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NHKの特集が話題に スタートアップのセクハラ「女性起業家の半数が被害」の衝撃 #専門家のまとめ

小川たまかライター
(写真:イメージマート)

 8月末にNHKでスタートアップ業界内でのセクハラが特集され、話題になっています。特集の中では女性起業家の約半数が過去1年間のセクハラ被害を受けていたという衝撃的な調査結果が発表されました。

 投資などと引き換えに関係を迫る「対価型セクハラ」のほか、「女の子が起業なんて」など性別による偏見も。男女比が大きく偏るスタートアップ業界で、セクハラや偏見は女性起業家の「壁」になっています。

ココがポイント

「日本のスタートアップ業界ってこんなレベル低いんだと。(略)この国で起業したのが間違いだったかなと思ってしまいます」
出典:NHK みんなでプラス 2024/8/28(水)

女性起業家の**52.4%**が過去1年間でハラスメントを経験
出典:スタートアップ・エコシステムにおけるセクシュアル・ハラスメント:予備調査2024(アイリーニ・マネジメント・スクール/柏野尊徳) 2024/7/19(金)

セクハラが横行している企業においては、セクハラ被害者以外の女性も、企業を去る傾向があることが報告されています。
出典:AERA dot. 2024/9/9(月)

「愛人を探しているんだ」。3年前に創業した女性経営者は、取引先の男性社員から突然、こう声をかけられた。
出典:毎日新聞 2023/12/25(月)

エキスパートの補足・見解

 2023年12月末に毎日新聞で連載された「起業を目指す女性の「壁」」(岡大介記者)では、スタートアップ業界では非公式の会合(飲み会など)での情報交換が多いことや、資金を提供するベンチャーキャピタルと起業家の間に権力勾配が生まれてしまうことがハラスメントを助長させていると指摘されています。

 ベンチャーキャピタルにおける投資意思決定層に女性は7.4%、新規上場企業の社長の女性割合は2%です。

 「女性に起業は無理」という偏見もあり、起業を目指す女性が男性よりも少ない中で、資金提供者は圧倒的に男性が多い偏りがあります。多様性のなさや、性別による立場の偏りは、構造的にハラスメントの温床となります。

 特定の業界での女性の少なさが指摘されると、「女性がやりたがらないから」「実力不足だから」などと言われることがありますが、ハラスメントや性別による偏見の「壁」が女性の前に立ちはだかることが多いという事実を認識し、業界内で対策を行う必要があります。

ライター

ライター/主に性暴力の取材・執筆をしているフェミニストです/1980年東京都品川区生まれ/Yahoo!ニュース個人10周年オーサースピリット大賞をいただきました⭐︎ 著書『たまたま生まれてフィメール』(平凡社)、『告発と呼ばれるものの周辺で』(亜紀書房)『「ほとんどない」ことにされている側から見た社会の話を』(タバブックス)/共著『災害と性暴力』(日本看護協会出版会)『わたしは黙らない 性暴力をなくす30の視点』(合同出版)/2024年5月発売の『エトセトラ VOL.11 特集:ジェンダーと刑法のささやかな七年』(エトセトラブックス)で特集編集を務める

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これまで、性犯罪の無罪判決、伊藤詩織さんの民事裁判、その他の性暴力事件、ジェンダー問題での炎上案件などを取材してきました。性暴力の被害者視点での問題提起や、最新の裁判傍聴情報など、無料公開では発信しづらい内容も更新していきます。

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