「あのローソン」に行ってきた。
コンビニ+富士山という日本らしい写真が撮れると注目されている「あのローソン」に行ってきました。
4月にローソン+背景に富士山の映え写真を目当てとするインバウンド観光客が大勢来て、写真を撮るために道路を無秩序に横断したりして危ないという理由で、自治体が「黒幕」を設置した、というあのローソンです。
設置した黒幕が、その後、穴を開けられて、その穴が大きく広げられて、「別の幕に替える」といった話が出てきたあたりで、一体なぜそんな話になるの? と疑問に思ったことから、東京から見に行ってきました。
広報・コミュニケーションを専門にしている仕事柄、企業や自治体などのコミュニケーション施策を多く見てきたのですが、ニュースで見ている限り、今回の対応がなんだか奇妙に見えたのです。
【見に行くまでの問い】
現地に行くまで抱いていた問いは以下のようなものでした。
・ローソンが本部からスタッフを店舗に送って、店の前で案内係をやっていると報じられていたが、コンビニ本部としての役割は?
・自治体が黒幕を設置したらしいが、自治体としての役割は?
・混雑緩和、安全性確保、、、何が問題なのだろうか?
・問題の解決策は?
【行ってみて分かったこと・考えたこと】
そして、実際に行ってみると、次のようなことが分かりました。6月初旬の平日のことです。
1)河口湖駅からすぐ近くなので、わんさか外国人があふれている、次々に人が流れてくる
2)集まっている人たちは、写真を1枚撮ってすぐに立ち去る訳ではない。雲の流れで「富士山待ち」が大勢いる
3)道路の横断が危ないのは、交差点の信号が「押しボタン式」信号機であるせいもありそう。外国人にはそれが分からないため、赤横断している様子
4)その信号のすぐ斜め前に交番があり、時折、「ボタン押してね」など声をかけていた
5)はす向かいにセブン-イレブンがある。ローソンはもちろん、こちら側のセブンにも客は多く入っている。ほとんど外国人だった
6)ローソン前には駐車場整理用のコーンがたくさん置かれており、きれいな映え写真が撮れるかというと謎だが、多くの観光客が気にせずに写真を撮っていた
7)対策としてローソン側の駐車場に何かを置こうとすると、駐車場に入る車の動きを大きく制限してしまうため、難しそう
8)ローソンの屋根上に広告看板的なものを設置していないのは、ローソンの良心と解釈すべきだろうか
9)現地訪問前は、黒幕はなんだかナンセンスな対策のようにも感じられたが、一定の道路横断の抑制にはつながっている印象がある。黒幕の横にはガードマンが一人いた(人件費は自治体持ちなのだろう)
10)現場に集まっているのはほぼ外国人の様子で、日本のニュースで注意喚起などしても、本人たちには伝わらなさそうだ
【解決策】
フランチャイズ加盟店が営業する店舗敷地内で、コンビニ本部ができることは何か。新たな予算を講じて自治体が対策するべきことは何か。役割や責任範囲を考えると単純な解決策はなさそうですが、少なくとも次のような観点は考慮してもいいのかなと思いました。
1)黒幕より、看板状の方がいいと思う。それに富士山の楽しみ方を書くなどメッセージボードにする (温泉の脱衣所で、外国人に温泉の入り方マナーを解説する案内のように)
2)問題が長期化・深刻化するなら、前の道から一般車を締め出して(北欧によくあるような)歩行者用にすることも選択肢か
3)押しボタン式の信号を通常の信号に替えることでも飛び出し横断は減るかも
4)ローソン向かいのビルの2階がちょうど空いているようなので、そこを自治体が借り上げて、観光協会か何かの事務所に転用し、そこに公式カメラを置いて、小さなフォトスポット・エリアを設定し(つまり、向かいのビルから)、自分が入った映え写真を撮れるようにすることで、特定の一部エリアに人が集まる(集約する)ようにする (→ 自治体と民間企業の新しいオーバーツーリズム対策協定の例とかにする)
5)たとえば顔はめパネルのような、これを置けばそこで写真を撮りたくなるオブジェを駐車場の比較的邪魔にならない場所に1つ置いて、そこで撮ってもらう(ローソン)
6)集まって来る人たちの情報源はSNSだろうから、日本のニュースで注意喚起するよりも、SNSで「もっと手軽に」「もっと映える」場所を訴求して、そちらへ誘導するのが混雑緩和の観点では、少なくとも短期的には効果的かもしれない
と、いろいろ書きましたが、今回訪問した平日の印象では、現場の人たちの経験値も上がってきていて、案内も比較的スムーズな様子です。ただし、今後そのキャパを上回った時のことも考えておく必要はあるのでしょう。
直接的には関係ありませんが、ここから2キロほど離れたところに、セブン-イレブンの後ろにキレイな富士山が撮れる店がありました。「SNSで話題」になっていないためなのか、完全にノーマークで撮影している人は誰もいませんでした。
現地に行って初めて分かることがたくさんあるものです。