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【「〜なう」はもはや死語】SNSにリアルタイム性は必要か?

五百田達成作家・心理カウンセラー
(写真:ロイター/アフロ)

SNSへの投稿を眺めていると、以前ほどは、「〜〜してます」「〜〜なう」「〜〜にチェックインしました」という投稿が減ったように感じませんか?

「ちょっと前のことですが」「遅ればせながらアップ」と、タイミングをずらして写真を投稿する人が増えています。その背景には、インスタグラムの好調ぶりがありました。

インスタグラムが絶好調

インスタグラムといえば、数年前から人気となった、写真をメインに据えたSNS。当初は、キラキラ女子が使うSNSとして敬遠されていましたが、徐々に一般にも浸透。ギスギスしたSNSに疲れたユーザーたちが「悪意のない最後のユートピア」として積極的に利用し始めています。

ストーリー機能とは?

今夏、インスタにストーリー機能が搭載されました。これは、画面にあるストーリー追加ボタンを押すと、カメラが起動し、今撮ったちょっとした写真や動画を投稿できる仕組みです。また、投稿前に写真内にコメントや落書きができたり、フィルターをかけたりすることができます。

投稿した写真は、常にフォロワーの画面の上部に表示され、自由に見ることができ、コメントを返すこともできます。しかしこのストーリーに上げた写真、24時間たつと消えてしまうのです。これはまさに、スナップチャットへの対抗策と言えるでしょう。

ストーリーには、それほどフォトジェニックではない、なんでもないようなちょっとした写真や動画が並びます。なんでもない「いま」を簡単に投稿できる仕組み。インスタグラムが打ったこの一手が、SNSのあり方を変え始めています。

普通の投稿ができなくなる心理

2年ほど前からインスタユーザーのMさんは、ストーリー機能の追加によって、通常投稿へのハードルが上がったといいます。

Mさんは、コーヒー好きで、喫茶店のちょっとしたコーヒーや買ったコーヒー豆の写真などを気軽にインスタにアップしてきました。しかし、ストーリー機能ができてからは、喫茶店のコーヒーなどの写真はストーリーにアップするように。通常投稿には、友達と遊びに行ったときなどの特別な写真だけをアップするようになりました。

「手軽に投稿できる場所ができたことで、そんなおしゃれでもないちょっとした写真を、気軽に通常投稿するのが気持ち的にできなくなってしまいました。ストーリーは24時間で消えるのに、通常投稿はずっと残る。そう考えたら、ちょっとしたコーヒーの写真をずっと残したいわけでもないし、もうストーリーでいいかなって」

よりカジュアルな投稿機能の登場によって、普通に投稿する心理的ハードルが上がってしまった、というわけです。

進むアルバム化

このような、「インスタのアルバム化」は、今に始まった話ではありません。そもそも以前から、インスタのユーザーは、ツイッターやフェイスブックに比べて、リアルタイムではなく時間差で過去の写真を投稿するという特徴がありました。

旅行の写真とともに「先週だけど、楽しかったー」といったコメントを付けて投稿したり、挙句の果てには、何年も前の高校生の時の写真を上げて「このころに戻りたい!」といった投稿をしたり。

”木曜日は思い出に浸ろう”

それを象徴するように、「#tbt」という有名なタグまであります。これは「Throwback Thursday」の略を示すタグで、「木曜日は昔の写真をアップしよう」ということ。実際、このタグをつけた投稿は3億5000万件ほどになっています。

インスタユーザーは、「いま」を発信するためではなく、「思い出」をシェアするために使っています。時間差投稿は、思い出をより美しく加工するために、時間をかけているからというのももちろんありますが、他のSNSほどリアルタイム性が重視されないため、時間に余裕のある時に投稿しようという気になるのも大きな要因です。

自由な時間に自由な写真を投稿できるので、過去を振り返りシェアする「アルバム」的側面が大きい。その傾向に、リアルタイム性を意識したストーリーが、拍車をかけたというわけです。

つまりは、なにげない「いま」を切り取るような投稿は、インスタ(通常投稿)からはますますなくなるということ。

どっちも取りにいく

ツイッターを初めとするSNSといえば、「〜〜なう」というフレーズに代表されるように、「いま」を発信できるリアルタイム性がウリでした。インスタは他のSNSとは一線を画したその路線で成功したわけです。

そんなインスタが、ついにストーリー機能によって「いま」を発信することに乗り出した。簡単に言ってしまえば、「いま」と「思い出」どちらのニーズも満たす最強のSNSを目指して動き出したということです。

それまでの得意分野である「思い出」で飽き足らず、「いま」の世界に手を出してきたとなれば、今まで「いま」を発信することでユーザーを獲得してきたSNSとしても驚異。

栄枯盛衰の激しいSNS界において、他サービスの特長を取り入れ、牙城を切り崩すことが欠かせません。

フェイスブック、ツイッター、LINE、インスタグラム、スナップチャット……。数年後、栄華を誇っているのはどのSNSでしょうか。

作家・心理カウンセラー

著書累計120万部:「超雑談力」「不機嫌な妻 無関心な夫」「察しない男 説明しない女」「不機嫌な長男・長女 無責任な末っ子たち」「話し方で損する人 得する人」など。角川書店、博報堂を経て独立。コミュニケーション×心理を出発点に、「男女のコミュニケーション」「生まれ順性格分析」「伝え方とSNS」「恋愛・結婚・ジェンダー」などをテーマに執筆。米国CCE,Inc.認定 GCDFキャリアカウンセラー。

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