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新聞広告とインターネット広告の金額はどちらが上なのか

不破雷蔵グラフ化・さぐる ジャーナブロガー 検証・解説者/FP  
↑ 新聞とインターネット。そのすう勢・立ち位置を広告費から探る(写真:アフロ)

広告市場の取扱額は、市場規模を推し量るのみならず媒体の影響力、公知力、社会からの認識力を示す物差しでもある。世間一般への公知力の観点で比較されることが多い(紙媒体としての)新聞とインターネットの広告費の動向を、直近となる2017年10月分までについて、経済産業省の特定サービス産業動態統計調査の公開資料から確認する。

経済産業省の特定サービス産業動態統計調査において、インターネット広告は単独項目として登場するのは2006年1月以降なので、グラフ化による精査もそれ以降を対象とする。

まずは取得できる全期間における推移。恐らくは2006年1月以前にもインターネット広告はそれなりの額が動いていたはずだが、今件データとして収録されたのは2006年1月の約80.3億円が初めて。一方同時期の新聞広告費は約541.3億円。

↑ 新聞広告・インターネット広告推移(月次、億円、特定サービス産業動態統計調査から)
↑ 新聞広告・インターネット広告推移(月次、億円、特定サービス産業動態統計調査から)

インターネット広告は2009年までは「漸増」との表現が適切な上昇傾向だった。しかし2010年に入ってからは上下変動幅を大きくしつつ、全体的には上げ幅を拡大する流れにある。特に年末の12月と年度末の3月には大きく上振れするのが特徴的。消費一般もこの時期に拡大する傾向にあるため、より効果的な広告効果を狙うべく、機動力を有し柔軟性の高いインターネットに広告リソースを一層投入しているものと考えられる。

一方、新聞は静かに減少。2010年に入るとようやく下げ止まった雰囲気はあるが、時折大きな減少の動きを見せる。新聞購読者の減少傾向は継続しており、今後再び大きく下げる方向に動く可能性は高い。

↑ 新聞推定読者数推移(1956年=1.00、日本新聞協会による公開値を基に算出)
↑ 新聞推定読者数推移(1956年=1.00、日本新聞協会による公開値を基に算出)

「新聞…下げから横ばい」「インターネット…漸増」との動きがあり、2010年半ば以降何度となく両者がクロスした以上、両者間の立ち位置がいずれ入れ替わるのは容易に想像できた。そして2013年に入ってからは、インターネット広告が新聞を上回る機会が多々生じている。

インターネット広告費の上昇率が大きくなる2010年以降に限り、グラフを再構築したのが次の図。「インターネット広告費>>新聞広告費」を記録した月の、インターネット側の値の丸を黄色で塗りつぶしている。さらに差異が分かりやすいように、「インターネット広告」から「新聞広告費」を差し引いた結果の推移も併記した。この値がプラスの場合、「インターネット広告」は「新聞広告費」を上回っていることになる。

↑ 新聞広告・インターネット広告推移(月次、億円、特定サービス産業動態統計調査から)(2010年~)
↑ 新聞広告・インターネット広告推移(月次、億円、特定サービス産業動態統計調査から)(2010年~)
↑ 新聞広告・インターネット広告推移(月次、億円、特定サービス産業動態統計調査から)(インターネット広告の値から新聞の値を引いた結果)(2010年~)
↑ 新聞広告・インターネット広告推移(月次、億円、特定サービス産業動態統計調査から)(インターネット広告の値から新聞の値を引いた結果)(2010年~)

現時点で両者の立ち位置が逆転、つまりインターネット広告の額面が新聞を超えた月は2011年3月に始まり、全部で65か月分(直近の2017年10月分まで)。2013年に入ると2月以降は継続してインターネットの優勢が続き、2013年11月と2014年1月にイレギュラー的に逆転現象が起きた以外は、インターネット広告が優勢の月が続いている(2014年2月以降45か月連続)。

直近における新聞優勢最後の月となる2014年1月分は、都知事選の影響があったことが観測されており、イレギュラー的な要因の結果と考えられる。また1月はインターネット広告の閑散月でもある。そのような事案が発生する以外においては、「従来型4マスメディアとインターネット」との仕切りにおいて、「市場規模で比較してテレビの次に来るのは新聞では無く、インターネット広告」との状況は、固定化されつつある。

かつては「あるかも」程度の可能性でしかなかった「新聞の広告市場規模をインターネットが抜き去る」状況が、今やすでに現実のものとなっている。何らかのイベント的な出来事で、今後稀に新聞の広告費がインターネットのそれを抜く時期が生じる可能性はゼロでは無いが、全体的な流れを変えることは無いだろう。

メディアのすう勢を推し量る物差しの一つ「広告費市場規模」に関しては、事実上インターネットが新聞を追い抜いたと見て問題はあるまい。

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(注)本文中の各グラフは特記事項の無い限り、記述されている資料を基に筆者が作成したものです。

グラフ化・さぐる ジャーナブロガー 検証・解説者/FP  

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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