【暇アノン懺悔録】「暇アノンの姫」だった40代男性(4)
「暇空茜」を信奉し、一時期は「暇アノンの姫」とも言われたA氏。しかしブロックされたことをきっかけに、次第にその発信に疑いを持ち始める。情報を送るなどやり取りをしていた「暇空茜」から「攻撃」されたと感じたことは決定的だった。
インタビューは9月中旬、ジャーナリストの安田浩一氏と筆者が行い、Colabo弁護団の弁護士2名が同席した。
「ナニカグループ」は正直さすがにないだろうと
ーー暇空さんのロジックは間違いないと思っていた?
A:思っていました。
ーー「暇空茜」を信じる人の中には政治家や弁護士などいわゆるエリートや頭のいい人もいました。なぜだと思いますか。
A:どんどん掘りまくって、疑惑があると。記者会見も議員会館を借りている、これは政府の陰謀が絡んでいる、これは我々が戦わなくてはいけないと。
ーー強いものと闘っているという感覚だったのでしょうか。しかしColaboは小さな団体ですよ。
A:小さな団体です。
ーーバックに政党があるとか、何か独特の言い方をされてましたよね。
A:恥ずかしくて言いたくない言葉です。
ーー「ナニカグループ」(※)ですか。
(※)「暇空茜」はColaboなどの活動の背景に「ナニカグループ」なる組織があると発信していた。
A:私は正直、懐疑的でしたね。正直、それはさすがにねえだろうと。ただ彼が言う、女性支援の4団体ですか、これだけちょっと探ってみたら面白いんじゃないかっていうことで。私は頭がいい人間じゃないので、国家の陰謀だのなんだのみたいなの追っかけられないので、自分はそこ(女性支援4団体)だけ集中しようと思いましたね。
ーーどのような手段を用いて調べたのでしょう。
A:たとえば、公開されている会計と実際に使用されている、保護されている女の子たちの消耗品や食費、この人数でなぜこんなにかかるのか。まず気になるところは調べました。
あとは、仁藤夢乃がこう言っているけれども、実際は公文書ではこうだよねみたいな、そういう矛盾を洗ったりとか。
Colabo以外の3団体はあまり情報を出さなかったので調べようがなかったですね。仁藤さんは積極的に情報を出していたので、これ幸いとやっていました。
ーー調べていく中で、やっぱりColaboはおかしな団体だと確信を強めたのですか?
A:実はそんなになかったです。ちょっとこれおかしくね?矛盾してるよね?みたいなところはありました。ただ、今考えると、その程度の矛盾なんか、人間生きていたら誰だってあるだろうと。
そもそも何人もの人間に調べられるようなことを前提に詳細に会計報告なんかできないじゃないですか。Colaboのような小さい団体が。一般の会社だって多少の節税対策はしますし、多少の数字の矛盾はあります。でも今考えると、Colaboぐらいの小規模団体にしては良くやっている方だとは思います。
(※筆者注)住民監査の結果、Colaboは管理台帳の誤記などがあり約192万円の経費が認められなかったものの、それを上回る自主財源からの持ち出し金があったため、Colaboに返金は命じられていない。
仁藤さんは「キモいおじさん」と言わないでほしかった
ーーAさんはお金の問題への指摘だけではなく、たとえば仁藤さんの活動が若い女性の援助交際を増やしているとか、そういう類の投稿もありました。Colaboの活動に嫌悪感があったのでしょうか。
A:嫌悪感というよりも、これは無意味じゃないのかと思いました。やりたいことはわかるけれど、やり方は違うんじゃないかと思いますね。それからたとえば辺野古で座り込みしたとか、私の思想とは相容れない、そういう意味では嫌悪感があります。
ーー運動団体が沖縄や韓国へ行くのは良くある話であるし、それ以外の国にも行きますね。男性が主体となっている運動団体にはそのような非難が来ない。女性だから叩きやすかったというのはあるのでしょうか?
A:そうでしょうね、叩きやすかったんでしょう。隙だらけ、ツッコミどころが多すぎるっていうのは、正直なところです。
ーー具体的には?
A:感情的にものを言うところですかね。たとえば「キモいおじさん」とか。これもっともデカいところなんですけど、そんなこと言わないでよって。
ーー仁藤さんに向けての「ババア」とか、ひどい暴言についての反発はないですか。
A:それは私、聞いたことがないので初めて知りました。
ーーたとえばAさん自身も、2023年1月4日のツイートで「15歳から売春始めて、私達は買われたと言って、今では未成年少女搾取して公金ちょろまかすおばさんか。仁藤夢乃さん少し心を入れ替えなよ。」と書いたわけです。
A:ひでえこと言ってますね、私。
ーー騒動になる前よりもColaboや仁藤さんへの誹謗中傷は多くありました。そういうものは目に入らず、「キモいおじさん」だけが?
A:そういう細かい部分ではないんですよ。暇空茜が用意した大義名分。こいつらは国民の税金を搾取している、だから何を言っても許されるっていう土台があるのみなんです。
そこにみんな、それぞれのやり方で追及したり攻撃をしたりしちゃっているんです。多分私はそのとき、それを書いたとき、酔っ払っていたんだと思うんです。ストロングゼロとか飲んでいたのだと思います。
ーーAさんも一時期、女性支援4団体を追求するという名目でカンパ金を集めていらっしゃいましたね。サクサク集まりましたか?
A:1日で200万円集まりました。総額は240万円ほど。今は組み戻しに応じていて、100万円ぐらい返しました。
ーー「WBPC問題」を追及してくれているからカンパしたけれど、もうやらないなら戻してくれと。
A:銀行から電話があって「何件組み戻し請求が来て」みたいな。それは応じて。理由は聞かないです。最近はちょっとさすがに削られすぎて、自分の訴訟対策のためにいったんストップしますと言いました。
監査結果は「これぐらいしか出してくれないの?」
ーーたとえばAさんは「誰かがぶん殴られてる隣で、公金で買ったシャンパンを笑顔で飲んでるのがゆめにゃん」(2022年12月30日)と書いていますが、仁藤さんの関わっている女性って、家で実父から性虐待を受けていたり、本当に深刻な状況の女性が多いです。そういう境遇に乗じて「一晩泊めてやるからセックスさせろ」というような大人もいる。
A:そういう情報は、先ほども言った暇空茜のバイアスによって、一切入っていませんでした。
ーー仁藤さんの著書は?
A:読んでいないです。
ーーColabo側は「疑惑」に対して住民監査も受けましたし、自分たちのホームページなどを通して、説明を尽くしていると思いますけれども。
A:暇空茜は行政が主導した隠蔽に違いないと。ただそれを言ったらなんでもありになっちゃうじゃないですか。どんなことだって。
どんな証拠を突きつけたって、彼らは捏造だと言いがかりをつけるんです。全てを信じない。最近はハンコですね。パンチ穴の位置が違うとか。ありとあらゆるものに難癖をつけて、そして暇空さんの言うことだから、みんな信じてしまう。
たとえばこのインタビューだってそうですよ。あとで編集をするわけじゃないですか。この文章のつながりはちょっとおかしいから、捏造しているに違いないとか、本来はこういう文体だったに違いないとか。そういうことをやっている。
ーー結局、Colaboが不正をしたという結論にはならず、行政が調査しても何も出てこない肩透かしでしたか?
A:そうですよ。あの時の感情なんだったろうな。ちょっと考えさせてください。
……がっかりというか、これぐらいしか出してくれないの?みたいな。もっと深い情報が出てくるもんだとは思っていたんです。もっと詳細なものを出してくれればこっちで精査するからみたいな、そういう感覚。
ーー行政の調査をあまり信用していないということですかね。
A:当時はそうでしたね。
ーー東京都にもナニカがいっぱいいると?
A:いわゆる偉い人たちが何かをごまかしているんじゃないかって。自分たちの失敗やミスを保身のためにごまかしているんじゃないかという感覚でしたね。
過去にはネトウヨだった
Colabo叩きは韓国叩きより楽しかった
ーーいろいろ聞いてみてもやはりわからないのが、なぜ暇空に惹かれたのかです。気に入らなければブロックするような傲慢な振る舞いをする人だということは以前からわかっていたのではないですか。Colabo叩きが娯楽として成立していたのですか?
A:一言で言うと、冒険心。
ーー冒険心? 「暇空茜」に賭けてみようということですか?
A:子どもっぽい、幼児性たっぷりな感覚なんですけれども。
ーーそれはご自身のことですか? 暇空のこと?
A:自分です。何か新しいところを見つけた。ちょっと探検してみようっていう。
ーー新しいおもちゃを発見したような?
A:新しいゲームを見つけたみたいな。
ーー今までそういうことはなかったですか? Aさん、ネトウヨでした?
A:ネトウヨでした。
ーー主に何を叩いていました?
A:韓国です。まあ、若い頃です。
ーーなんで韓国が嫌いだったのですか?
A:やっぱみんなが言っていることですよ。いわゆる日本はこれだけやったのに韓国は裏切って、こんなに日本を利用して、みたいな。いわゆるネットで流れている言説っていうのをそのまま信じていた。
ーー今はネトウヨ的なことはやらないんですか?
A:やっていないですね。ただ思想的には保守ですよ。ただ、別の考え方の方とも積極的にお話聞きますし、人それぞれの考え方っていうのは一つの個性ですし。
ーー韓国叩くのとColaboを叩くのとどっちが面白かったですか。韓国を叩くと仲間が増えるし、同調してくれる人もいるし、リツイートもフォロワーも増えますよね。
A:でも、Colaboの方が面白かったです。なんでかっていうと、暇空茜っていう具体的なやつがいるから。
韓国だと、政府間の問題じゃないですか、結局。一般人がぎゃあっと言ったって別になんともないわけじゃないですか。でも暇空茜っていう人間がいて、ちょっとこういうのあるんだけどって言ったら、たまに取り上げてくれる。
ーー参加できる?
A:そういう感覚があります。
ーー韓国を叩いても韓国は反応してくれないけれども、Colaboを叩けばColaboは反応してくれるっていうのは?
A:そうそう。やっぱり、何か反応してくれないかなって。楽しかったですね、「支える会さん」(※)、私に反応してください、みたいな。 (※)「Colaboと仁藤夢乃さんを支える会」のアカウント
「戦略の天才だったらあんなことしてませんよ」
ーー暇空さんはAさんに対するリンチだったり、他にもこれまで自分に同調している人を何人も「対話罪」などと言ってブロックするわけじゃないですか。仲間は多い方がいいのに、なぜわざわざああいうことをするのだと思いますか?
A:気持ちいいからじゃないですか。
ーー気持ちいい?
A:快感なんじゃないですかね。自分が独裁者で力があって、逆らったら許さないぞ、こういう目に遭うぞっていう、快楽。
ーー「戦略の天才」のはずなのに。
A:戦略の天才だったらあんなことしてませんよ。どんだけ大人を怒らせているんだっていう。
ーーそろそろ最後になりますが「公金チューチュー」についての疑いは晴れたのですか。
A:もちろんですよ。そんなわけないと思っています。
ーーただ、監査でも不正はないと明らかになってもColaboへの中傷はやまず、今後の裁判でColaboが勝ったとしても、Colaboを疑い続けたり、中途半端な知識や思い込みでデマを流し続ける人はいると思うんです。そこはどうしたらいいのかなと。
A:自分が今考えているのは……いや、なんでもないです。以前あった余命事件(※)でも、いまだにあれを信じている連中もいますから、どうしたって残るやつはいるんですよ。
(※)「余命三年時事日記」というブログで複数の弁護士への懲戒請求が呼びかけられ、実際に大量の懲戒請求が行われた事件。この懲戒が不当であったとして1,000人以上の懲戒請求者が提訴され、請求者側の敗訴が続いた。
ーー余命事件について確かに今でも一部で信じている人はいますが、広がってはいないですよね、少なくとも。Colaboの件は、弁護士など知識層が批判を続けている。それに火をつけた責任は重いと思っています。対症療法的には、やはり暇アノンだったみなさんが自ら「Colaboについて、自分の認識が間違っていた」と発信してもらうことは必要だと思います。
A:できるだけはやりますけど。
ーーそこは我々が言うよりは、有効だったりするのではないかと。
A:ゆっくりではありますが、できる限りやらせていただきたいと思います。
公金チューチューって用語あるじゃないですか。あれって実は、私が去年のある日に「税金チューチューだ」ってツイートしたんですよ。それを暇空茜がリツイートして、その翌日に暇空が公金チューチューと言い出したんです。だから最初は私なんです。
ーーそうなんですか。Aさん、ひどいですね。
A:すみませんね、何か。ごめんなさい。
(インタビュー終わり)