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相次いだ政治家からの日銀への金融政策の正常化(利上げ)要求

久保田博幸金融アナリスト
(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

 河野太郎デジタル相は、17日、ブルームバーグテレビジョンに出演し、急激な円安がもたらす国内物価への影響などの問題を強調した。エネルギーや食料品のコストを引き下げるために政策金利を引き上げるよう日本銀行に求めた。

 このタイミングでの河野発言に市場はサプライズとなった。日本の政治家から金融緩和ではなく金融引き締めを要求する発言が新鮮に映ったのである。これで日銀は利上げがやりやすくなるといった見方も出た。

 河野太郎デジタル相は19日の記者会見で「金融政策は日銀が決めることだ」と述べた。「(インタビューで)金利が上がれば円高になるという理論を申し上げただけだ。いま日銀に対して利上げを直接求めているわけではない」と説明した。

 これをみると個人的な意見を申しただけとも受け取れるが、その後も政策金利を引き上げを含む、金融政策の正常化を求める声が政治家から相次いだ。

 岸田文雄首相は19日、長野県軽井沢町での経団連夏季フォーラムに出席し、「金融政策の正常化が経済ステージの移行を後押しする」と強調した。デフレから成長型経済に移ることで「金融政策のさらなる中立化を促す」と話した(19日付日本経済新聞)。

 この首相発言は日銀が金融正常化を進めるのに追い風となるとみられると記事にあったが、そのように受け取れる発言であった。

 日経新聞の別の記事では、「日銀が利上げしようとするなら決定会合での議決延期請求権の行使だってあり得る」との強硬論も飛び交うともあった。

 議決延期請求権は日銀の金融政策決定会合に参加している財務省と総務省が行使するかどうかを決定するが、その判断は最終的には首相官邸が行うことになる。

 2000年8月の金融政策決定会合で議決延期請求権が行使されたが、この際の判断は当時の首相から宮沢蔵相に託されていたとされる。

 いずれにしても岸田首相が金融政策の正常化を求めるなか、議決延期請求権の行使などはありえない。

 そして今度は自民党の茂木敏充幹事長は22日の都内での講演で、日銀について「段階的な利上げの検討も含めて金融政策を正常化する方針をもっと明確に打ち出す必要がある」と語った(22日付日本経済新聞)。

 金融政策の正常化に、あまりに慎重とみられる日銀に対して、正常化を催促するような発言が相次いだ。これは本音では正常化を進めたいはずの日銀には大いなる支援材料となる。

 7月30、31日の決定会合でも慎重姿勢を維持するのか。このチャンスに政策金利を0.25%程度に引き上げることすらためらうべきではないと思う。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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