IMFは世界経済見通しを5回連続で下方修正
15日にIMFが発表した最新の経済見通しによると、2019年の世界全体の経済成長率は、3%と3か月前の予想より0.2ポイント引き下げた。IMFは経済見通しを3か月ごとに改定しているが、下方修正は5回連続となり、この10年間で最も低い成長率だとしている。米中の貿易摩擦による悪影響が想定より深刻との認識のようだ。
IMFのクリスタリナ・ゲオルギエバ新専務理事は8日のワシントンのIMF本部での講演で、米中などの貿易戦争に触れて「2020年までに約7000億ドル、世界の国内総生産(GDP)の0.8%相当が失われる」との試算を明らかにしていた。米中の関税合戦によって、世界のGDPは19年に0.3~0.4%程度、20年には0.8%程度も下振れすると試算している(日本経済新聞)。
米国のワシントンで17、18日に開かれる財務相・中央銀行総裁会議では、米中貿易摩擦や英国の欧州連合(EU)離脱問題で世界経済が失速する懸念があるとの認識で一致すると伝えられた。
米中の貿易協議については部分合意に向けた作業が進んでいる。米国のトランプ大統領は中国が400~500億ドルの米農産品を購入することで合意したと述べたが、これに関して中国側からの報道などはない。それでも米国側が15日に予定していた中国製品に対する制裁関税の引き上げを見送ったことは確かである。11月の米中首脳会談次第では12月に予定している関税引き上げについても見送られる可能性がある。
しかし、それでも不透明感は強い。これまで掛けられていた関税を引き下げるようなことは現状は考えづらい。米中の貿易摩擦が世界経済に与える影響は今後も継続するとみておいた方が良さそう。
もうひとつの懸念材料となっている英国の欧州連合(EU)離脱問題については、英国とEU双方が離脱協定草案での合意に近づいていると報じられている。17日午後にブリュッセルで始まるEU首脳会議の前に、英国以外のEU加盟27カ国が合意内容を精査する必要があり、タイムリミットが迫っている。もし合意できれば、英国の合意なき離脱という不安要素が後退することは確かである。
ふたつの懸念材料について楽観的な見方が出てきたことから、東京株式市場も大きく上昇している。しかし、今後の世界的な景気動向に対してはあまり楽観できないことも確かである。
ドイツなどではすでにリセッション入りする見通しが示されている。長期的なリセッション(景気後退)に陥る可能性は低いとされるが、ユーロ圏の牽引役でもあるドイツが景気後退となれば、欧州全体の景気後退も意識されよう。