英国首相候補の一人、トラス外相がインフレ抑制に成功しているとして、日銀を良い例として挙げる
英国のジョンソン首相の後任を決める与党保守党党首選の第3回投票が18日実施され、スナク前財務相(42)が首位を維持した。2位はモーダント前国防相(49)、3位はトラス外相(46)で第1回、第2回投票と同順位。5人の候補者のうち最下位の1人が脱落し、残る4人が19日の第4回投票に進むことが決まった(19日付毎日新聞)。
最終的には2人に絞られ、全国の党員による決選投票を経て、9月5日に新たな党首が発表される予定となっている。
今回、スナク氏は、14日の第2回投票から14票増の115票を獲得し、2位との差を広げた。モーダント氏は1票減の82票で、勢いに陰りが見え始めた。ジョンソン派が支持するトラス氏は7票上積みの71票。
スナク氏がリードを保っており、この結果を見る限り、首相となる可能性は少ないようだが、ジョンソン派が支持するトラス外相が奇妙な発言をしていた。
トラス氏は「旧態依然とした経済戦略」を打破すると宣言し、次期党首に選出されれば所得税と法人税を引き下げると約束した。ここ数日にはイングランド銀行に対する批判を強め、中銀の責務変更すら示唆したのである(19日付ブルームバーグ)。
トラス氏は党首選で勝利すれば、英中銀が「インフレに厳しい態度で臨む」ことを確実にするため、マネーサプライに目標を設定することも示唆。最近のテレビ討論では高インフレの責任は英中銀にあると批判し、次期政権はインフレ抑制に成功している他国に目を向けるべきだと主張、日本銀行を良い例に挙げた(19日付ブルームバーグ)。
どこかで聞いたことのあるような政策である。インフレ抑制に成功しているとして、現在の日銀の金融政策を賞賛し、マネーサプライに目標を設定するとしているあたり、「トラスノミクス」を行うとしているかにみえる。
日銀はインフレ抑制に成功しているのであれば、現在の日銀がやっている政策は何なのか。日銀は物価目標が達成されていないからとして、異次元緩和を進めている。
シティの英国担当チーフエコノミスト、ベン・ナバロ氏は18日のリポートで「生活費ひっ迫で英中銀をスケープゴートにするのは正しくないし、建設的でもない。さらに懸念されるのは、英中銀の独立性を揺るがすような取り組みだ」と記した(19日付ブルームバーグ)。
これはこのまま現在の日銀にも指摘できるものとなる。スケープゴートにされた日銀はインフレ抑制に成功しているどころか政策矛盾を引き起こし、異例の金融政策の綻びが表面化しつつある。