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米国とイランに翻弄された東京市場、トランプ大統領にとってはシナリオ通りなのか

久保田博幸金融アナリスト
(写真:ロイター/アフロ)

 トランプ大統領はツイッターで、イラク内の米軍基地内にミサイルが着弾したが、いまのところ特に大きなダメージはなく、問題はないとツイートした。

 これは報道とかではなく、世界最強の軍隊と最先端の情報収集能力を持っている米国の大統領のツイートである。

 また、イラン国営テレビは8日、同国がイラク国内の米関連施設に15発のミサイルを発射し、少なくとも80人の「米国のテロリスト」が死亡したと報じた。

 もしこの報道が本当であれば、あのトランプ大統領が問題はないとのツイートをすることは考えづらい。もちろん全く被害はなかったとも考えづらいことも確かである。

 イランのザリフ外相もツイッターで、「我々は事態のエスカレートや戦争を求めてはいない。ただ侵略から自分たちを守るつもりだ」と投稿しており、今回の攻撃について、米国の反撃を受ける懸念のある米国軍の人的被害まで意識したものではないことをうかがわせる。

 トランプ大統領としてもイランの当局者にしても、直接の軍事衝突は望んではいないところであろう。それは関係諸国も同様であり、なんとしても両国の軍事衝突は避けたいところであったはずである。

 しかし、米国がソレイマニ司令官を殺害するというある意味、最悪の選択肢をとってしまったことで、それに対するイランとしては、国内世論にも答える必要があり、また政権内の強硬派にも配慮する必要があった。

 このため、米軍基地へのミサイル攻撃という手段をイランは取ったものとみられる。しかし、実際の被害はトランプ大統領のツイートを読む限り、ほとんどなかったようにみえる。まさか世界最強とされる米軍の情報収集能力がたいしたことはないとは思えないし、そもそも自国軍の被害状況は当然、逐一ホワイトハウスに報告されていたはずである。

 今回のこの米国とイラクの対立について、シナリオが最初からできていたのではないかとの憶測もある。だからトランプ政権はある意味、強硬手段に出られたとの見方もできなくはない。

 もちろんまだまだ不透明なところも多く、事態が今後急変する可能性は否定できない。トランプ大統領のツイートにもあったが、トランプ大統領が発表する声明の内容も確認する必要はある。

 そもそも今回の出来事については、米国の大統領選挙を控え、弾劾裁判から国民の目をそらすためにトランプ政権がイランの動向も睨んで仕掛けてきたものとの見方もできる。結果として、これに翻弄されてしまったのが取引時間中と重なった本日の東京市場ということになってしまった。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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