快適性だけでなく乗りやすさも激変!バイクの「シート」について考える
跨った瞬間、気になる「シート」
バイクに乗ったときに最初に気になるところ。私の場合、それはシートです。跨った瞬間、シートの塩梅が悪いと、どうも気になってその後のライディングに集中できなくなったりします。
具体的に何が気になるのかというと、まずは座り心地。硬すぎるとそれだけで旅先を考えると憂鬱になるし、シートの両サイドの角が当たっていたりすると最悪。そのうち足を着くだけで内モモが痛くなることが目に見えます。
純正シートで極端にダメなことはまずありませんが、カスタムシートなどではけっこう見かけます。足着きを改善するためにシート高を下げようとして、単に中のウレタンを削ったいわゆる”アンコ抜き”は前述の悪いパターンそのもの。クッションが減って乗り心地は悪いし、シートに角が立つので足を真下に下ろしずらく、逆に足着きが悪くなったりします。
かくゆう私もいろいろな失敗を重ねてきたからこそ言えることです。
時代の変遷を経てきた!? 座面の角度
座面の角度も気になります。最近では少なくなりましたが、かつては純正でもスーパースポーツモデルを中心に、座面が急角度で前傾しているシートがありました。加速Gで前ズレしないようにとの心遣いなのでしょうけれど、これも考えようでブレーキングの度、路面の凹凸を拾う度に前にズレていってしまうことも。
それに気づかずに前乗りになったまま、腕を突っ張った姿勢が体に染みついてしまい、気が付くと変な乗り方になってしまっているパターンも見受けられます。昔と今のバイクのシルエットを見比べてみると面白いですよ。同じメーカーの同じジャンルのモデルでも世代によってシートの傾斜が異なることに気付くはずです。これも担当したデザイナーの設計思想が大きく影響する部分ですね。
同じくシートレザーが滑りやすいとイヤですね。元々の素材は仕方ないとしても、すり減った表皮はタイヤと同じでグリップ力が低下してきます。テカテカシートとGパンの組み合わせは最悪で、前ズレ大会になってしまいます(笑)。
なので、自分では洗車するときもシートとタンクはワックスをかけず、きっちり乗りたいときは革パンを着用していますが、どうしても滑るようなら低コストで効果が確実な、シートレザーの張り替えをおすすめします。新品にするだけで滑りにくくなりますし、ノンスリップ素材に変えれば効果てきめんです。
カテゴリーによってシート高も変わる
そして、高さ。シートに跨ったときは、やはり高さが気になります。
悪路での走破性を高めるためサスペンションのストロークを長く設定したオフロードモデルはもちろんですが、ロードスポーツモデルなどもバンク角を稼ぐためにロードクリアランスが必要なため、車高が高く結果的にシートも高くなりがちです。
最近では重心位置を高く設定して、倒し込みに軽快感を出すために、あえて車高を高くしているモデルもあります。最近流行りの“足長スポーツ”などもその部類に入るでしょう。クルーザーなどは逆に低重心での安定感と跨りやすさを優先して、低いシートが多いですね。
ちなみにシート高の目安としては大型バイクの場合で、オフロード系やアドベンチャーモデルなどは850mm以上、スーパースポーツなどは830mm前後、ネイキッドモデルは800mm前後、クルーザーやアメリカンモデルは700mm以下がだいたいのところでしょう。シート高は車重とともにバイク選びのポイントになる部分なので、購入を考える際にはひととおりスペックを確認しておくことをおすすめします。
また、輸入車などでは日本向けにローシート仕様を設定している場合も多く、それが日本向けには標準設定になっているモデルもあります。それはそれでありがたいのですが、「日本人は足が短いからね~」と言われているようで、ちょっと複雑な気持ちになります(笑)。まあ、乗りやすければ結果オーライですが。
シートの選び方と、優先度のバランス
ちなみにローシートとハイシートの設定があった場合、必ず実際に乗り比べてみることをおすすめします。たしかにローシートは足着きが良いかもしれませんが、走り始めてみたら、バイクとの自然な一体感やハンドリングの軽快感、見晴らしの良さなど多くの点でハイシートのほうが勝っていることもあります。これはけっこう重要なファクターで、安全性やライディングの楽しさにもつながる部分です。
良いシートとは・・・・・・。ライダーにとってこれは永遠の課題です。「何を優先するか?」その辺りのバランスが難しいのですが、これは自分で決めるしかありません。じっくり乗り比べて悩んでみてください。それもバイクの醍醐味ですから。
※原文より筆者自身が加筆修正しています。