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出掛ける前からジャズ気分:シニフィアン・シニフィエ@インエフ

富澤えいち音楽ライター/ジャズ評論家

●公演概要

6月29日(土) 開場19:00/開演20:00

会場:大泉学園インエフ

出演:shezoo(ピアノ)、壷井彰久(ヴァイオリン)、大石俊太郎(サックス、フルート)、小森慶子(クラリネット)、水谷浩章(ベース)

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シニフィアン・シニフィエ~現代音楽をカバーするライブ

シニフィアン・シニフィエは現代音楽のカバーバンド。

シニフィアンとしての楽譜に書かれた音符を再現しながら、

その曲をもっと自由に羽ばたかせるシニフィエへ。

刻々と姿を変えるその連鎖を聴き手に引き継ぐために。

演奏者であり作曲者としてプレイヤーは存在する。

出典:シニフィアン・シニフィエ|Trinite

シニフィアン・シニフィエ 6/29
シニフィアン・シニフィエ 6/29

ピアニストそして作曲家としてジャズやオルタナティブなミュージック・シーンに新たな風を送り込み続けているshezoo(シズ)が、このところ“現代音楽”にご執心のようです。

実はすでに4月、ソロ・ピアノでジョン・ケージやベルクといった“現代音楽”を代表する作品を取り上げたコンサートを行なっていて、ボクも改めて「ジャズのフリーな表現に大きな影響を与えた」と言われている“現代音楽”の作曲家たちに注目しなおしているところなのです。

今回は、彼女のメイン・バンドであるTrinite(トリニテ)のメンバーでもある壷井彰久と小森慶子に、大石俊太郎と水谷浩章を加えた、1弦2管+ベースにピアノという、またまた怪しげな編成です。

モダン・ジャズの開祖と言われるチャーリー・パーカーが好んで聴いていたのは近・現代の音楽家の作品、すなわちバルトークやストラヴィンスキーだったというのは有名な話です。20世紀前半という時代性をどうやって音楽へ反映していくかを考えたときに、パーカーをはじめとする先鋭的なジャズ・ミュージシャンたちの頭のなかは、ジャズというカテゴライズではくくれないアイデアにあふれていたということ。

そして時は21世紀初頭。この時代性をどうやって音楽へ反映していくかのヒントを、shezooが聴く者に投げかけてくれるに違いありません。

ちなみに、“シニフィアン・シニフィエ”とは言語哲学者のフェルディナン・ド・ソシュールによって初めて定義された言語学用語。

シニフィアンはフランス語の動詞 signifier(意味する)の現在分詞で「意味しているもの」「表しているもの」を指し、シニフィエは同じ動詞の過去分詞で「意味されているもの」「表されているもの」を指す。

出典:シニフィアンとシニフィエ|Wikipedia

音楽的に訳すとすれば、”譜面”と”発せられる音”に例えられるでしょうか。シニフィアンがあってこその作品であり、しかしシニフィエがなければ作品とは呼べない――。それをつなぐものが、演奏者の感覚であり、観客の耳であるはずです。

♪lotusflower / shezoo from nature circle

♪クロ と カゲ

では、行ってきます!

音楽ライター/ジャズ評論家

東京生まれ。学生時代に専門誌「ジャズライフ」などでライター活動を開始、ミュージシャンのインタビューやライヴ取材に明け暮れる。専門誌以外にもファッション誌や一般情報誌のジャズ企画で構成や執筆を担当するなど、トレンドとしてのジャズの紹介や分析にも数多く関わる。2004年『ジャズを読む事典』(NHK出版生活人新書)、2012年『頑張らないジャズの聴き方』(ヤマハミュージックメディア)、を上梓。2012年からYahoo!ニュース個人のオーサーとして記事を提供中。2022年文庫版『ジャズの聴き方を見つける本』(ヤマハミュージックHD)。

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