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元サッカー日本代表オシム監督から見出した新時代のリーダーシップ・マネジメントが注目されるワケ。

佐藤裕はたらクリエイティブディレクター
(写真:吉原秀樹/アフロスポーツ)

5月8日から新型コロナウイルス分類が季節性インフルエンザと同等の5類に引き下げられ、我々の生活は徐々に日常を取り戻しつつある。ところが、コロナ禍3年で企業経営、特にリーダーシップ、マネジメントは大きく変化しています。

そもそもコロナ禍前から日本のビジネス市場では、海外情勢の影響を受け需要と共有のバランスが変化し、DX化の加速に伴い企業文化は変革期になり、カーボン・ニュートラルによるコストアップ、SDGs、難易度の固まる人材確保、地方創生、後継者不在による黒字倒産増加など、さまざまな社会課題があった。コロナ禍はそのようなマイナス要素を大きく後押ししたと言える。

コロナ禍で変化した人々の価値観

コロナ禍で働くに関しては、帰属意識からキャリア観、働く環境、ワークライフバランスなど、日本独特の凝り固まった考え方が薄れ、副業・兼業、テレワークの普及などもきっかけとなり、すべてにおいての選択肢が増え、働く価値観も大きく進化している。となれば、企業は人材確保だけでなく離脱防止にも力を入れる必要があり多くの企業が経営課題としてをテーマにし始めている。

新時代に求められるリーダーシップ

そして、注目されているのが新時代のリーダーシップだ。コロナ禍において、多くの組織が卓越したリーダーシップを発揮することで前例のない課題に向きい、対処してきたが、社員の働く価値観が大きく変化しているためコロナ禍前にあったリーダーシップやマネジメントでは通用しないと悩みを抱える経営者、管理職も多い。

VUCA時代では先の見通しが立てにくく、過去の成功体験が通用しない。だからこそ、先々の変化をイメージして、今、すべきことを捉え、柔軟かつ臨機応変に対応していくことが求められる。そこで自分の成功体験だけでは限界があるため、メンバーを活かす必要があり、新しいリーダーシップやマネジメントが必要になるのです。

今回、元サッカー日本代表でオシムチルドレンとしても知られる羽生直剛さんが開発したリーダーシップ研修プログラムCLATについて話を伺ったが、VUCA時代に求められる真のリーダーシップ・マネジメントを学べる背景にはオシム監督の教えがしっかり詰め込まれていた。

オシムチルドレンとしても知られるFC.東京時代の羽生直剛さん@F.C.TOKYO
オシムチルドレンとしても知られるFC.東京時代の羽生直剛さん@F.C.TOKYO

オシム元サッカー日本代表監督の教えから見出したリーダーシップ&マネジメント

――なぜ?サッカーで研修を開発したのか?

羽生さん|サッカーでは監督が、試合中選手に具体的な指示が出せない為、すべては選手の判断に任せるしかありません。試合中は各選手たちがそれぞれの判断で有機的に絡み合いゴールを目指します。

コロナ禍は大きくカタチを変え、企業経営にも大きく影響を与えていることを、ビジネスを通じて感じていました。特に旧来日本のマネジメントは、一つ一つ教えて、それに従わせるものが主体だったように思います。ところが、現代社会はスピードが従来よりも求められる中、多くのリーダーたちはプレイングマネージャーとして自身も成果を出す活動を余儀なくされています。そのような状況下では、一つ一つメンバーに指示をしている余裕がありません。また一つ一つ指示を出し、従わせるという従来マネジメントそのものが、世代の異なる若者には通用しない、時に価値観のズレになってしまうこともあります。

サッカーというスポーツは、そもそも自律自走型の人財を育てることができます。私の恩師でもある元日本代表イビチャ・オシム監督は、日本人の個性を活かし、再現性あるチームを作った第一人者です。私はそのイビチャ・オシム監督の育成内容から現実の社会で適用するリーダーシップ、マネジメントを見出しカタチにすることで、新時代のリーダー達に必要とされる様々な能力開発支援ができると考えました。

――オシム氏の考える育成はどんな考え方?

羽生さん|開発したリーダーシップ研修プログラムCLATの要素でもありますが、オシム監督の育成ポイントは3つに分けることができると思います。

サッカーは人生と同じと独自の哲学でリーダーシップを発揮した元サッカー日本代表監督イビチャ・オシムさん
サッカーは人生と同じと独自の哲学でリーダーシップを発揮した元サッカー日本代表監督イビチャ・オシムさん写真:アフロスポーツ

①チームメンバーの強みを掛け合わせる

サッカーで言えば、足が速い、背が高い、守備意識が高いなどの個性があるように、一般社会人でもそれぞれの個性があります。リーダーがそれらを効果的に掛け合わせ、効果的にチームを作ることで、今ある戦力だけでも勝負できるチームに変えることができると考えます。

②誰が出ても勝てる(成果を出せる)再現性

優秀な点取り屋(フォワード)がいなくなったら勝てなくなる組織を作ってしまうのは理想とはいえません。良いリーダーは、良いミスや悪いミスなどについて、メンバー全員共通の認識を持たせながら、全員が複数ポジションをこなすことができる(ポリバレント)チームを構築します。そうすることで強いチームを作ることができます。

③継続的に成果を出せる組織を作る

今だけではなく、中長期視点で、成果を出し続ける組織を作らなくては本当の意味で組織が変わったとはいえません。良いリーダーは、チームメンバーが自分たちで考えて、行動できるように適切なコーチングをする必要があると考えます。

サッカーも人生も一緒だ!

――アスリートのセカンドキャリアに想うことは?

羽生さん|オシム監督から成功を掴むにはリスクを冒せとよく言われたことを覚えいます。サッカーでゴールを奪うためには、リスクを伴います。オシム監督は、チャンスだと思ったら、自分の持ち場から離れてもいい、センターバックが持ち上がってもいい、誰が行っていいぞ!と常に後押ししてくれました。チャレンジしていい、リスクを冒していい、それと引き換えにゴールを奪うことが重要なんだという教えです。人生も同じで、成功するには、腹をくくってチャレンジしなきゃいけないと自分は解釈をしています。だから、現役を引退をしても過去の栄光にすがらずに、今何をしている?ということに明確な答えをもっている自分でいたいと考えています。

狭き門を通ってプロのサッカー選手になっても、セカンドキャリアでつまずくことは多く、自分自身がサッカーで学んだ本質的な強みを理解することが重要だと考え、自分でもストレングスファインダーの資格を取得してリーダーシップ・マネジメント・組織開発に活かそうとしています。

自分自身のセカンドキャリアは、自分の挑戦でもあり恩師であるオシム監督の考えや想いを一般社会に浸透させて本当に素晴らしい教えだったことを証明したい。そして、多くのアスリートのセカンドキャリア問題を解消したいと思います。引退してもチャレンジしているなあ!と思ってもらえるくらい前進できるように環境を整えることができればいいですね。

新時代のリーダーに求められるコト

コロナ禍もカタチを変え、いよいよ先の見通しが立てにくく、過去の成功体験が通用しない新時代、こうした時代においては、先々の変化について、大まかにいくつかのシナリオを立てても、今、すべきことを考えて臨機応変に対応していく必要があります。ただし、そこには壁もあって、過去の成功体験が通用しない。だからこそ新時代のリーダーは自分だけでなく周囲を巻き込み、それぞれに判断をさせて活動して成果を出させる必要があるのです。

今回元サッカー日本代表の羽生さんがオシム監督から見出したリーダーシップ、マネジメントを活かして、ビジネスマンの能力開発支援する研修は、既存のリーダーだけでなく、これから組織をけん引していく若者層にも必要な学びかもしれない。

世代の変化、コロナ禍での若者の価値観変化などビジネス社会からは多くの課題がでているが、スポーツという世代が関係ない世界で新しい学びが得られることは新時代には大きなヒントになっているように感じた。

はたらくを楽しもう。

サッカーを通じて令和のリーダを育成する研修『CLAT(クラット)』

元サッカー日本代表羽生直剛さん(左)、CLAT(クラット)を共同開発をした株式会社Tecrhyme 代表取締役 杉浦 大介さん(右)
元サッカー日本代表羽生直剛さん(左)、CLAT(クラット)を共同開発をした株式会社Tecrhyme 代表取締役 杉浦 大介さん(右)

【羽生 直剛(はにゅう なおたけ)

1979年生まれ、千葉県千葉市出身。筑波大学卒。

幼少期よりサッカーを始め、小学1年生〜6年生まで、地元にあるこてはし台SCに入り活動する。その後、千葉県立八千代高校を経て、筑波大学に進学、サッカーに明け暮れる毎日を過ごす。

大学卒業後、プロ選手として2002年よりジェフユナイテッド市原・千葉(現ジェフユナイテッド千葉)に加入。

加入2年目の2003年、監督に就任したイビチャ・オシム監督との出会いにより、本人の人生は大きく変わる事となる。会社名にも表現した野心を常に持てという教えや哲学は、今でも本人の根底にある。

サッカー選手として、日本代表として17試合、プロ生活16年間での公式戦出場数は500試合を越える実績を持つ。2020年2月、AMBITION22を設立。

はたらクリエイティブディレクター

パーソルホールディングス株式会社グループ新卒採用統括責任者、キャリア教育支援プロジェクト責任者、株式会社ベネッセi-キャリア特任研究員、株式会社パーソル総合研究所客員研究員、関西学院大学フェロー、名城大学「Bridge」スーパーバイザー等を歴任。現在は株式会社SVOLTA代表取締役社長、成城大学外部評価委員、iU情報経営イノベーション専門職大学客員教授、デジタルハリウッド大学非常勤講師、国際教育プログラムCAMPUS Asia Program外部評価委員などを務める。※2019年にはハーバード大学にて特別講義を実施している。新刊「新しい就活」(河出書房新社)

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