アメリカ陸軍が「V-280バロー」を採用、オスプレイから発展したティルトローター機
現地時間12月5日、アメリカ陸軍のFLRAA(将来型長距離強襲機)がテキストロン社傘下のベル・ヘリコプター社のティルトローター機「V-280バロー(Valor)」に決定しました。
- Textron’s Bell V-280 Valor Chosen as New U.S. Army Long-Range Assault Aircraft
- Army announces Future Long Range Assault Aircraft contract award
FLRAAは現行の輸送ヘリコプター「UH-60ブラックホーク」の後継機です。アメリカ陸軍の主力機の更新なので大量生産が予定されています。FLRAAは競争試作であり、V-280は競合機のシコルスキー/ボーイング連合の複合ヘリコプター「SB>1デファイアント(Defiant)」、FLRAA応募名は「デファイアントX」を打ち破っての採用です。
2013年4月に第3世代ティルトローター機コンセプト「V-280 Valor」が発表されてから9年以上が経ち、遂に量産されることが確定しました。
アメリカ海兵隊が既に運用している同じベル社のティルトローター機「V-22オスプレイ」と比べて陸軍のV-280は一回り小型の機体となります。オスプレイと異なりエンジン・ナセルを固定して回転ローターだけ可変式で傾ける方式で、排気炎を気にせず側面ドアから乗降できます。機械の構造としてはエンジン・ナセルごと傾ける方式の方が単純で簡単なのですが、機体の小型化とそれに伴う側面ドアの採用からこの方式が採用されました。
またオスプレイでは固定翼機モードの際に回転ローターの長いブレードがたわんだ際に当たらないように主翼はやや前進翼でしたが、実際の運用でこの配慮は必要無いと判明したので、V-280の主翼は直線翼が採用されています。これで左右の回転ローターを動力シャフトで繋ぐ際に機体中央のギアボックスが省略できました。このようにオスプレイから発展したV-280は、後発なので幾つもの改善点が採用されてより高度に進化した機体となっています。
ティルトローター新時代
ベル・ヘリコプター社はボーイング社と共同開発したティルトローター機「V-22オスプレイ」を世界で初めて実用化させました。そしてアグスタ社と民間向けティルトローター機「Ba609」を共同開発(後にアグスタ・ウェストランド社に譲渡して「AW609」となる)、そしてこの「V-280バロー」が実用型ティルトローター3機種目となります。
現在世界で実用化されたティルトローター機はオスプレイのみで、AW609がもう直ぐ型式証明を取って実用化される見込みです。新しくアメリカ陸軍に採用されたV-280も実用化されるのは間違いなく、ベルはこれら全てに関わっていることになります。
オスプレイで切り開いたティルトローター新時代は、V-280バローに受け継がれていくことになるでしょう。そして他社もティルトローター機を開発する流れが生まれてくるはずです。たとえば空飛ぶクルマとも呼ばれる「eVTOL(電動垂直離着陸機)」は幾つもの会社が挑戦していますが、計画案の中にはティルトローター型がたくさんあります。将来ティルトローター機が当たり前になる時代が来るかもしれません。
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