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なぜ鎌田大地は出場わずか11分だった? 失敗許されぬCLは希望の光となるか

中村大晃カルチョ・ライター
9月23日、セリエAモンツァ戦の試合前の鎌田大地(写真:REX/アフロ)

鎌田大地が移籍先を選ぶ際、チャンピオンズリーグ(CL)出場を重視したのは周知のとおりだ。今、その欧州最高峰の舞台は、ラツィオでのキャリアを築くうえで失敗の許されない場となりつつある。

ラツィオは10月21日、セリエA第9節でサッスオーロに快勝した。スコアこそ2-0だが、それ以上に好機を創出。チームのシーズンベストゲームだったとの賛辞も少なくない。

開幕直後は連敗スタートで批判にさらされた。だが、今季初のリーグ戦連勝で順位も9位まで回復。CL出場ラインとの勝ち点差も4となり、ラツィオの調子は上向いている。

ただ、鎌田は苦しい状況だ。リーグ戦では5試合連続でベンチスタート。後半の79分にルイス・アルベルトとの交代でピッチに投入されたが、出場わずか11分にとどまった。

鎌田はここ5試合のうち2試合で出場機会がなかった。直近3試合の出場時間は23分、26分、そして11分。4試合連続で先発出場した開幕当初と比べ、明らかに出番が減っている。

■中盤は鎌田抜きで固定へ?

リーグ戦でのラツィオは、ここ3試合連続で中盤の構成が同じ顔触れだ。アンカーと右インサイドハーフに新戦力のニコロ・ロヴェッラとマテオ・ゲンドゥジ、左インサイドハーフに大黒柱ルイス・アルベルトという組み合わせになっている。

結果も出つつあることで、このトリオの評価は高い。質と量の両面でバランスが取れている「魔法の方程式」と表現したメディアもある。当面、マウリツィオ・サッリ監督は中盤をこのメンバーで固定する考えのようだ。鎌田にスタメンのチャンスはないということになる。

■絶好調の魔術師

ここ2試合の鎌田は、途中出場してから左インサイドハーフを務めた。右よりも左のほうが機能しそうとの声も聞かれる。いわば「ルイス・アルベルトの控え」のようになりつつあるのだ。

そのルイス・アルベルトは絶好調だ。公式戦全11試合でスタメンは、フィールドプレーヤーではアレッシオ・ロマニョーリと並んで2人しかいない。指揮官の信頼ぶりは明白だ。

チームが低調だった序盤戦も、上向いてきた直近も、ルイス・アルベルトの存在感は際立っている。今月上旬には契約延長も実現。サッスオーロ戦でクラブ通算50得点も達成し、レジェンドのパベル・ネドベドに1点と迫った。

“魔術師”(ルイス・アルベルトの愛称)は乗りに乗っている。その彼から鎌田がスタメンの座を奪うのは、現時点では考えられないことだろう。

■気難しい性格で交代が大嫌い

ならば、直近のように、ルイス・アルベルト不在の中で時間帯に輝きを見せたいところだ。だが、魔術師の気難しい性格が問題となるかもしれない。

ルイス・アルベルトはサッスオーロ戦で交代した際、ベンチでいら立ちを表した。自ら得点をあげ、勝利濃厚だった79分の交代だったにもかかわらず、だ。試合後も、「いつだって交代は嫌い」と話している。実際、開幕から7試合連続でルイス・アルベルトはフル出場だった。

アシスタントコーチのジョヴァンニ・マルトゥシエッロは、ともに気難しい性格で知られるサッリとルイス・アルベルトが、これまで衝突を繰り返してきたと認めている。その中で両者が互いに「鍵」を見つけていったそうだ。交代のタイミングも、選手への配慮という「鍵」のひとつかもしれない。

だが、それは鎌田の出場時間に影響する。ルイス・アルベルトを長くピッチに残すほど、鎌田が力を見せる時間は減るだろう。そして少ない時間でインパクトを残すのが難しいのは周知のとおりだ。

■希望の光と高まる重圧

それでも、チャンスが来たときに生かすしか道はない。そしてチャンスは必ず訪れるだろう。セリエAとCLを戦い抜くうえで、ターンオーバーは不可欠だからだ。

絶対の存在だけに、ルイス・アルベルトは負荷管理も必須だ。ベンチスタートにせよ、途中交代にせよ、本人のストレスにならない程度に休養させなければならない。すでに疲労を指摘する声もある。また、ロヴェッラも全試合で先発出場するとは考えにくい。そのときが鎌田の見せ場だ。

25日のCLグループステージ第3節は、その機会となるかもしれない。上田綺世が所属するフェイエノールトとの試合で、鎌田はマティアス・ベシーノと先発出場するとも言われている。

一部の関係者やファンの間では、「まだこれから」「出場10分はもったいない」といった声もある。鎌田に対する期待はなくなっていない。だが、欧州の舞台でチャンスを生かせなければ、今後はさらに出番が減る恐れもある。

できれば目に見える結果も残したいオランダ王者との一戦、鎌田は存在感を発揮できるだろうか。

カルチョ・ライター

東京都出身。2004年に渡伊、翌年からミランとインテルの本拠地サン・シーロで全試合取材。06年のカルチョーポリ・W杯優勝などを経て、08年に帰国。約10年にわたり、『GOAL』の日本での礎を築く。『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿。現在は大阪在住。

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