Yahoo!ニュース

メディアの信頼度を東アジアの外交問題関連のニュースの情報源としての観点からさぐる(2020年公開版)

不破雷蔵グラフ化・さぐる ジャーナブロガー 検証・解説者/FP  
↑ 騒動のタネが尽きない東アジア。外交問題に関する情報は大切だが。(写真:GYRO PHOTOGRAPHY/アフロイメージマート)

全体的には新聞が一番

新興諸国の経済発展と、一部の国による軍事面も含めた意欲的・積極的・高圧的な外交施策に伴い、東アジアの緊張はこれまでに無い高まりを示している。その動向は対岸の火事ではなく、日本自身にも大きな影響を及ぼす、さらには関係のある事案も多数含まれており、一人一人が情報の収集に関心を持つのは当然の話。今回は総務省が2020年9月に情報通信政策研究所の調査結果として発表した「令和元年度 情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査」(※)の公開値を基に、この東アジアの外交問題に関するニュースを取得する際に、主要メディアは情報源としてどれほど信頼されているのかについて確認する。

まずは調査対象母集団全体における結果。新聞への信頼度が一番高い。

↑ 普段利用している情報源における信頼度(東アジアの外交問題)(2019年)
↑ 普段利用している情報源における信頼度(東アジアの外交問題)(2019年)

興味深いのは新聞に続くテレビとラジオがほぼ同じ値となっていること。東アジアの外交問題に限れば、映像付きのテレビと、音声のみのラジオへの信頼度はほとんど変わりが無いことになる。

またインターネットニュースサイトの値が高いのも特徴的。もっともそれ以外のインターネット系、具体的にはソーシャルメディアや動画配信・共有サイト、ブログ・その他サイトはおしなべて低い値。1.50が信頼できる・できないの境界線となるので、インターネット系のメディアはインターネットニュースサイト以外「信頼できない」のらく印をおされていることになる。そして4マスの中では唯一雑誌も「信頼できない」に分類されると判断できる。

属性別に比較

続いて各種属性別。まずは男女別。

↑ 普段利用している情報源における信頼度(東アジアの外交問題、男女別)(2019年)
↑ 普段利用している情報源における信頼度(東アジアの外交問題、男女別)(2019年)

1つを除いた全メディアで男性よりも女性の方が高い信頼度を示している。他のニュース項目でも女性は高めの値が出ているが、東アジアの外交問題に関してもまた同様なのだろう。ただし他のニュースで見られた、雑誌やソーシャルメディアのような口コミ色の強いメディアで男女差が大きくなるような傾向は無い。

続いて年齢階層別。

↑ 普段利用している情報源における信頼度(東アジアの外交問題、年齢階層別)(2019年)
↑ 普段利用している情報源における信頼度(東アジアの外交問題、年齢階層別)(2019年)

他の調査項目においてはインターネット系のメディアでは、高齢層ほど低い値を示す傾向があるが、今件ではソーシャルメディアで同様の動きがみられる。

4マスではおおよそ高齢層ほど高い値を示している。ただし雑誌は40~50代が突出しているのみで、高齢層が高いという動きには解釈し難い。

また10代は複数のメディアにおいて他の年齢階層と比べて突出した高い値、より高い信頼度を示している。虚報・誤報などの情報に関連するリスクとの対面経験がまだ浅いからなのかもしれない。

続いて就業形態別。

↑ 普段利用している情報源における信頼度(東アジアの外交問題、就業形態別)(2019年)
↑ 普段利用している情報源における信頼度(東アジアの外交問題、就業形態別)(2019年)

特に大きな、傾向だった動きは見られない。フルタイムは押しなべて低め、パート・アルバイトや無職は高めとなりやすいぐらいだろうか。

最後は世帯年収別。

↑ 普段利用している情報源における信頼度(東アジアの外交問題、世帯年収別)(2019年)
↑ 普段利用している情報源における信頼度(東アジアの外交問題、世帯年収別)(2019年)

4マスとインターネットニュースサイトではおおよそ高世帯年収ほど信頼度が高くなる傾向がある。インターネット系のメディアであるにもかかわらずインターネットニュースサイトが4マスと同じ傾向を示すのは、インターネットニュースサイトの多分が4マスの運営によるもので、配信されているものも4マスからの転送になるからだろう。一方でそれ以外のインターネット系のメディアでは高世帯年収ほど信頼度は低くなる動きを示している。ただし1000万円以上になると突出した高い値を示すのは不思議なところではある。

海外ニュース、特に東南アジア関連のニュースは、日本国内報道機関の報道においては、各社の、場合によっては記者のバイアスが反映されることがあり、外電の一次ソースや大元となる公的機関の情報を確認すると、印象が大きく異なる、まったく別の実態だったとする事案が相当な頻度で生じている。他の項目と比べ、全体的に信頼度が低いのも、それが遠因だと考えられる。

もっとも、他の記事でも指摘しているが、あくまでもこれは一般論。結局のところ、それぞれのメディアを用いて情報を配信する、個々の企業・組織の特性・姿勢により、信頼度は大きく変わってくる。その見極めができないと、「テレビだから丸ごと信頼できる」「インターネットだから全部うさんくさい」のような、仮の信頼度に右往左往してしまうことになるかもしれない。結局のところテレビもインターネットも、情報を伝達するツールでしかなく、その情報を信頼できるか否かは、配信側によるところが大きいことを忘れてはならない。

■関連記事:

【尖閣諸島を何で知った? 知っている人の93.0%がテレビやラジオ経由(2019年公開版)】

【中国の積極的な拡張政策の実力行使に強い懸念を抱く周辺アジア諸国の実情】

※令和元年度 情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査

2020年1月14日から1月19日にかけて、全国125地点をランダムロケーションクォータサンプリング(調査地点を無作為に抽出、地点ごとにサンプル数を割り当て、該当地域で調査対象者を抽出する方法)によって抽出し、訪問留置調査方式により、13~69歳の1500サンプルを対象としたもの。アンケート調査と日記式調査を同時並行で実施し、後者は平日2日・休日1日で行われている。よってグラフの表記上は「10代」だが、厳密には13~19歳を意味する。

調査のタイミングにより一部調査結果においてイレギュラー的な動きが確認できるが、これについて報告書では「調査時期の違いによる影響や単年の一時的な傾向である可能性も否定できず、継続的な傾向の把握については今後の調査などの結果も踏まえる必要がある」と但し書きをしている。

今件項目では主要メディア、具体的にはテレビ、ラジオ、新聞、雑誌、そしてインターネットに関してはインターネットニュースサイト、ソーシャルメディア、動画配信・共有サイト、ブログ・その他サイトに細分化した上で、日本国内の政治や経済に関する情報源として、どの程度信頼できるかを「非常に信頼できる(3)」「ある程度信頼できる(2)」「あまり信頼できない(1)」「まったく信頼できない(0)」「そもそもその情報源を使わない、知らない」のいずれかから回答者自身の考えにもっとも近い選択肢を一つ、選んでもらっている。その上で、「そもそもその情報源を使わない、知らない」以外の回答に関して割り当てられた数字の平均を信頼度として算出している。全員が「非常に信頼できる」と答えれば3.00、「まったく信頼できない」なら0.00となり、値が大きいほど大きな信頼が寄せられていることになる。

一方この方法では「そもそもその情報源を使わない、知らない」の回答者は信頼度算出の際には除外されている。この回答者の中には「信頼がおけないので使っていない人」がいる可能性も否定できず、現実の信頼度は算出値よりもいくぶん低いと見た方が無難ではある。

(注)本文中のグラフや図表は特記事項の無い限り、記述されている資料からの引用、または資料を基に筆者が作成したものです。

(注)本文中の写真は特記事項の無い限り、本文で記述されている資料を基に筆者が作成の上で撮影したもの、あるいは筆者が取材で撮影したものです。

(注)記事題名、本文、グラフ中などで使われている数字は、その場において最適と思われる表示となるよう、小数点以下任意の桁を四捨五入した上で表記している場合があります。そのため、表示上の数字の合計値が完全には一致しないことがあります。

(注)グラフの体裁を整える、数字の動きを見やすくするためにグラフの軸の端の値をゼロではないプラスの値にした場合、注意をうながすためにその値を丸などで囲む場合があります。

(注)グラフ中では体裁を整えるために項目などの表記(送り仮名など)を一部省略、変更している場合があります。また「~」を「-」と表現する場合があります。

(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。

(注)「(大)震災」は特記や詳細表記の無い限り、東日本大震災を意味します。

(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。

グラフ化・さぐる ジャーナブロガー 検証・解説者/FP  

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

不破雷蔵の最近の記事