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路地に出没した白猫 耳から出血していたが保護主の奮闘で動物病院へ 予期せぬ病名にも負けない

石井万寿美まねき猫ホスピタル院長 獣医師
イメージ写真(写真:イメージマート)

がんの診察を多くしている筆者が、「外の猫で白い毛で顔の周りから出血」と聞けばある病気が浮かびます。

保護主のKさんは、耳から血を流している外の猫のハムちゃんを捕獲して慌てて動物病院に連れて行きました。

そこで獣医師は予期せぬ病名をKさんに告げました。ハムちゃんのケガのように見えたところは命にかかるかもしれないのです。

ケガだと思っていたら、扁平上皮がん

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イメージ写真写真:アフロ

外の猫は、猫同士で喧嘩などをすることもあるのでケガをしていることが多いです。ケガが全部、扁平上皮がんというわけではありませんがある特徴があります。

小動物臨床をしていてがんの子を多く診ている筆者からすれば、以下のような猫の場合は、扁平上皮がんの疑いが強いのです。

・外にいる時間が長い野良猫か、放し飼いの猫

・毛色が白、顔の部分に白い毛がある(三毛猫・ハチワレ猫の白い毛の部分)

・ケガのように見えてなかなか治らない

このような猫が来院すれば、扁平上皮がんの可能性があることを飼い主に説明します。

扁平上皮がんの原因

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扁平上皮がんは、顔だけではなく皮膚や粘膜の表層を形成する扁平上皮細胞が悪性化したものをいいます。このがんは、皮膚の他にも口腔内、喉、食道、肺、膀胱などの内臓にも発生することが知られています。

扁平上皮がんのリスク因子は以下です。

・紫外線

・タバコ(飼い主が喫煙者の場合)

そのため、日常生活において紫外線を浴びる外の猫が扁平上皮がんになりやすいのです。

猫には関係がないですが、人ではリスク因子は他にもアルコールの過度な摂取、HPV(ヒトパピローマウイルス)感染などがあります。

ハムちゃんは慢性腎不全も持っていた

Kさんは、連れていった動物病院でハムちゃんは推定14歳で高齢の猫だと知りました。数日前はいなかったので急にハムちゃんが出没しました。そのときは、首輪をつけていたので、誰かが遺棄した可能性もあります。

ハムちゃんのケガのように見えた箇所は、この病院で扁平上皮がんの可能性が高いと告げられました。

つまりハムちゃんの病気は以下です。

・扁平上皮がん

・慢性腎不全

・歯周病

・肝嚢胞

・胆石

・慢性鼻炎

それを知ってもKさんは、ハムちゃんをどうにかしてあげたいと思い、近くの動物病院の紹介状を持って少し遠方の筆者の動物病院に来院しています。

ハムちゃんは慢性腎不全の治療もしながら扁平上皮がんの治療も

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耳の扁平上皮がんの猫を飼ったことがある人が読めば、耳なら手術をすれば大丈夫なのに、と思うでしょう。猫の場合の耳にできた扁平上皮がんはすみやかに手術をするのがいいです。

それは理解しているのですが、ハムちゃんの場合は上述のように他にも病気を持っているので手術が簡単にできないのです。紹介状には、「外科手術以外の治療法で寛解を目指せばと思い紹介させていただきました」とあります。

ハムちゃんの左耳は3分の1しか残っておらず、先端は耳の軟骨が露出してカサブタができてそれが剝がれると血が滲み出るという感じです。右耳も先端ではなく側面の中央部が少しえぐれていました。

体重が2キロ少しで貧血気味のハムちゃんは、保護主のKさんによって、大切に飼われて治療をされています。

ハムちゃんは治療のかいがあり、右耳のがんは後でできたものなので寛解しています。左耳は、まだ寛解には至っていませんが、出血することが減っています。

ハムちゃんは去年の10月に保護されて現在も治療続行中

ずっと飼っていた猫でも14歳という高齢になり慢性腎不全やかがんになれば、「もう年だから、治療はいいです」という飼い主がいることも現実です。

Kさんは「保護したときに、もう数日しか生きられないと思っていましたが、こんなに長生きしてくれてびっくりしています」と微笑みを浮かべて話しています。ハムちゃんは外の子でしたが、治療中でもほとんど暴れることもないです。首輪をつけていたということなので、たぶん飼い猫だったのでしょう。

Kさんによれば、保健所にも警察にも届けたということなので、もしハムちゃんが、迷子になったのではあれば、見つけてもらえるのでしょう。しかし、ハムちゃんは、Kさんに保護されて室内で安全に暮らしています。

まねき猫ホスピタル院長 獣医師

大阪市生まれ。まねき猫ホスピタル院長、獣医師・作家。酪農学園大学大学院獣医研究科修了。大阪府守口市で開業。専門は食事療法をしながらがんの治療。その一方、新聞、雑誌で作家として活動。「動物のお医者さんになりたい(コスモヒルズ)」シリーズ「ますみ先生のにゃるほどジャーナル 動物のお医者さんの365日(青土社)」など著書多数。シニア犬と暮らしていた。

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