10年国債の利率が2016年2月以来の0.1%超え、直接、住宅ローン金利等に影響するわけではないが
4月5日の10年国債入札において、表面利率が0.2%と発表された。10年国債の利率が0.1%ではなかったのは、2016年2月に発行された341回の0.3%以来となる。それ以降はずっと0.1%という最低利率に張り付いていた。
2016年9月に日銀は長短金利操作付き量的・質的緩和策を決定した。つまり長期金利をゼロ%程度に操作することで国債の利回り曲線、いわゆるイールドカーブをコントロールするというイールドカーブコントロール(YCC)が導入された。
これによって長期金利、つまり10年国債の利回りがゼロ近辺に抑え込まれた。その後日銀は長期金利のレンジを±0.25%であることを示した。
今年3月にFRBは利上げを決定したが、この背景には原油価格などのエネルギー価格や穀物などの原材料価格の上昇による物価の急騰があった。
米国債の利回りも上昇してきたことから、日本の国債利回りにも上昇圧力が掛かり、日本の10年債利回りは0.25%という上限まで上昇した。
これに対して日銀は指し値オペ、連続指し値オペ、さらに通常の国債買入れの増額などで国債利回りの上昇を抑えに掛かった。しかし、FRBの利上げピッチが加速する可能性が出てきたことに加え、国内でも物価の上昇圧力が強まっていることから10年国債の利回りはその後も主に0.2%台に止まっていた。
今回の10年国債は新発債となる。償還が3か月延びるとともに、利率も改定される。これまでは実勢利回りを背景に0.1%のままであったが、今回はその実勢利回りの0.2%台への上昇を受けて、約6年ぶりの0.1%脱出となった。
利率が0.2%になったからと言って、これが直接、住宅ローン金利に影響するわけではない。しかし、ここにきて国債利回りに上昇圧力が加わっていることを示したものであることもたしかである。
日銀はこの10年国債の利回りを0.25%までに抑え込むとしているが、経済物価の実勢を反映した長期金利の上昇を無理矢理抑え込んで、国債利回りの価格発見機能を損なうことに何の意味があるのであろうか。