不動産の税に関する知識を得るには~何が必要か
■はじめに
いつもの筆者の記事は「何らかの問題が生じた不動産につき、不動産鑑定士・税理士としての専門的見地から語る」ものが多いですが、筆者も不動産や、これにまつわる税金の記事について、ある日突然身につけたわけではありません。
ただ、同様にその方面の知識を身につけたい方もおられるようです。
もちろん、知識を身につけるには最終的にはその方の努力です。ただ、指標を示すことはできます。
と、いうことで、今回は趣向を変えて、宅地建物取引業を営むいわゆる宅建業者に入りたての新入社員や、知識が不足しているところから不動産分野を開拓したい税理士等、「これから不動産の税についての知識をつけたい人」に対して、「何から始めればよいか」を筆者なりに提案していければと思います。
■不動産の知識のポイント
不動産の税を知るには、最低限、不動産それ自体の法規制の知識が必要でしょう。
例えばですが、初学者は「入り」として、まずは以下をおさえるべきでしょうか。
①宅建業法関連については、宅建業者としての正当な報酬を得る部分以外は「宅建業者が専門知識を生かして善良な一般のお客さんから過剰な利益を得ないように規制している」点を理解すれば、それなりに理解が進むでしょう。逆にいえば、それが宅建業法の制度趣旨なのです。
②都市計画法・建築基準法関連については、ざっくりと以下を知っておく感じでしょうか。
・都市計画区域内では、例外を除き通常は「市街化区域・市街化調整区域・非線引都市計画区域等」に分けられ、区画・形・質の変更は開発行為となり一定の面積以上の場合は開発許可が必要
・都市部で定められる用途地域では決められた用途の建物しか建てられない
・都市計画区域内では建築基準法上の道路に接していないと原則として建物は建築できない
・都市計画区域内で建物を建築する場合は、原則として建築前に建築確認をして、建った後に検査を受ける必要がある
できれば、例えば普段は不動産を扱っていない税理士等でも、もし業務上で不動産について色々調べる場合は、その調査をする専門家(宅地建物取引士や不動産鑑定士)に同行して、役所等での調査の風景を見るのも良いかもしれません。
■不動産に関する税について
税理士以外が登録免許税以外の下記の税につき他人のために税務申告・税務代理・税務相談をすることは税理士法違反となりますのでくれぐれもご注意を。税理士以外の方は不動産の税を「知識」として身につけておき、実務でこれらの税につき問題が生じたら税理士に相談する…と覚えておけばよいでしょう。
①不動産に関する税には、固定資産税・都市計画税・登録免許税・不動産取得税・(不動産に相続が含まれる場合の)相続税、不動産売却時の所得税等がある。
②固定資産税・都市計画税は不動産を持っているだけで原則として毎年課される税で通常は固定資産税の税率は1.4%。都市計画税の税率は0.2~0.3%のことが通常。固定資産税独特の目線で評価した固定資産税評価額に一定の補正をして得た課税標準額に基づき課税し、住宅地については安く見てくれる特例がある。
③不動産取得税は不動産を取得した際に課される税、登録免許税は登記の際に課される税で、いずれも固定資産税評価額に基づき、場合によっては一定の補正をした上で、あらかじめ定められた税率を乗じて算定される。
④相続税は、ある方が亡くなった際にその財産の評価額が一定の算式に基づく基礎控除を超える場合に課される。その際、不動産については、通常は土地は相続税路線価で、建物は固定資産税評価額で評価をし、他の相続財産と合算して相続税を計算するが、中には特別の事情があり相続税路線価等で計算するよりも実際の不動産価値が低い場合があり、そのような場合は不動産鑑定士による鑑定評価額で申告するパターンもあり得る。
⑤所得税等は、売った時に「儲け」にかかる譲渡所得の所得税等と、賃貸して稼いだ際の「儲け」にかかる不動産所得の所得税等などがある。なお、法人についても同様に「儲け」に税がかかるが、法人の場合は基本的には不動産以外の稼ぎと一括で法人税等を計算する。
■大切なこと
上記で簡単な「入り」の概要を述べましたが、あえて書きますと、机上の勉強は「基本」だけであって、実務で色々な問題に揉まれないと本当の知識は身につかないです。
ただ、不動産の税は複合的な問題を含んでいます。ですので、難しい案件については、「一人で戦おうとはしない」ことが大切ではないかと思います。
つまり、その分野に強い仲間の専門家と共に対峙することも必要な場合も多いでしょう。
特に、独立したての士業は、「独立したから、全てを一人でやりたがる」場合も見受けられますが、筆者に言わせれば逆です。
独立したからこそ、信頼できる仲間と案件に対峙する必要があるのです。
なお、ご参考として、かつて筆者が他で寄稿した記事もご覧いただければと。
とにかく、難問については一人で戦うのではなく、「みんなで戦うこと」。
もちろん、報酬は山分けになりますが、その代わりにその仲間が同様の案件に出会った時には、逆にそちらから声をかけてくれて報酬をいただける場合もあるでしょう。
筆者自身、「みんなで戦うこと」の必要性を最近、痛感しています。