2018年は「副業元年」となり多くの企業で議論が進むでしょう
■副業はイノベーションを起こせるのか
連休明けの今日から2018年のお仕事が始まっている方も多いと思いますので、私から今年のトレンド予想を一つ紹介します。
結論から申しますと、今年は「副業解禁」が本格的に進むぞという話です。私の専門は「CSR(企業の社会的責任)経営」ですが、このカテゴリでも従業員の働き方改革というのは本丸であります。
副業に関する情報や報道は一昨年あたりから急激に増えた印象があります。これは気のせいではなく、現政府が推進している「働き方改革」の一環で議論が進んでいたからです。
さて、副業の解禁・推進は国策とはいえ、現状を正式に把握しているという方は少ないでしょう。そこで本記事では、副業に関する調査・統計を中心に紹介します。あなたの副業に関する意思決定の参考にしてみてください。
※本記事では副業に兼業・複業と呼ばれる働き方を便宜上含むものとします。
■統計データ紹介
では、副業に関する統計・調査などを紹介していきます。調査はすべて2017年の最新のものです。
◯働き方改革に関する企業の実態調査
この調査によれば、全体の約65%はすでに副業を認めているもしくは今後認めることを検討する、となっています。一部の頑なに変化を拒む企業以外では、懸念さえなくなれば認めなくはない、という姿勢のようです。
◯兼業・副業に対する企業の意識調査
容認している企業の主な理由は「特に禁止する理由がない」となっています。憲法や法律で禁止となってはいないし、今となっては政府が推進しているくらいですので、当然でしょう。逆に反対派の主な理由は「長時間労働を助長する」とのこと。反対派の意見もまったくその通りなのですが、「包丁は人を殺してしまう可能性があるから販売してはいけない」のような論理にも聞こえてしまいます。事業活動でゼロリスクは存在しません。リスクとうまくつきあいながら改善している姿勢もこれまた重要だと思います。
◯2017年度の雇用動向に関する企業の意識調査 副業・兼業はモチベーション向上や人材確保・定着で効果的
世の中には副業をしたいと思うビジネスパーソンが一定数います。セクシャルマイノリティなどへの対応もそうですが、社内に一定数いるのがわかっているなら、その人たちのために対応する施策が必要なんじゃないの?ということでしょうか。このあたりの企業メリットを考えると「福利厚生」にも貢献しうることがわかります。
◯5,000名以上の正社員に聞く「副業」実態調査
他の調査でも副業は「収入のため」というのがあるので、多くの人にとってはキャリア形成・スキルアップというよりは、より実利を獲得するための手段とする人が、現状としては多いという結果のようです。
◯副業(複業)の実態〜働き方改革意識調査
色々な理由があるとしても、リスクを極力減らしたい企業としてはまだまだ禁止しているところが多いようです。全体の3割もの人がしたい、といっているのに無視し続けるのは人事戦略上正しい選択なのかどうか…。
◯<大企業の正社員1,236名に聞いた、副業に関する意識調査>副業(社外での活動)禁止の企業は時代遅れ!?
大企業の従業員だからという部分があるのかもしれませんが、従業員が自社に社会動向を考慮した施策の実施を求めるのは当然です。とはいえ、他の調査でもだいたい割合は同じなのですが、6〜7割の人は解禁になろうが当面は副業をしない意向のようです。
■副業からの起業/創業
ここまで副業に関する複数の調査・統計をみてきました。なんとなく国内動向を把握していただけたかと思います。本記事では、副業のもう一つの側面である「独立するための副業」についてもふれたいと思います。(これも広義の働き方改革であり政府が独立・起業を推奨しているため)
副業というと多くの方は、いわゆる“サラリーマン”をしながら空いた時間でビジネスをするイメージだと思います。しかし、善悪は別として、将来独立するための準備段階としての副業もあります。企業サイドというよりは独立起業を考えている個人の方には非常に興味深いであろう、統計・調査を紹介したいと思います。
◯兼業・副業を通じた創業・新事業創出に関する調査事業研究会提言〜パラレルキャリア・ジャパンを目指して
不勉強で恐縮ですが、この資料をみて「パラレルキャリア・ジャパン」なる概念を知りました。政府は副業推進派なので、そのエビデンスもそちら方向ではあるものの非常に興味深いレポートだと感じました。個人的には、企業が禁止しても法律で禁止されているわけではないので、してしまう人が100万人単位でいるならば、条件付きで認めていったほうがいいのではないかと考えています。
◯副業起業は失敗のリスクを小さくする―「起業と起業意識に関する調査」(2016年度)より
独立・起業は、いくつかの統計があるものの「法人廃業率(10年)」は90%以上と言われています。つまりほぼすべての企業は“近い将来に廃業する”のです。たしか1年目でも3割が事実上の廃業という数字だったと思います。それだけ不確実性の高いスタイルなので、助走があったほうがいいのは当然といえば当然かと。
私は「サステナビリティ(持続可能性)経営」も専門なので、いかに“生き残れるのか”について企業の支援をしているわけですが、将来のイグジット(IPOやバイアウト)をスケールするビジネスモデルでの副業でも、小規模事業者としてニッチなスモールビジネスを継続的にするビジネスモデルであっても、副業からスタートするのには大賛成です。
私が今年独立して丸10年(11年目)となりましたが、最初に勢いで独立してしまい困ったことが多々あったので、私が独立支援をするときは、この方法がベストかもしれないと身をもって感じています。
■副業の課題
当然、物事は「リスクと機会」があるもので、副業においても課題はあります。副業の制度や議論が盛り上がってきたからといって必ずしなければならないというものでもありません。
よく言われる課題は、前述の副業関連の調査からもわかるとおり「総労働時間が長くなることの弊害(残業代支払、慢性的疲労、など)」や「競合業種での副業によるノウハウ流出・情報漏洩」などでしょう。
また経団連のように、ネガティブな態度の業界団体もあります。これは副業のデメリットが解決されないうちに、推進だけ議論されるのはおかしいという姿勢なのでしょう。これ自体は非難されるものではありませんが、「実施するデメリット」と「実施しないデメリット」をきちんと比較し、2018年には適切な対応をしていただきたいです。
■まとめ
今年の4月からは「障害者法定雇用率のアップ」「無期労働契約への転換(非正規の正社員化)」などもあり、まさに働き方改革全体が大きく動く年となるでしょう。また、多くの企業が参考にしている厚生労働省「モデル就業規則」も近々で改定が行われると発表されています。2018年は副業を中心とした働き方改革が一段と進む1年になりそうです。
企業のCSR活動として副業を推進するかしないかでいえば、推進するほうがより従業員というステークホルダーに対して社会的責任を果たしているといえるでしょう。企業サイドとして副業解禁には様々な理由がありますが、従業員サイドとしては、うまく活用したいものです。まずは自社の就業規定がどのようになっているか、そして、自分が副業をするとしたらどういうことをしたいのか妄想することから始めましょう。
このあたりはガチンコなライフデザインです。人生100年時代の現代において自分の働き方を今一度見直してみましょう。また企業のCSRや人事の担当者は、今年中に自社の立ち位置を非正規雇用者を含む全従業員に情報開示し、説明責任を果たす必要があるでしょう。
参考リンク