日銀はYCCを撤廃するのか、どうする日銀。10年新発債利回りが0.545%まで一時上昇
![](https://newsatcl-pctr.c.yimg.jp/t/iwiz-yn/rpr/kubotahiroyuki/00332635/title-1673570432877.jpeg?exp=10800)
1月12日の7時45分に読売新聞は「日銀、大規模緩和の副作用点検へ…年末の政策修正後も市場金利にゆがみ」と報じた。これを受けてあらためて日銀の政策修正観測が強まり、12日の債券市場は急落、つまり国債の利回りが上昇した。
市場では1月17、18日の金融政策決定会合での追加の修正観測は燻っていたものの、6日にブルームバーグが「日本銀行は、昨年12月の金融政策決定会合で決めたイールドカーブコントロールの運用見直しの影響と効果を見極める局面にあり、現段階でさらなる修正を急ぐ必要はないとみている」と報じ、やや疑心暗鬼となっていた。そんなところに今回の読売新聞の記事が出たことで、ある意味サプライズとなった。
もう少し細かく今回の読売新聞の記事を確認してみたい。
「日本銀行は17、18日の金融政策決定会合で、大規模な金融緩和策に伴う副作用を点検する」
これは観測記事や憶測ではなく「点検する」とあったことに注意したい。情報元はどこなのであろうか。読売新聞というところも注意して見ておく必要があるかもしれない。これは「点検する」というより「点検させる」と言う意味合いに読めなくもない。
「昨年末の政策修正後も市場金利にゆがみがあるためだ」
今回の点検の理由として、12月20日の長期金利レンジの0.50%への引き上げ後も、イールドカーブそのものの歪みは解消されていないことを指摘している。これは当然のことで実体経済や欧米の金利からみて、本来の国債の利回りレベルとの乖離がこの程度では解消されないためである。
「1月以降は長期金利が上限で推移するほか、償還期限のさらに短い金利も上昇しやすく、日銀の狙いと異なる金利の動きがみられる」
日銀の会議室で勝手にイールドカーブを決めることに問題がある。それによって「ゆがみ」が発生している。
「国債の購入量の調整などで市場のゆがみを是正できるかを見極める。必要な場合は追加の政策修正を行う」
今の日銀は国債は買いしか行っておらず、量を多少調整したところで、日銀の思惑通りになることは無理がある。それだけファンダメンタルズなどに即した現実の利回りとの乖離が大きいということになろう。
市場での金利上昇圧力の高まりに対抗して、日銀が国債を購入すると、12日のように当月の10年国債の発行分を日銀が購入せざるを得ないというような事態も発生している。これによって国債の流動性が失われ、さらなる債券市場の機能低下に繋がることになる。
「必要な場合は追加の政策修正を行う」
これが何を意味するのか。個人的には1月と3月の決定会合で、YCCとマイナス金利政策の両方を解除し、ゼロ金利政策に戻すべきと考えていた。次期総裁を含めた新執行部体制に代わる前に、点検や修正を進め、金融政策の正常化への道筋を付けるという感じのシナリオである。これが少し現実味を帯びてきた。
13日の債券は大きく下落し、10年新発債の利回りは一時0.545%まで上昇し、0.500%のレンジの上限を突破した。
市場では少なくとも長期金利レンジが引き上げられることを想定した動きとなっている。ただし、ここで日銀が長期金利レンジを引き上げても、経済実態などから想定される金利と乖離している限り、同様の事態が発生し、市場とのイタチごっことなる可能性が高い。
このため、長期金利コントロールの再拡大はあまり意味はないとみている。それでもレンジを0.75%とか1%に再拡大するという選択肢もなくはない。
本来すべきはYCCの撤廃であろう。指し値オペなどもってのほか、こちらを早期に撤廃する必要もある。ただし、いきなりYCCの撤廃となると、これまでの日銀の主張と整合性がとれない、説明責任はどうするといった声も聞こえる。しかし、申し訳ないがそんなの関係ない。そもそも日銀が経済実態等と整合性がとれない無理な政策をしてきたことそのものに問題があった。
日銀とともにYCCを取り入れていたオーストラリアが行ったように、いきなりYCCの撤廃を行う必要性も出てきたと思う。オーストラリアも、入るべきオペが入らなかったことをきっかけにしてYCCを解除した。
日銀はかなり追い込まれているが、この責任はヘッジファンドなどの海外投資家などにあるのではなく、日銀のこれまでの政策そのものに原因がある。
いずれにしても、どうも何か大きな変化が日銀に対してあったように思える。この結果、18日の金融政策決定会合で日銀はどうするのか。桶狭間の徳川家康と同様に日銀も追い込まれてきた。