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全仏オープン:「あの時より、今日の方がうれしい!」  自信取り戻した奈良くるみが予選突破し本戦へ

内田暁フリーランスライター
写真提供:住友ゴム工業(株)

■全仏予選決勝 ○奈良 7-6(2),7-5 ペリン■

 相手のショットがラインを割るのを見届けるのが早いか、その場にラケットを落とすと、ファミリーボックスに向け両手の拳を振り上げました。

 彼女にしては珍しいほどに、派手な喜びの表出。それはこの勝利が、いかに大きな意味を持つかを、余すことなく体現していたからでしょう。

 奈良くるみが予選決勝をも競り勝ち、みずからの手で本戦の切符をつかみ取りました。

 「すごくうれしいです!」

 勝利の感想を問われた奈良は、満面の笑顔をこぼします。奈良がグランドスラム本戦に出場するのは、これが24回大会目。ただ、予選を勝ち抜き本戦にたどり着いたのは、2013年の全米オープン以来。厳しい3試合を勝ち抜いたことを、奈良は「すごく自信になる」と言いました。

 自信……ということで言えば、それは今大会に入った時に、彼女の手元には無かったものでした。ランキングが200位台にまで落ちたのみならず、練習でも「あまりしっくりきたものが自分の中でなかった」状態。それでも今の彼女にあったのは、「悪くても、自分は何か修正できる」との思い。それは過去の経験と実績で構築する、自信よりも強固な精神の主柱でしょう。

 実際に奈良は予選1回戦を苦しみながらも勝ち抜くと、以降は、自分の武器やプレースタイルに対する確信が深まります。2回戦では、元全仏ベスト4のバチンスキーを硬軟織り交ぜたテニスで撃破。予選決勝でも、高い軌道のフォアで相手を押し込み、浅い返球には身体ごとぶつかるように踏み込みバックで叩く、得意の展開でポイントを重ねます。

 第1セットをタイブレークの末に逆転で奪うと、第2セットは、ゲームカウント5-5からバックのウイナー連発でブレーク。ここまで積み重ねてきたものの正しさを示すように、“これぞ奈良くるみのテニス”とでも言うべきプレーで、快勝と言える勝利をもぎ取りました。

 

 奈良が初めてグランドスラムに出場したのは、9年前のこの全仏。その時と今回を比べ、「あの時はうれしかったけれど、そこまですごさをわかっていなかった。勝ち上がるタフさをわかっている分、今日の方がうれしいかな」と感慨深げに笑いました。

 予選突破というフレッシュな感動と豊富な経験を携えて、27歳になった奈良が、6年連続の全仏本戦に挑みます。

※テニス専門誌『スマッシュ』のFacebookより転載

フリーランスライター

編集プロダクション勤務を経て、2004年にフリーランスのライターに。ロサンゼルス在住時代に、テニスや総合格闘技、アメリカンフットボール等の取材を開始。2008年に帰国後はテニスを中心に取材し、テニス専門誌『スマッシュ』や、『スポーツナビ』『スポルティーバ』等のネット媒体に寄稿。その他、科学情報の取材/執筆も行う。近著に、錦織圭の幼少期から2015年全米OPまでの足跡をつづった『錦織圭 リターンゲーム:世界に挑む9387日の軌跡』(学研プラス)や、アスリートのパフォーマンスを神経科学(脳科学)の見地から分析する『勝てる脳、負ける脳 一流アスリートの脳内で起きていること』(集英社)がある。

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