 イエレン元議長は民主党のバラク・オバマ大統領が任命した。その後、共和党のドナルド・トランプは再任しなかった。こちらは独立性うんぬんとかいう問題ではなく、トランプ大統領の意向が反映された。

 そして現在のジェローム・パウエル議長は共和党のドナルド・トランプ大統領が任命し、民主党のジョー・バイデン大統領によって再任された。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

牛さん熊さんの本日の債券

税込1,100円/月初月無料投稿頻度:月20回程度(不定期)

「牛さん熊さんの本日の債券」では毎営業日の朝と引け後に、当日の債券市場を中心とした金融市場の動きを牛さんと熊さんの会話形式にてお伝えします。昼には金融に絡んだコラムも配信します。国債を中心とした債券のこと、日銀の動きなど、市場関係者のみならず、個人投資家の方、金融に関心ある一般の方からも、さらっと読めてしっかりわかるとの評判をいただいております。

※すでに購入済みの方はログインしてください。

※ご購入や初月無料の適用には条件がございます。購入についての注意事項を必ずお読みいただき、同意の上ご購入ください。欧州経済領域(EEA)およびイギリスから購入や閲覧ができませんのでご注意ください。

久保田博幸の最近の記事