日本の防衛費の実情をさぐる(2021年公開版)
提供するデータの信頼性の高さなどから国際的権威として知られているストックホルム国際平和研究所(Stockholm International Peace Research Institute、SIPRI)では定期的に各種レポートで、さまざまな観点から各国の軍事費動向などを公開している。今回はその公開資料を基に、日本の防衛費の実情を確認していく。
諸外国における軍事費、日本ならば防衛費に相当する額面に関して、どこまでを「軍事費」として適用するかは見解が分かれている。単純に防衛費のみをカウントするのか、SACO(沖縄に関する特別行動委員会)の関係費も含めるべきなのか、日本の場合は基地周辺対策費・施設の借料、提供普通財産借上試算、基地交付金、さらには海上保安庁の予算も含めねばならないなど、考え方は人それぞれ。SIPRIでは諸国の基準に合わせる形で、日本の軍事費=防衛費に関しては、防衛費にSACOを加えた額を相当額としている。
次に示すのはSIPRIが把握している1952年以降、直近分となる2020年までの日本の防衛費。単純な円による値に加え、各年当時の為替レートによって換算された米ドルベースでの推移も加えておく。海外からの調達品が少なからずあることや、諸国との比較においては統一基準となる米ドルが使われることが多いので、ドル換算の推移は一定の意味を持つ。さらに防衛費の対GDP比率も確認する。
日本円での比較の限りでは戦後の独立以降は漸増、1990年代に入ってから上昇度合いが大人しくなり、前世紀末で頭打ち状態となっているのが分かる。ここ数年でやや上昇に転じた雰囲気が見られる程度。一方ドルベースでは為替レートが大きく影響するため、例えば今世紀に入ってからでは、前政権政党下においてダイナミックなまでに円高へと振れたことで大きな底上げ感が生じたものの、為替の適正化に伴いその動きは鎮静化している。
あくまでもSIPRIが認識した範囲での額面だが、直近の2020年における日本の防衛費は5兆2470億円、米ドル換算では491億ドル。そして対GDP比は1.00%との結果が出ている。
無論、国の防衛力、軍事力は予算だけで推し量れるものでなく、物差しの一つに過ぎない。装備品の種類や質、実働力、組織力、さらには軍との認識はされていないものの、実質的に国家権力によって軍事組織同様に運用され、対外圧力として使用されているものも含めて考察する必要がある。
一方で適正な軍事関連予算は、国際情勢、特に周辺地域の情勢により大きな変化を示す。軍事的脅威となる地政学的上の他国動向と見比べながら、色々と考える必要があるのだろう。
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