不可思議な対応続く秀岳館は学校全体のガバナンスが問われている
「サッカー部コーチの暴力行為」が問題なのかと思いきや、監督の言動も、学校の会見も、不可思議な対応が続いている。
問題が起きても、その都度適切な対応を取っていれば、傷は小さく治りも早い。しかし逆に対応を誤れば、傷はどんどん深くなり、問題の範囲も広がっていく。「熊本県の名門高校」と形容される秀岳館高校は今、そんな状態に見える。
対応のまずさによって、サッカー部コーチの問題から、学校のガバナンスが問われる事態になってしまった。
「サッカー部のコーチの暴力行為」から広がる問題
疑問符の付く出来事を中心に、時系列で振り返ってみることにする。
1) コーチによる暴力行為が動画で拡散(4/20)
https://kumanichi.com/articles/631567
2) 顔出し、名前出し、生徒のみ(11人登場)の釈明動画が発信される(4/22)
https://www.nikkansports.com/soccer/news/202204220001578.html
<謎>なぜ教員が出てくる前に、生徒が、生徒のみで、釈明・謝罪するのか?
3) 生徒の釈明動画に監督は「関与していない」旨を説明→実は関与していたことが後に発覚
<謎>監督も含めて一緒に寮生活をしていて監督・コーチに相談もせず投稿するのか、できるのか?
<謎>なぜ監督は「嘘」をついたのか?
4) 日テレ系情報番組「スッキリ」にサッカー部の段原監督が生出演(4/25)
https://www.sponichi.co.jp/entertainment/news/2022/04/25/kiji/20220425s00041000222000c.html
・生徒を守りたい旨の発言と謝罪をする
→その裏で、生徒に対しては「完全な被害者はたぶん俺(監督)だけだ」と発言(4/22)しており、放送後にその音声がネット拡散
・生徒の釈明動画は「後から聞いた。知らなかった」と語った
・監督からの出演打診だったという
<謎>なぜ記者会見ではなく、一番組のために熊本から東京まで出かけて出演をしたのか?
<謎>生徒を守るためとしても、なぜ時間の限られた生放送番組を選ぶのか?
<謎>ここでもなぜ「嘘」をつくのか?
5) 最初の動画が出てから2週間経った後に記者会見を開く(5/5)
・4/21の段階で警察が来て、「被害届は出ていないが暴力行為なので捜査する」と言われ、校内調査を進められなかったことを理由に挙げている(会見内容こちら)
<謎>会見は開かないにもかかわらず、段原監督は「スッキリ」に生出演しているのはなぜか?
<謎>生徒の釈明動画が拡散した段階で、少なくともその経緯は説明できたのではないか?
6) 校内の調査で、繰り返されていた暴力行為が発覚(5/5発表)
・過去の暴力行為について、学校はそれまで認識なし
・段原監督は今年4月から校長補佐という役職で、500人を超える寮生、寮の統括、生徒指導の統括を兼務していた
<謎>生徒指導を統括していた監督も暴力行為の認識がなかったのはなぜか?
7) 記者会見(5/5)で、校長(理事長)に質問が向けられようとすると、教頭がかばうような態度でマイクを取って弁明した。校長は冒頭の謝罪以外は一切喋らなかった
<謎>校長は何をどこまで認識しているのか? 組織のトップであり全体の責任者である校長は、今回の問題解決に一体どれだけのリーダーシップを発揮できているのか?
<謎>教頭はなぜ校長をかばうような、校長の発言機会を奪うような態度を取ったのか?
8) 記者会見(5/5)で示された対応として、処分は「書類送検の結果を待ってから」、第三者調査は「時間がかかるので(しないかも)」と言う
<謎>書類送検がなければどうしたのか?
<謎>第三者調査に二の足を踏むのは、サッカー部の試合復帰を早めたいのが理由と言うが、試合復帰よりも大切なことを問う、教える教育の機会ではないのか?
など、数々の疑問に感じる対応が繰り返されている。上で<謎>として挙げたのは、逆に言えば、少なくともその時点での信頼を取り戻すために、別の対応ができたのではないかというポイントである。
ネット上の生徒・保護者の声で注意点は見える
多くの受験生が参考にする高校の口コミ情報サイト「みんなの高校情報」で秀岳館高校ページを見ていくと、以下のような書き込みがある。
https://www.minkou.jp/hischool/school/review/2318/
※以上、すべて原文ママ。5/6現在。
もちろん、上にあるすべてが本当かどうかは分からないが、この「みんなの高校情報」は、すでに受験の情報源として確立しているサイトでもあるので、今では多くの学校がこうした書き込みを参考にし、問題を察知したり改善活動のきっかけにしている。
当然、秀岳館高校でもチェックしていて、少しでも良い高校生活を送れるようにと活かしているはずだ。
こうした書き込みの中に、暴力行為の可能性を感じられる情報がすでに散見されており、今回の校内調査で初めて暴力行為の実態が見えてきたと説明するには無理があるのではないか?
「嘘をつきに来た」「話にならない」
「スッキリ」の司会・加藤浩次氏は、5月5日の秀岳館高校の記者会見を受け、翌日5月6日の放送で、4月に出演した段原監督について、「嘘をつきに来た」「話にならない」など厳しい言葉で糾弾した。
自身の番組で渦中の段原監督の「嘘」を広める形になったのだから、その憤りは無理もない。
一方で、「事件後」に段原監督がカメラに向かって比較的自由に話している様子は、他では見られない貴重な情報になった。
少なくとも、これまでの情報から高い確度で言えそうなことは、
生徒は、監督・コーチ、あるいは他の教員(校長を含む)に伝えても解決しないと考えて、コーチの暴力行為の動画をSNSに投稿したのではないか? ということだろう。
なぜそうなっているのかは、どうやら複合的な要因がありそうだが、いずれにしても高校として生徒を守ることが優先されていないという体質であることを疑われても仕方がなさそうだ。
それはもう、一人のコーチの問題ではなく、サッカー部監督の問題だけでもなく、秀岳館高校全体の問題であり、問題解決のキーマンは他の誰でもなく、校長である。
記者会見を経て、「言えない」「嘘をつく」「見てない」ことが明らかになった秀岳館高校。「それはおかしい」と外に発信するのが生徒だけ(しかもイレギュラーな形で)というのは大きな問題だ。
校長は、会見で黙って座っている場合ではない。
<5月5日 秀岳館高校の記者会見>