現在の公衆電話台数は約17万台
スマホの普及に伴いその存在すら目にしたことがない、機能が分からない人も増えている公衆電話。その台数のこれまでの推移と現状を、総務省が7月に発表した情報通信白書など公的データから確認する。
「公衆電話」は言葉通り「公衆」の「電話」であり、誰もが有料で利用できるインフラとして提供されている。また最近では公共の場にまとまった形で配され、身近な情報交換手段として用意されている。他には緊急時に救急車や警察を呼ぶための拠点としての意味合いもある。
電気通信事業法施行規則によれば、公衆電話は社会生活上の安全及び戸外での最低限の通信手段を確保する観点により、市街地(国政調査結果による人口集中地区)では500メートル四方に1台、それ以外の地域(世帯や事業所が存在する地域)では1キロ四方に1台は設置することが求められている(電気通信事業法施行規則:第十四条のニ)。
しかし「いつでもどこでも電話が使える」公衆電話の役割は、携帯電話の普及と共にその立場を奪われる形となり、需要・利用率も漸減。利用率の低下は売上の低下につながり、採算が合わなくなる対象も増加。結果として設置台数も減らされつつある。
2016年3月末時点における日本国内の公衆電話総数は17万1179台。去年の18万3655台からさらに約1.2万台・6.8%の減少である。
白書側でも「携帯電話の急速な普及により、公衆電話の利用が減少していることが背景にある」と解説されている通り、この減少は携帯電話の普及に伴うもの。今後携帯電話の普及率がさらに上昇し、幅広い世代に浸透するにつれ、公衆電話の必要性はますます低くなり、採算性の問題もあり、台数が減っていくことは容易に想像ができる。
この状況について総務省などでは「高齢者の利用度が高い」「緊急時において必要となる」「ユニバーサルサービス制度によって(赤字でも)維持が義務付けられている」などの理由もあり、「減少傾向は避けられないが、最低限必要数は維持される」ことが確約されていると説明している(上の「電気通信事業法施行規則」もその裏付け)。
このうち「緊急時において必要となる」に関しては、2011年の東日本大地震・震災の際に、他の通信インフラが途絶した状態の中、公的機関などに設置・開放された公衆電話を使い身内や知り合いと連絡を取り、その必要性を実感した人も少なくない。これはNTTが設置する公衆電話は、発信規制や接続規制が行われた際にも優先して通信が行なえる「優先電話」と同様の扱いを受けているためである。
今後は「インフラとして必要な公衆電話数の適切数」の検討、さらには「緊急時の保険的通信手段としての役割」が再確認された上で、公衆電話の管理維持が求められよう。同時にこれまで以上に、代替手段としてますます重要視される携帯電話のインフラとしての脆弱性について、さらなる努力による状況改善が要求されるのは言うまでもない。
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